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第14話「『天狗の国へ連れてゆく』」(昇華篇・1) 西尾維新を読むことのホラーとサスペンス、ニンジャスレイヤー、そして批評家の立場と姿勢の話

前回(コラム)と前々回(本編)はこちら。

(ご注意・表紙画像と本文は一切関係ありません。その下の埋め込みツイートはイメージです。また、登場人物や組織の実名は伏せられている場合があります。そして、明かしづらい内容は不明瞭な表現となっている場合があります)


(これまでのあらすじ・男は語る。ある人物の陰謀が、巻き込まれた者によって文化的営為へと昇華されていく姿と、その渦中、彼自身に生じた異変とを)

その首謀者ならぬ首謀者の名をあえて記そうとするならば、「西尾維新」。決して僕ではない。

いや、西尾とて決してこうなることを望んでいたわけではなかろう。今まさに「過渡期の人」(仮称)を責め苛み嘲り甚振り誹り詰り晒し者にし恥をかかせ顔を潰し体面を傷つけその全てを創作表現に昇華しているが故に不問に付されることまで計算済みで思う存分やりたい放題好き放題後顧の憂いなく心を弾ませながら執筆にかかれば1日2万字ペースという打鍵に励んでいるとしても、西尾がそれを望んでいたなどとはこれっぽっちも思わない。……とでも始められれば怒涛の反撃の口火を切るに相応しかろうが、事実は恐らく
そうではない。実際の西尾の対応を推測するに、なかなか穏便で、どうやらこうやら、僕と過渡期の人(地雷)の仲違いをなんとか間を取り持って良好な関係へと結び直そうとでもしている様子であった。

この場で西尾のそのような手の打ち方と作戦目標を批判するつもりはない。そもそも十分な情報を知らされていなかったのだろう。無理もない。

無理もないので、僕は特に派手な動きをみせる気はなかった。確かに西尾維新の小説はよく読んでいるし、ブログ記事にもしている。興味を持たれないとしても、持たれたとしても、どちらでもおかしくはない(過渡期の人{地雷}は公的に知られている範囲で西尾と面識があるので、それをきっかけとしていたと考えている)。まあまあ、相手のこともよく分からないしとりあえず何を書いているかくらいは分かるけど、さてさてどういう企みなのか、とんと見当がつかない。

単に小説のネタとして、ヒネって使っているだけなのか。

その割にやたら強いキャラやあまつさえ天才、言うに事欠いて人類最強にまでなぞらえているかのような手つきでこの件をアレンジして取り入れているので、こちらは益々混乱した。誇張? デフォルメ? それとも混乱を誘う事自体が目的か? どうやら僕が気付いている事には気付いていて、遠回しには返事をくれているようだけど……。

後に僕がステルスリアクションと名付けることになるそうした反応は、反応した事そのものを理解することはそう難しいものではないのだが、反応の詳細を判断することが驚くほど難しい。大雑把に好悪を判定することすら、客観性を伴う形では不可能だろう(相手も暇ではないので、わざわざ無名の人物の動向をチェックし反応してくるという事自体が好意的なのではあろうけれど)。それに、そのような状況ややりとりの様子をいちいち説明する意欲も湧かず方法も分からず、といってもっとはっきりした反応も期待できず、元々僕の進めていた中心的計画を更に進展する用意と展開の段階にリソースを費やしていたこともあって、手を出し兼ねていた。

あやふやで、何か厄介そうで。

所詮サイドストーリーめいたムードで。

ところがそうは言ってもその内容はしっかと記憶に残っていて「いずれデビューしたら『無名時代の苦労話』として全部ぶちまけてやる」つもりでストックしてあるものでもあって、しかしながら未だ無名時代が絶賛継続中であるにも拘わらず西尾の小説を読むたびに随所でこの件を想起し、記憶の糸を辿り、照合し、西尾がどう捉えているか彼がどう説明したのか推測し、そのギャップを把握し、その度に当時の苦悩が再現され、しかし解消する手立てもなくただそれらをメモに書き残すのみで、精神は消耗し、疲労は蓄積し、時間は経過した。

折しも僕が主目的の展開にやや難儀を感じ始め、これはどうやら何かをそろそろ変えなければならないか、と模索の必要に目覚め始めた丁度その頃に。決定的な転機が訪れる。

それは強いて言えば……。

遺言書と、天狗。

(註・埋め込みツイートはイメージです)


(第15話に続く)

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