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第一話 母親がいなくなった①

 「おばあちゃん家に行くよ」母にそう言われ、私は喜んで車に乗り込んだ。母が持っていた大きめのバッグには気を止めることもなかった。祖母の家は車で3~40分くらいの所にあり、当時9歳の私には少し都会な感じがしてとても好きだった。

私の家はというと、周りには畑と田んぼが広がり、鍵をかけている家なんてないというくらいの田舎町。そこに長距離ドライバーの父とパートをしている母、そして4歳年上の姉の4人で暮らしていた。

特別裕福でもなく、貧しくもない普通の家庭である。同じ敷地に別棟で祖父の家もあり、今からいく祖母とは私が産まれる前に離婚したらしい。

車の中で唐突に「しばらくおばあちゃんの家で遊んでな」と言われた。特に気にもとめず、学校を休めるチョットした嬉しさがあり、祖母に何か買って貰おうなんてことを考えてワクワクしていた。

祖母の家に着くと、お小遣いを渡され「近くの駄菓子屋さんにでも行って来なさい」と言われ、駄菓子屋に置いてあるゲーム等で1時間程遊び祖母の家に帰った。

私が帰ると二人は何か話をしていたが、帰ってきた私に気が付き、「じゃあ、そういう事で」と言って母は車に乗り帰って行った。

祖母は少し涙ぐんだ目で私を見て「大丈夫、何も心配いらないよ」と言った。どうしてそんな事を言うんだろうと多少の違和感を持ったが「うん、わかった」と答えた。それから母は二度と迎えに来ることはなかった。

私の送ってきた半生を自伝的小説として書いていきたいと思います。毎日少しずつ更新していきますのでよろしくお願い致します。

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次回に続く

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