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西尾維新「人類最強の求愛」『人類最強の純愛』その3 ステルスリアクション・エクストラ134

(ステルスリアクションとは、見えないリアクションである。表向き別の事を表現しているように見せながら、同時に、特定の何かに対するリアクションとしても意図された、そのような表現方法なのだ)

(ご注意・本稿では西尾維新「人類最強の求愛」『人類最強の純愛』のネタバレを含みます。閲覧の際にはあらかじめご了承ください。表紙画像と本文は一切関係ありません。また、登場人物や組織の実名は伏せられている場合があります。そして、明かしづらい内容は不明瞭な表現となっている場合があります)

前回はこちら(関連リンクは末尾を参照)。

また本稿においては「西尾・忍殺」を重要な関連資料として参考して頂きたい。


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・幸い

「幸」の字。ホントいちいち指摘するのもどうかと思うけど略すのもそれはそれでなー、みたいな。


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・『動物』が見当らない

一回目、セーフ(にょぽみ先生と違ってスリーアウトにはならない)


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・リスクプレミアム
・投資家全敗の法則
・勝者が敗者になることはあっても、敗者が勝者になることはない

う~ん、僕が金融商品だとしたら値下がりのリスクは当然あるし、僕が投資家なら勿論そこに張ってる訳だし、それで結果出せるかは自助努力なんだけど、他人となるとやっぱり事情が違うよね。西尾さんは売れりゃあいいし書けりゃあいいんだから僕がどうなろうとしばらくネタに出来るってだけでペイするのかもしれないけど、僕はそういう人達をレバレッジにしないとやってけないんだよねぇ。

お互い様はお互い様だけどそのお互いには立場の相違があって、それが非対称性(リターン変動幅の差)となって現れる。

でもまあ、お互い様なのは変わらないか。その立場になるにも積み重ねがあっての事だしね。


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・あたしより純度の高いあたし

経年にしろ経験にしろ、自分が変わったな、と感じているとなんかこういう感覚はあるのかもね。

まぁ、純度って得てして柔軟性や対応力の低さだったりもするんだけど、ね。

歴史寓話的読解で言うなら、まんま「より過去の」かな。


・・・

・軍服
・軍靴

歴史寓話。軍事的イメージの表象。かなり直接的な。


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・大人なんて、一生ならないもんだと思っていた

先がイメージ出来ないとまあまあこういう事はある。変化の過程に居る事を示すにはこういう「自分との対話」の形式で僕や向こう側の感覚や意識を象徴化してみるやり方もいいのかもしれない。

戯言シリーズでの哀川潤は日米両方の重合寓意だったと思うんだけれど(「戦勝するアメリカ」の部分がかなり強かったかな?)最強シリーズだと「大日本帝国の敗戦」の部分が強化されてる感じで、十歳の頃の哀川潤(「十」は十字架を示すキリスト教性、西洋、連合国、アメリカ側の刻印)は重合性がないか希薄なのかな。


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・あたしであって、あたしでない
・もう別人
・全身の細胞が十年で入れ替わる

その表象が担う寓意的意味がすっかり変わった、というところかな、これはどうやら。連載が長いとこういう事はよくあるし、それを示す為の手法もまたあり得る。その辺をどう使うかっていうのも作家の腕のうち。

向こう側の態度変更の表明でもあるのかなー。というのを含めると様々な水準による意味的な複合、輻輳が生じている事になるんだけど……。


・・・

・お前が自分でちゃんと解決した
・感じる、考える、思うことをやめないでいてくれたから、今のあたしがある

色々あったけどこうなりましたよ、という向こう側からのメッセージと、歴史的経緯による情勢変化の重合、かな。これは。「人に歴史あり」って言うけどさ、人で歴史を描く技法と人の抱えた事情や出来事の投影を同時に照射する表現を構成すると受け取る側は混乱するぞ、普通(ステルスリアクションについて、あるいは僕やベータロンについてノーデータだったら尚更だろう)。

そこら辺は作者の責任の範囲だから別にいいけど……。


・・・

・楽しいねえ
・楽しいことばかりだよ

そこまで楽しくはないなぁ。ないかなぁ、うーん。「もうちょっと楽しくてもいいんじゃないかな?」って感じるくらいにはそれほどでもない(臨界点の手前だとこんなもんみたいだけどね)。


・・・

・それは、お前が腐らずに修業時代を、頑張って一生懸命、生き抜いてくれたお陰だ

これはたのしくなってからはじめていえるせりふだなー(棒)。やってる最中は脇目も振らずやり続けて先を見るとか振り返るとかする余裕ないよね実際。

激励だと思って受け止めておくけれども(いや、これ多分普通に激励だし素直に受け取っといた方が印象良いぞきっと)。


・・・

・魔法

「魔法の力」。『新本格魔法少女りすか』でも伝説シリーズでも物語シリーズでも(嘘とは言え)魔法少女を描いてきた西尾さんだけど、これも「幸」の字と同じく記録しておく事を重視(外れても僕一人の恥で済むし)。


・・・

・「いつまでそんなとこにいるつもりだい。こっちにおいで」

行けるもんならとっくに行ってるわふざけんな! 人の気も知らないで!

もー、全く西尾はー。もー西尾はー。

これだから西尾は……。




(続く)

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関連リンク

西尾維新を読むことのホラーとサスペンス、ニンジャスレイヤー、そして批評家の立場と姿勢の話

西尾維新篇

第1話「ゼロ年代の終わりに」(約1,600文字)

第2話「西尾維新からの応答」(約3,200文字)

ニンジャスレイヤー篇

第5話「『ニンジャスレイヤー』をオマージュする西尾維新」(約2,600文字)

策謀篇

第6話「過渡期の人」(約1,900文字)

第7話「茶番の始まり」(約1,800文字)

第8話「違和感の塊のような」(約2,100文字)

第9話「地雷と第二次性徴」(約2,200文字)

第10話「アメリカンなジェスチャー」(約3,500文字)

第11話「俺に合わせろ」(約2,900文字)

第12話「物語の終わり」(約1,800文字)

第13話「閉じろ、その地獄の釜の蓋を」(約3,200文字)

昇華篇

第14話「『天狗の国へ連れてゆく』」(約1,700文字)

批評篇

第15話「『どうだ ピンク色の光が見えてきたか?』」(約2,300文字)

第16話「『やめろ!俺の頭から出て行きやがれ!狂気め!』」(約2,800文字)

第17話「『消えろ』‘彼を呼ぶのだ!’『消えてくれ』」(約2,400文字)

第19話「『俺は向こう側に、天狗の国に行かなきゃならねえ』」(約3,400文字)

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#批評 #コラム #ステルスリアクション #小説 #西尾維新

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