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第19話「『俺は向こう側に、天狗の国に行かなきゃならねえ』」(批評篇・4) 西尾維新を読むことのホラーとサスペンス、ニンジャスレイヤー、そして批評家の立場と姿勢の話


前回はこちら。

(ご注意・本稿では西尾維新『掟上今日子の挑戦状』『掟上今日子の遺言書』、「アンエクスペクテッド・ゲスト」 「タワー・オブ・シーヴズ」『ニンジャスレイヤー』のネタバレを含みます。閲覧の際にはあらかじめご了承ください。尚、表紙画像と本文は一切関係ありません。その下の埋め込みツイートはイメージです。また、登場人物や組織の実名は伏せられている場合があります。そして、明かしづらい内容は不明瞭な表現となっている場合があります)



(これまでのあらすじ・男は語る。ある人物の陰謀が、巻き込まれた者によって文化的営為へと昇華されていく姿と、その渦中、彼自身に生じた異変とを)

要するに、球技におけるラリーやパスに置換可能な応酬が個別に分割された状態から1つの潮流へと収束、激流化し、破壊力を増大させた。海洋上で異なる2つの波が合流し、時に波の高さが加算された高波、三角波が発生するように。確率的にそうした事象は起こりうる。だから、僕の批評的営為への反応として西尾維新が作品で応答し、それを僕が感想という形でツイートし、その内容をニンジャスレイヤー翻訳チームが源泉としてアレンジした要素を素材の一部として作品化し、僕が感想や反応を送り、西尾がそれらの状況を把握した上で対象を選別しつつ加工し作品に使用、僕がリアクションし、翻訳チームが更に引用と展開・再構成によって制作、西尾への対応と僕自身のホラー・スリラーへの嗜好性とが状況を1方向へと集中させていった事は、いや、これは確率ではなくむしろ必然ではなかったか。

西尾は作家故これと定めたモチーフを揺るがせはしないだろうし、僕は無視できる程鈍感ではなく、翻訳チームは活かせるモチーフへの熱量・貪欲さを決して失わない。意志も指揮も存在しなかったが、必要な条件全てが揃っていたのだ。全員が全員、もし書きさえしなければ、この現在は実現しなかった。そして推定するに、全員が全員、書かずにはいられなかったのだ。そのような性分・業を持つ類縁と呼ぶべき者達を、同類である僕に責める事などできようはずもない。

全てが必然であったのかは不明だが、少なくとも、誰1人、事態を押し留める制動装置を作動させなかったか、装置そのものを備えていなかったのは確かなようだ。

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西尾維新『掟上今日子の挑戦状』(2015年8月)は連載分をまとめたものなので、『推薦文』を挟んで2014年12月、2015年4月、2015年8月と各話で初出の時点が異なる。西尾がどの時期にどのような認識を示していたのかを分析する場合、まずこの点を念頭に入れねばなるまい。「アリバイ証言」では「ストーリーラインが無理筋でもアリバイが完全なら誰も有罪にできない」「一部ではアイドルめいた扱いも受けている」「上層部も世話になっている」「大人がただで働くわけがないでしょう」「アリバイ工作」「それは理念でも原則でもなく建前だと」「ストーリーの疑問点があからさますぎる」「とろんとした大人しげな雰囲気にそぐわない、ふてぶてしいメンタルの持ち主」「図太いを通り越して、図々しい」「水泳も魅せる競技」「プールの底を這うように泳いでいたんじゃ、応援していて盛り上がらない」(今唐突に気付いたんだけど、これは「お前さっさと表舞台に出ろ」と言われてるのだろうか)「案外悪くない」「己の行為を解説・批評されるというのは」「自殺するような心の弱さを世間に見せたくなかった」「死んだ後の評判まで気にしてる」「魅せるのが仕事」「人にどう見られるかは、重要」「『面白いことを考える人がいるなー』で片づけてはいけない。現実は」「ずっと悩んでいてください」。

「密室講義」では「自分の身を守るためになりふり構わず必死」「だが実際にはやむにやまれず追い詰められて、勢い余って犯した罪を誤魔化すのに必死」「捕まった場合のことも考えているから手強い」「狭過ぎて口論さえ難しい」「偽証」「殺人犯からうらまれたくない」「誰かが嘘をついているか」「誰かが全員を騙しているか」「誰もが最適解を選び続けることができるわけではなく――それこそ衝動的に、あるいは何か勘違いをして、そんな理に合わない、無茶苦茶な凡ミスを犯してしまうかもしれない」「計画する分だけ痕跡が残り、推理しやすくなる」「ストーリーとしては多少の無理はある」「無理矢理になら説明がついてしまう感じが、なんだか気持ち悪い」「通訳が勝手に解釈し始めるとディスコミュニケーションになる」「そんな一円の得にもならない真似」「人生かかっているときには、案外、とんでもない間違いをしでかしてしまうものです」「ブランドイメージ」「自分のテリトリーが事件現場では気分が悪いだろう」「根回ししたり罠を張ることができる」「お金をもらっていないのに働くわけにはいきません」「犯人も容疑者も特定させず、迷宮入りをもくろむ」「最初から殺す気満々」「リスクやデメリットを上回る利潤」「話題によってテンションが変わらない」(これ僕の事?)「細部は衝撃によって上書きされる」「手をこらすほど言い逃れが難しくなる」。

「暗号表」では「明文化されていない」「解釈が無限」「議論自体は昔からあって、ようやく表沙汰になってきた」「同じ時代に同じことをしてもなお判断がわかれる」「紹介業」「コネ」「会社」「丸投げ」「誇らしげ」「お金の奴隷」「被害者の訴えなど、それだけでは無意味だ」「手札を伏せたままで暗号の答えを聞こうというのは虫が良すぎる」「会社の恥部」「秘密裏に取り出したい」「違法な名簿」「暗号を解かないとわからない違法物」「文意ではなく、鍵を使って文章に変更を加える暗号」「総当たりを門前払いする」「間違いや不完全さを人間ならフォロー、アジャストできる」「半分わかれば半分予想できる」「解答文を更に読み解く」「偶然では済まされない程度に」「暗号文は解答ではなく出題者の意図を汲むべき」「動機を考えるべき」。

以上と、あとがきにおける「何度も同じ話」「いいリアクションが欲しい」「お互い覚えているのに同じ話を繰り返してる」「何度目でしたっけ?」が関係するだろう。

(註・埋め込みツイートはイメージです)


『掟上今日子の遺言書』(2015年10月)では、「メディアコントロールのプロフェッショナル」「報道被害からの回復はうんざりするほどの長期戦」「作為的な気配」「陰謀」「骨折が憧れ」(下部のツイート「繋ぎ目」参照)「スタンスの根っこに『依頼人は嘘をつく』という絶対条項があるらしい」「結構長い付き合いなのにまったく信頼関係が積み上がらない」「商魂」「恰幅のよいかた」(スモトリ?)「筆舌に尽くしがたいほどに愚か」(向こう側でどんなやりとりがあったのやら)「名付けで妙な個性が生まれてしまう」「書き写すくらいは誰にでもできる」「偽の動機」「本当のことを書きたくない」「ストーリーライン」「言いにくい違和感を言葉にできる」「事件を通じて成長してもらうくらいしか、救いらしい救いはないのかもしれなかった」「一時間でどれだけの心の傷を負ってきているのだ」「己の名誉くらいしかもう守るものはない」「本当の理由じゃないのに冤罪をかけられたくない」「学校じゃあ浮いているのにビルからは落ちたんだって言われる」「最悪」。

記憶では、語り部の隠舘厄介(かくしだて・やくすけ)が自殺を試みた少女へ「共に晒して恥をかこう」といった意味の記述があった。それはある意味で自爆テロ的な真相暴露を僕に使嗾するものであるが、追及・問責はせず、指摘に留める。

また、これらの内容には奇妙に「忘却」のモチーフが強調されている。主人公が忘却探偵である事は当然として、それを踏まえたとしても、例えば「珍しい名前であるにもかかわらずそのクラスメイトを記憶していない」という点は、「過渡期の人」(仮称)が「比那北なんて名前の奴は覚えていない。もう忘れた」などと表明した事を想像させるものだ(過渡期の人{地雷}は「おあしす」で知られる{「おれじゃない」「あいつじゃないかな」「しらない」「すんだこと」の頭文字。責任転嫁用論理展開の各段階で使用される})。

(註・埋め込みツイートはイメージです)



今後の記録・分析・指摘は「ステルスリアクション・エクストラ」で行うものとする。




(第1話 もしくはステルスリアクション・エクストラ に続く)

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比那北幸@批評
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