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アダム・スミスならイギリスのEU離脱に何て言うだろう

1月31日の夜(日本では2月1日)、イギリスがEUから正式に離脱しました。

1957年に発足したEUの前身である欧州石炭鉄鋼共同体が始まって以来、参加国が抜けるのは初の出来事だそう。イギリスのみならず、EU参加国のショックは少なくないはずです。

そこで、イギリスのEU離脱について少し思うところを書いていきたいと思います。今後の経済的な影響はプロの方々にお任せします。(深い判断つきません...)

「EU離脱と欧州平和」「もしあの経済学者生きてたら、祖国のやってることなんて言うやろ」ってことをぼんやり考えてみます。


EUと欧州石炭鉄鋼共同体

EUは今でこそ経済協力のためという印象がありますが、その起源には平和という目的が存在します。二度の世界大戦を経験し、もう二度と過去のドイツのような国を産まないことを目指し、欧州の平和をEUは追求してきました

そもそも、EUの前身である欧州石炭鉄鋼共同体は「武器の原料である石炭と鉄鋼を共同で管理しようね」というもの。平和を願うが故にできたもの。そんなEUからのイギリスの離脱。EUの歴史的な意義を考えたとき、イギリスの離脱は大きなショックです。

(ちなみに、このEUについて少し興味を持ったら下の動画おすすめです。とっても優しくてわかりやすいです。)


考えれば、近年の欧州は自国第一主義、ナショナリズムが高まっている状態。そんな状況も相まって、EUは雰囲気最悪。世界に目を向ければ、世界の警察と呼ばれていたアメリカもトランプ就任から自国ファースト。中国はコロナウイルスでパニック。日本でもマスクが売り切れ。ただ、インフルエンザの患者数は減ったらしい。ナイスマスク。話が逸れた。

とにかく、イギリスのEU離脱はニュースで報じられている経済的な混乱以外にもインパクトが大きい。要は、様々な側面でビッグニュースということです。

あれ、でも歴史的に自由貿易ゴリ押ししてたのってイギリスじゃないんすか。イギリスのあの、名前が思い出せないけど、経済学者。自由貿易だっつってたじゃん。欧米経済の授業でさんざん聞かされた。あの欧米経済の先生マリオカートに課金していることを「大人の力だ」って自慢気に話してた。ちょっと引いた。話が逸れた。


アダム・スミスはブレクジットをどう考えるか

高校の現代社会の授業で、アダム・スミス、ケインズ、フリードマン、シュンペーターあたりは名前はなんとなく聞いたことあるはずです。

そんな経済学者の中でも一番始めに名前が上がるのが「国富論」の著者のアダム・スミス。このアダム・スミス、何を隠そうイギリス人。そして、「貿易の自由」を著書の中で散々語っています。今のイギリスの自由貿易と逆行するような動きをどう思うでしょう。

そもそも、なぜアダム・スミスは貿易の自由を語っているのかを整理したいと思います。

アダム・スミスは「市場に参加する人は自分の利益だけを考えていて、社会の利益は考えていない」と言います。しかし、そんな皆が利己的な状況であっても「市場が自由であれば、供給される商品の量は有効需要に見合っただけになり、誰かがコントロールしているよりも社会の利益を高めることができる」と説明しています。

確かに、需要がないものは供給されない(or 供給されても売れずに廃れる)ので、無駄は産まなさそうです。「売れるものはたくさん作ろう、これは売れないから少しだけ」なんてことは小学生でも理解できます。また、もし自由ではなく、誰か(権力者など)のコントロールがあると、「皆(社会)が本当に望んだ取引ができなさそう」ということは、直感的に理解できると思います。市場主義経済ではない、社会主義経済の国などです。

そして、アダム・スミスはこのように市場を自由にしておけば、勝手に社会の利益が高めらることを「見えざる手」と表現したんでしたよね。(このフレーズだけ試験のために暗記した、耳馴染みがある)

そんな、市場の自由を熱く語るアダム・スミスは彼が生きていた当時のイギリスの貿易体制についても批判を展開します。当時の貿易においては「重商主義」という考え方が主流でした。

この重商主義、当初は金や銀の獲得とその輸出を禁止をすることで金銀を蓄えていく「重金主義」で、その後は、輸出を輸入より多くする(輸出>輸入)ことで稼いでいく、「貿易差額主義」として発展していきます。外国に商品を売りまくって、外国からの商品には関税をかけて、貿易収支の黒字化を目指すというシンプルな戦略です。一見良い戦略にも見えなくもないですが、これをアダム・スミスは痛烈に批判します。なぜか。

それは人々が求めているのが、「お金」ではなく、お金で買える「モノ」であるからです。

確かに、貿易差額主義をすすめることでお金を獲得することはできます。しかし、人々が欲しているのはモノであり、モノが自分の国に入りにくくする関税政策はダメだ、ということです。「モノの供給と需要の出会いを自然な状態に委ねることこそが良いのだ」とアダム・スミスは考えていました。つまり、国益以上に全体での利益を考えていたのです。

そんな理由からアダム・スミスは貿易の自由を説いていました。

転じて、今のイギリス。自国に流入する移民などへの不満から、EU離脱へと突っ走って行きました。貿易の自由からももちろん遠ざかるでしょう。欧州全体よりも、自国優先と言う選択です。

欧州全体の平和と経済の自由化を目指し、発足したEU。そんなアダム・スミスもきっと喜ぶEUから離脱を決めたイギリス。アダム・スミスが生きていたら、ちゃんとガツンと言ってくれるんだろうなあ、なんて想像してしまいます。


最後に

このnoteを書いたあとに、「これを文章にしてる人はいないはず、でも念の為」と思い、探してみたら、これ。

記事どころかしっかりした本...。きっと、自分のとは比べられない深い考察に違いありません。また、買って読んでみたいと思います...。


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