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聖ヒルデガルトも使ってた⁉︎現在は危険な眼鏡のハーブ“コモンルー” 𓇗𝕳𝖎𝖑𝖉𝖊𝖌𝖆𝖗𝖙𝖊𝖓 𝕹𝖔𝖙𝖊𓇗

“中世ヨーロッパでは悪霊を追い払い疫病から身を守る神聖な植物”として、ブルーグリーンの葉を持つ「コモンルー」(common rue)は、中世にはその美しさが称賛され、香りの強い葉は調味料や薬、お守りとして珍重されました。「悔恨のハーブ」「神の恵みのハーブ」とも呼ばれ、ハーブ・オブ・グレイスという別名もあるほどです。カトリックのミサの前に、ルーの枝から聖水をふりかけ悪魔をとりはらう習慣があったことから、「神の恵み」として扱われるようになりました。

中世には狂気を治す方法として、真夜中に集めた夜露にルーを混ぜたものをふりかけたそうです。また、ルーには不幸をとりはらうおまじないもあり、家でルーを育てていると不幸とは無縁な生活が送れるともいわれます。

コモンルー(common rue)は、南ヨーロッパ原産で、ローマ人によってイギリスや北ヨーロッパに伝えられ、現在では世界中で広く栽培されています。

日本には、江戸時代に渡来し、日本語の「ヘンルーダ」はオランダ語に由来します。英語では「ルー」(rue)あるいは「コモンルー」(common rue)とも呼ばれ、日本でも、そう呼ばれることもあります。

ヒルデガルト・フォン・ビンゲンは『フィジカ』の中で、コモンルーを単品としてだけでなく、十数種類の複合レシピの中で効果的な材料として扱っています。彼女は、刻んで調理したものよりも、生の葉の方がより有益であると考えていたようです。

古代や中世において、コモンルーの持つ治癒効果は数え切れないほどありました。コモンルーは、古代ローマでは、「眼鏡のハーブ」と呼ばれるほど視力を高める効果があると信じられており、ローマ時代には目を酷使する彫刻家たちが煎じ薬を飲んで目の疲れをいやし、レオナルド・ダ・ヴィンチもルーの煎じ薬を使っていたとか。
中性の修道士たちは、細かい字の写本で疲れた目や頭痛を治すためにコモンルーを常備していたともいわれます。葉で作った洗浄液は、目の疲れや視力低下防止に効くそうですが香りが強くかぶれやすいので要注意です。
動物性、植物性、鉱物性を問わず、万能の解毒剤として知られています。

コモンルーに含まれる苦味成分のルチンは、オレンジの皮にも含まれており、苦味と重苦しい匂いにもかかわらず、コモンルーは古代ローマの料理によく使われた調味料でした。
古代ローマ・ローマ帝国時代の調理本『アピシウス』は、野ウサギの煮込みの肉汁、魚のフライのソース、フラミンゴやオウムに適したソース(え、食べていたの⁉︎)などに、コモンルーを入れていたと記しています。

葉に含まれるシネオールという精油成分が通経剤・鎮痙剤・駆虫剤などに利用され(猫もこの香りを嫌うと言われています)、料理の香りづけにも使われていましたが、ウルシのように接触するとかぶれることもあり、同じく苦味のあるタンジー(下記添付の記事参照)と同様、コモンルーは中世の料理で調味料として使われていましたが、毒性を含むことがわかり、今日では調味料としては利用されていません。

成分
有効成分:全草に精油(メチルノニケトン、メチルヘブチルケトン、ピネン、シネオール)を含み特異な芳香がある。他には、アルカロイドのアルボリニン、フラボノイド配糖体のルチン、フロクマリン類のベルガプテン、コクサギニンなどを含む
注意)生の葉、乾燥した葉共に、食用は避けること。精油からも皮膚刺激や毒性があるため、危険精油として一般に流通はしていません。

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▼タンジーについてはこちらのnoteをご参照ください

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時代を重ねるごとに、科学や医療が進み、成分が調べられ、利用ができるかどうかの正しい判断ができるようになってきました。
フィジカでは、薬草として使用されていた形を、現代のエビデンスに沿った形で使用して参りたいですね。

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間違わないで!種類が違う?  
Ruta chalepenesisは、コモンルーと同じルー(Ruta)?

コヘンルーダ(Ruta chalepensis)は通常、近縁種のコモンルー(Ruta graveolens)と混同されてしまいます。

コモンルー(Ruta graveolens)の記述で、【薬草としても栽培されており(エチオピアでは現地名「Tena adam(アダムの健康)」として有名)、調味料や虫除けとしても利用されている。 】と、よく書かれています。
上の文章でいうTena’Adam (ጤና አዳም) というルーは、コヘンルーダ(Ruta chalepenesis)を指しており、コモンルー(別名 ヘンルーダ) (Ruta graveolens)ではありません。

コヘンルーダ(Ruta chalepensis)は、コモンルー(Ruta graveolens)と混同されがちですが、後者であるコモンルー(Ruta graveolens)はエチオピアでは生育していません。
また、コモンルー(Ruta graveolens)は、エチオピアでは知られておらず、ヨーロッパが原産であり、世界各地で栽培されています。
しかし、この2つの種には、化学成分や形態的特徴など多くの類似点があり、また、民間療法では、相互に多くの用途があることが知られています。

この植物の香りと味を表す「Ruta」は、ラテン語の古い名前である「Rue」で、文字通り【苦味】や【不快感】を意味します。
この苦味は、植物に含まれるルチンという成分に由来すると言われています。chalepensis "という固有名は、シリアの町Chalep(現在のHalebまたはAleppo)の名前に由来しています。

Tena'Adam(テナアダム)は、英語ではRue(ルー)と呼ばれ、歴史的に魔法や神秘主義、魔術に関連する植物ハーブです。古代から様々な方法で利用されてきました。
コヘンルーダ(Ruta chalepensis)は料理の味付けに使われるほか、薬としても使われています。エチオピアの言語の一つであるアムハラ語の『Tena'Adam』で「アダムの健康」と直訳されるその名前は、その薬効を意味しています。

エチオピアでは、生の植物をその辛味のために使用します。その心地よい香りと味から、サワーミルクやチーズ、コーヒーやクティなどの温かい飲み物の味付けに使用されます。
生の葉は熱湯や牛乳に加えられ、胃の不調や便通の悪さを改善するために子供たちに与えられます。また、「エチオピアの民間療法では、疝痛持ちの赤ちゃん、耳痛、心臓痛、痔、インフルエンザ、腸の不調などの治療にも使われている」といいます。

北アフリカでは、風邪や耳痛、腸の不調にTena'Adam(テナアダム)を煎じて使います。また、その強烈な匂いから、サソリよけとしても使われています。
アルジェリアでは、植物を煎じたものを点鼻薬として、子供の嘔吐や発熱の治療に用います。
オイル抽出物は解毒剤として、毒のある蛇に刺された時の対策に使われます。このハーブは、抗関節炎、抗リウマチ、抗てんかん、抗ヒステリーとしても知られており、抗ウイルス、抗炎症、抗真菌、抗バクテリアの特性を持っています。少量であれば、頭痛を和らげることが指摘されています。

エチオピアの様々な地域の女性は、香りを楽しむために(香水として)、身を守るために、そして頭痛を和らげるために、ハーブを耳の後ろに置いています。

注:Tena'Adamの薬効成分は科学的に研究・確認されていません。

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コヘンルーダは沖縄にも、薬草として伝わっています

沖縄に伝わる医者要らずと言われる薬草は、昔から沖縄本島北部に自生し、エチオピアと同じ、コヘンルーダ(Ruta chalepensis)です。沖縄では、方言名の【イサナカシグサ】と呼ばれているらしいです。由来は、イサ(医者)ナカシ(泣かす)薬草という事から来ているようです。これがあれば患者は医者を必要としない、医者は儲からないので泣くということだと考えられますね。

 その効果は、❶「打ち身、神経痛の際その患部を葉の汁で湿布する」、❷「ヒステリーや不眠の際に生の葉の汁をお湯で薄めて飲む」❸「古くは沖縄北部で泡盛などに漬け、薬用酒として利用された他、肩こりや腰痛などの湿布に使われていました。」などとあります。
ただ、「多量に使用すると中毒になる」とも記載されています。

高さは30センチほどで、コモンルー(Ruta graveolens)より小さく、草全体に独特の匂いがあります。開花期は初夏、集散花序を出し黄色の花を着けます。

高温で乾燥した土壌条件への耐性が評価されているほどなので、陽光地を好みますが、陰地だと枯れてしまうとのこと。沖縄の気候だとたしかに育ちやすそうですが、湿度が高い土地だと育つのは難しいかもしれませんね!

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