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【ブルーロック×人的資本経営 第三章】メンバーの"FLOW"を組織の"FLOW"へ。そのためにリーダーが出来ること。

エゴイストばかりが集まり、描かれている「ブルーロック」の中でも、実はそう多くはありません。しかし、その物語を紡げた選手から非連続的に成長していく様が描かれています。

サッカー漫画であるにも拘らず、人的資本経営のエッセンスが沢山詰まっている、『ブルーロック』。そのエッセンスを紹介するコラムの第三弾です。

前回は「どうしたらメンバーが"FLOW"状態に入るのか」について考察をしましたが、今回は「そのFLOWはどうしたら連鎖し、化学反応を生み、組織のFLOWになるのか」という点を考えたいと思います。

最高のパフォーマンスを出せる状態である"FLOW"、メンバー全員がその状態に入ってくれたら、リーダーとしてそんなに嬉しいことはないですよね。

ブルーロックでの解説

人は"合理性だけ”では動かない

主人公・潔 世一が所属するバスタード・ミュンヘン(ドイツ)とマンシャイン・C(イギリス)の一戦。潔のチームメートであり、1 on 1を得意とする雪宮は、一人でゴールを狙い、失敗します。

それに対して潔は「自分と手を組み、自分にアシストをして点を取ることが最も合理的で、どう考えてもプラスである」として、協力体制を敷くことを申し出ます。

しかし、雪宮は

「お前らみたいに利口な人間だけが報われるなら、この世界は間違っている・・・!!」

という熱い言葉と共に断固拒否します。

ブルーロック 第23巻より

キーワードは「主人公感」

当然、その瞬間は潔も「はあ?」と思いますが、ここで終わらないのが、メタ認知と思考力の凄い潔くん。

自分の発言が自己中心的であり、"雪宮の物語"を無視したものであったことにすぐに気が付きます。

このとき、雪宮は「試合に勝つ」ことではなく、「敵視する潔に勝ち、点を決めることで、夢を諦めなかった自分の人生を肯定する」ことをゴールにしていて、そのゴールを達成する"物語"の”主人公"としてプレーしていました。

にもかかわらず、「他者(潔)にパスして勝とうぜ」という提案が受け入れられるわけが無かったのです。

これに気づいた潔は、皆の「物語」と「主人公感」を想像・理解しながらゲームを動かし、最後の最後で雪宮にパスを出し、FLOW状態MAXの雪宮がゴールを決めて、試合に勝利します。

潔はこの「主人公感」を「自分の物語を信じて突き動かす精神性」と定義し、その主人公達が同じ成功を求めて交差する時に、化学反応は生まれる、と考えました。

ブルーロック 第23巻より

主人公感→FLOW→FLOW×FLOW

まずは「自分だけの物語」を作り、そこに"主人公感"を感じる

前回のnoteでは、「自分だけのオリジナルな挑戦的集中を設定すること」がFLOW状態に入るための重要な要素であると紹介しました。

しかし、実はその前にもう一つ大事なトリガーがあり、それが「主人公感」である、ということをこのストーリーは指摘しています。

裏を返すと、自分の物語が無い人間には挑戦的集中を設定することが出来ない、という厳しい現実を突きつけていることになります。

「あなたは自分だけの物語を描き、その物語を歩んでいますか?」と聞かれた時に、どれだけの人が「はい!」と即答出来るでしょうか。

でも、自分の人生という物語を生きれている人とそうで無い人では、大きな違いが生まれてしまいます。

逆に、「自分がどのような時に主人公感を感じるのか」という問いから始めると、物語が作りやすいかもしれません。

他者の"物語"を理解する

自分の物語が出来上がり、FLOW状態に入れる「挑戦的集中」も見つけられたら、次は他者に目を向けてみます。

・横にいる同僚は、上司は、部下は、Slackの先にいるメンバーは、どのような物語を生きているのか?

・そして、どのような目標やタスクがその物語のページを進めることになるのか?

こういったことを少しでも理解した上でコミュニケーションを取ることが、確実に自分の人生を豊かにします。何故か。

「他者の人生を豊かにする手助けが出来て、その行為自体が自分の人生を豊かにするから」といった、利他的な話ではありません。そうではなく、

「他者がFLOW状態に入り、パフォーマンスが最大化すれば、自分も仕事がやりやすくなり、FLOW×FLOWで最高の結果が出せるから」

この一見自分勝手な理由で他者の物語を「利用」していたとしても、それはその人にとって確実にプラスであり、人生に貢献しています。

人間は「利他」だけでは生きていけません。最高のエゴが、最高の組織を作り、それぞれの最高の人生を作る。この視点こそがブルーロックという漫画の原点であり、読者に問いかけているテーマであると考えています。

リーダーは何が出来るのか

ここまではメンバー・選手側の目線での話をしてきましたが、ではリーダー・マネージャーはどうすればいいのか。

これは簡単です。FLOW×FLOWが生まれやすい状況を作ればよいのです。

①まず自らの物語を紡ぎ、それを開示する
②メンバーが自分自身の物語を作り、「主人公感」を感じる手助けをする
③各人がFLOW状態に入るような「挑戦的集中」として適切な目標を常に設定する
④それらの物語と挑戦的集中を開示し、お互いに閲覧出来る状態にする
⑤互いの物語を進める動きを推進する(その見本を見せる)
⑥①~⑤のプロセスを回し続ける

①~③は、「各個人をFlow状態にする手助け」であり、その具体的手法は前回のnoteで綴ってあるので、省略します。

今回新たに出てきた要素は④と⑤です。つまり、「組織として、各メンバーの物語のページを進め合う文化と環境を作る」ということです。

この「自分の物語の開示」はめちゃくちゃハードルが高いと思います。そんなことをしたくない人もいるでしょう。

でも、「開示されていないことを知る」のは不可能であり、他者がそれを理解することが出来なくなってしまいます。

それどころか、「きっとこの人はこういうことをして欲しいはずだ」という謎のGuessが発生し、それが外れ、互いに不幸になる、という事態をよく見ます。

ブルーロックでも、今他選手への理解が進んだことによる確変が起きているステージだと思っていて、それと同じことを組織で起こせるリーダーシップが期待されると思います。

おわりに

これを書いていて気づきましたが、潔与一は「プレーヤー」でありながら、「リーダー」なのですね。

彼はフィールド上で自分のエゴイズムを表現し、まずは他選手とのエゴとガチンコに食い合う(当方note第一章)。

次に、他者の物語や主人公感を理解し、それを利用する(本章)。しかし、それでもまだ成し得ない目標があり、それを決して諦めない。その彼が目指す目標に向かって、皆の心が鳴動し、組織がさらにレベルアップする。

決して周囲は潔を「リーダー」として考えていませんでした。そんな中で、彼が最強のプレイヤーを目指す中で、結果としてリーダーとしての機能を果たす、という理想的なストーリーです。

次回は、こんなことを深堀してみたいと思います。

では、また次回お会いしましょう。

細田 薫


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