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第二話 母親がいなくなった②

母の持ってきた大きなバッグには私の着替えなどが入っていた。学校を休んで堂々と遊んでいられることに喜んでいる私とは対照的に、それから数日間祖母は忙しそうにしていた。

後から知ったことだが、その間祖母は父と話し合いを進め、長距離ドライバーの父は小学生の私の世話は出来ない、姉は中学生だったためそのまま実家に残る、私は転校させて祖母の家で引き取るという事になったらしい。

母は蒸発してしまったのだ。

家を出ることは父も姉も知らなかったようだ。祖母でさえあの日私が駄菓子屋で遊んでいる1時間程度の間に話しただけだったらしい。

2~3日して祖母が「お母さんはもう帰ってこないよ」と私に言った。状況が理解できない私は、「どうやって帰ればいいの」と聞く。「大丈夫だから.....」としか答えてくれなかった。

数日後、父が祖母の家に来た。二人でだいぶ長い時間話していたが、「今日は家に帰るよ」と言って私を車に乗せ実家に向かった。

車の中では、転校の手続きが終わったこと、明日元の学校に行ってお別れ会をすること、その後は私の荷物を祖母の家に運ぶことを伝えられた。そして一言「こんな事になってごめんな」と言った。父も突然のことで動揺している様子が子供ながらにも伝わってきた。

小学4年生くらいだと友達と別れる寂しさ等は特になくとても楽しいお別れ会だった。担任の先生からも「新しい学校に行っても頑張れよ」と言ってもらった。

学校に置いてあった荷物もすべて家に持ち帰り、待っていた父と一緒に車に荷物を詰め込む。父も仕事の都合もあるので急ピッチの作業だったのを覚えている。

姉は淡々としたもので、私のことなどは気にもかけていない様子だった。祖母の家に向かいながら、新しい学校への期待、不安、そして今までの生活から抜け出せる少しの安心感を持っていた。

今回は転校に至るまでのエピソードを書きました。次回は母から受けていた虐待等について書いてみたいと思います。

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次回に続く


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