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フライトは夜


どんな名前をつけよう このどうしようもない気持ちに
どんな名前をつけよう この行き場のない感情に
どんな名前をつけよう この例えられない関係に


これがなにか
自分すらわからないから聞きたくなる
あなたはどんな気持ちだろうか
わたしの手を握る 頬に触れる
その感情の正体はなんなのだろう
答え合わせもできないくせに
答えを求めてしまうのはなぜだろう


あぁ
あと何度 想えるだろうか
あと何度 想える距離に行けるだろうか
たとえ死んでもそれを知り得ないかもしれないわたしたちは
死ぬまでにあと何度触れられるだろうか



青と緑が散りばめられた滑走路
ゴトゴトと音を立てわたしを運ぶ金属の塊
勿体ぶるようにぐるりと回ってから
全てを振り切るかの如く地を離れていく
だんだんと遠くなっていく白、橙の街灯と
赤いブレーキランプの群れ


上へ上へと運ばれるごとに
瞼は自然と下へ落ちてゆく
確実に離れていくその体感に
耐えきれなかったのかもしれない
がたがたと揺れる金属の塊は
何かを剥がそうとしているようにも思えた


名前のつけられないこれに
もはや行き場はないのなら
もとのままの方が
何も後ろめたくなかっただろうか


幸福と絶望を旋回しながら
わたしはまた何事もなかったかのように
明日を 毎日をこなすのだろう


どこにも着陸できない金属の塊は
燃料が切れるその日まで
暗雲の空を飛び続ける




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