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世界最古の医学書?ロルシュ医学書って何?𓇗𝕳𝖎𝖑𝖉𝖊𝖌𝖆𝖗𝖙𝖊𝖓 𝕹𝖔𝖙𝖊𓇗

今回はユネスコにも登録されている現存する最古の医学書、「ロルシュ医学書(Lorscher Arzneibuch)」についてまとめています。

歴史の流れから宗教の立ち位置、修道院の役割、そして聖ヒルデガルトを見ていくと、何か一つの線がつながっていく気がします。ヒルデガルト・フォン・ビンゲンを追うためにも周りの歴史なども含めてまとめていきたいと思います。


中世の修道院は、キリスト教の隣人愛の精神で、医療を行う場でもありました。
795年に書かれたヘッセン州ロルシュ修道院のリヒボード修道院長の監修で著された「ロルシュ医学書(Lorscher Arzneibuch)」はドイツの地で書かれた現存する最古の医学書です。

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▼ロルシュ修道院に関して

▼ロルシュ修道院ホームページ

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ロルシュ医学書は、8世紀末の10年間、すなわちカール大帝の時代に、ロルシュ修道院(ヴォルムス近郊)の、名前は知られていない様々な人に手によって書かれたものです。

75ページの羊皮紙に、グレコローマン(ギリシャとローマ)の伝統的なレシピ482点と、ラテン語で書かれた医学の理論的・実用的な文章が収められています。この大要は、実用的な教育および参考書(歴史、解剖学、代用薬のリスト、測定単位、用語集を含む)として構想されており、約150ページの主な部分は、約500枚の手書きの処方箋および治癒技術に関連した文章で構成されていますが、すべて当時のラテン語で書かれています。

現在も処方されているものとして、精神科での治療にセイヨウオトギリソウを使ったり、循環を安定させるために心臓の配糖体を使ったりしていますが、中世のその当時としては画期的なものも書かれていました。
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▼セイヨウオトギリソウに関して

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その神学的・哲学的な範囲は、修道士と密接に関係しています。古代では、ヒーラーによる病気の治療や癒しは、神の全能性への無許可の介入と考えられていました。

カール大帝の時代になると、このような世界観は一変し、キリスト教の信仰によって隣人を愛することが義務づけられ、病人を癒すこともできるようになりました。
医師と患者の関係について、詩で書かれた説明書も特筆すべきものです。『貧富の差にかかわらず、すべての人に医療を提供すること』が求められています。

しかし、病気は神の罰、さらには原罪であるという中世初期の信仰がカール大帝のもとで見直されただけでなく、カロリング朝時代の病人の状況や、修道士の医師や薬屋によるケアや治癒の様子を描いています。

ロルシュ医学書は、古代医学の再評価に基づいた、西欧における近代医学の始まりとなるものと言われています。その中で著者は、〈古代医学の知見〉と〈キリスト教の信仰内容〉を組み合わせて、『人を癒す能力はキリスト教の慈愛の直接的な戒めであり、それは神の人類に対する愛の証である』と推論しています。これにより、医学や癒しの技術は「神の救いの計画を妨げる不法なもの」という汚名を返上することができました。
ロルシュ医学書は、異教の古代からキリスト教の近代まで、これ以上ないほど正反対の2つの文化の橋渡しをしたカロリング王朝の功績を証明するものでもあります。

そして、古代の成果を否定したり破壊したりするのではなく、評価して利用することで医学書を実現しました。現代にも通じる植物薬理学の知識に加え、植物薬理学という専門分野の発展を印象的に記録しています。

今から約1000年前、この写本は皇帝ハインリヒ2世によってバンベルクに運ばれ、現在に至っています。ユネスコは、2013年6月18日、西欧中世の医学史における最古の文献である「中世初期の修道院医学の優れた資料」として認定し、ユネスコ世界記録遺産に登録されました。

キリスト教を基盤とした自助努力が世俗的な科学と結びつきこそが、この医学書の特別な意義のように感じています。

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