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本と活字と紙の狭間で ~自費出版アドバイザーの独り言~(5)

 第1回目のBook Cafeでご相談を受けたのは、かつて和服のリフォームの教室を開いていた女性だった。

 「自分の手がけた作品のプリント写真を保管してあるのだが、1冊の本の形にまとめたい」というものだった。

 予算的にどのくらいをお考えなのか尋ねたところ、たくさんのプリント写真をスキャニングするにはかなり足りない感じの金額。

 印刷会社は出版社と違い、基本的に「売れる本にするための編集」をしない(売る必要がないから)。そして組版・印刷・製本までなので、ネット印刷を除けば自費出版を手掛けている業者としては安価である。それでもやはり材料費・人件費を含めての原価はかかり、利益は必要なのだ。無論、ぼったくりのような価格設定は良心が咎め、正義が許さない(笑)。

 それでもやはり足りない……どうすべ。

 文字原稿の少ない作品集の場合、画像がデータではなくプリント写真だと、DTP料金のほとんどはスキャニング代(ゴミ取りを含めて)になってしまう。印刷部数の多少にかかわらずここの部分は変わらないのだから、希望の金額に合わせるならばどうしてもスキャニング数を減らす必要がある。そしてページ数も減らさねばならない。

 そこで提案したのは、写真を印刷した時の色味にあまりこだわらないのであれば、ご自分でプリント写真をトリミングして(切って)台紙に貼り付ける方法。サイズ的に希望があるものだけは別にスキャニングして嵌め込むことにすればスキャニング枚数はググっと減る。

 納得していただけたので、厚めの上質紙を本の仕上がりの原寸サイズにして差し上げた。もちろんはみ出さないようにお願いしてだが。

 業者まかせではなく、自分の手で「本を作る」楽しみも感じてもらえたらいいな、とも思っていた。

 そうして「思い出をもう一度 和服類のリメイク&簡単ソーイング集」という約50冊の作品集が仕上がったのは、ほぼ1ヵ月後。

 とても嬉しそうな笑顔に癒され、あらためてこの仕事をする喜びが湧いてきた。


 ……と、ここまでは割と普通の印刷物の範囲だったのだが、「紙」へのこだわりが沸々と湧き上がってくるようになったのはこの頃からだった。

 当時、Book Cafeで受けた仕事のほかにも4~5本、担当する自費出版書籍が同時進行していたのだが、そのうちの1本は今でも思い出深い。

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