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結婚は勢い

20代前半の頃、私には付き合っている女性がいた。もとはナンパで知り合った子なのだが年は私と同じで、妙に気が合う子であった。彼女は一人暮らしをしていた。私もアパートを借りていたのだが、解約し彼女と一緒に住むことになった。

その当時私はキャバクラの雇われ店長をしていた。彼女はピンサロで働いていたのだが、私と付き合うのをきっかけにピンサロを辞めた。容姿はいい子で風俗店では当たりの部類に入る子だったので店からは時給アップ等を提示され引き留められたらしいが、彼氏が出来たらピンサロは辞めるという事は以前から決めていたらしい。

一緒に住むようになるまでそれほど時間はかからなかったが、一緒に住むようになってからは私の店にもたまにバイトに来るようになった。彼女はとても嫉妬深かった。店にバイトに来るようになったのも彼女から言い出したことで私を監視したかったのだろう。私の帰りが遅くなると浮気を心配し私の服を脱がせ臭いをかいで確認するほどの徹底ぶりだった。

彼女が妊娠した。私は素直にうれしくもちろん結婚をするつもりでいた。しかし、彼女の表情には嬉しさとは別の感情があるように見えた。こちらから結婚の話をするとすぐに話をはぐらかす。妊娠も安定期に入ってきたころ、彼女が話があると言ってきた。彼女は結婚していたのだった。知り合った男と勢いで入籍してしまい、その後すぐに別居になっていたようだ。つまり私の子供なのだが、籍が入っている状態のため、戸籍上は私の実子とはならないのだった。それがわかっていたから彼女は私に中々話すことが出来なかったのだろう。

私は彼女の夫を呼び話し合った。しかし夫には別れる意思は全くなかった。しかし彼女もよりを戻すつもりもなく私と一緒に居たいといった。話しは平行線のまま進展せず月日だけが経っていた。正直私は面倒になっていた。若かったこともあってか、面倒な手続きはやりたくなかったし、ここまできてはっきりしない彼女にも腹が立っていた。夫は何とかやり直したいと言い、自分の子供として育てたいと言っていた。今考えると若い割には立派な考えの持ち主で、彼女を幸せにしてくれそうな予感もしていた。

そんなころに、店に入ったばかりの子から悩みがあるから聞いて欲しいと連絡があった。大事な仕事であるので彼女の部屋まで行くことになった。部屋に行くと大した話はなく食事を作ってくれたり、店とは関係ない世間話で盛り上がっていた。少し時間が経ってからその彼女から付き合ってほしいと告白された。正直私は迷った。今の彼女には子供はいるが先が見えない状況であり、先ほども言った通り少し面倒になって来ていたのだ。その日は先ほど告白されたこの家に泊まることになった。もちろん体の関係も持つという事になった。

私は彼女の家には帰らなくなり、新しい彼女の家に住み着くようになっていた。数か月して新しい彼女も妊娠した。彼女には一歳になる子供がいた。しかし私はそのことには全く気にならなかった。シングルマザーだった彼女と結婚して幸せになりたいという気持ちが強くなっていた。結局前の彼女とは別れることになった。そして新しい彼女と入籍した。スピード婚であった。お互い家庭が複雑な状況であるため、披露宴やパーティーはやらなかった。まさに勢いだけでしたような結婚であったが、子供も可愛い子が生まれ、私は幸せだった。その十年後には別れてしまうのだが、それでもとても楽しかった。結婚は勢いであるとよくいわれる。確かにそういった事には一理あるが勢いでしてしまったために不幸になることもあるんだという事を身にしみて感じた出来事であった。あのまま前の彼女と一緒に居たらどうだったのか?結婚した妻と離婚しなければどうだったのか等とくだらない事を考えてしまう事もある。勢いでする結婚もありなのか、それとも慎重になって相手を見極めてする結婚がいい結婚なのかわたしにはまだわからない。


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