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【考察】転職後100日間の過ごし方

先日、転職してちょうど100営業日が経過しました。

人生初の転職。ですが、これまで「買収案件への出向」を2度経験しており、そこからの学びを踏まえて過ごしてきました。結果、何とか納得いく形で100日目を迎えることが出来たと思います。

普遍的な「正解」は無いかもしれませんが、私なりの「転職後100日間をどう過ごすべきか」の考察をしてみました。いつもより少し長いですが、心を込めて書きました。ぜひ最後までご一読ください。


3通りの過ごし方

先に結論の大半を書いてしまいますが、私は「転職後100日間の過ごし方」に以下の3通りがあると思っています。

①オカシイと思うことがあっても、まずは様子見→組織・社員との調和を優先
②Day1からドンドン意見を言い、100日のうちに結果を出しに行く。
③小まめに存在感は出しつつも大ナタは振るわず、調和も重んじる

このどれかが「正解」というよりかは、転職ケースごとの場合分けだと思っています。其々の詳細を見つつ、当て嵌まるケースも考えてみましょう。

パターン①:転職先との調和優先

松下幸之助の言葉

パナソニック創業者・松下幸之助が、その年の新入社員向けに書いた本で、以下のように語ったとされます。

「転職してきた人は我社に入った当初、色々と粗がみえてしまうかもしれないが、まずは組織のやり方に従ってみて欲しい」

この言葉は、以下2つのメッセージに分解されると思います。

①一見不合理に見えることがあったとしても、実はそれには意味も理由もあり、拙速に「おかしい」と考えるのは浅薄である。

②新しいコミュニティに入った時、例えそれが正しかったとしても、いきなり現状否定から入ったら、周囲の人は納得せず応援もしてくれない。そうすると結果的に何も生まれないし、何も変えられない。本当に課題を解決したいのなら、先ずは応援をしてもらえる環境を作ることが先。

①には100%同意します。世の中には「不合理✖️不合理=合理」というケースも少なくなく、たった一つの側面だけを見て判断した場合、間違っていることの方が多いです。

ですので、初日に「これはオカシイ!」と気勢を上げるのはやめた方がいいでしょう。ただ「これ変じゃないか?」という感覚は持ち続ける必要がありますが。

どうやったら「応援」されるのか

問題は②の方です。

確かに、初日に「こことこことここが間違ってる!」と言ったら、誰も応援しないでしょう。ですが、周囲と調和を保つだけで「応援」してもらえる存在になれるのでしょうか?

「仲が良くなること」と「応援してもらえること」は別です。逆に、仲が良くなる程、独自の意見や態度を打ち出した時の反発が大きくなるかも知れません。

どうやったら「応援してもらえる存在になれるのか」、ここが転職でもM&Aでの買収統合作業(PMI:Post Merger Integration)でも、難しく、そして答えのないポイントです(パターン①に向いた転職ケースは後述)。

パターン②:Day1から大ナタを振るう

M&Aの世界ではこれが王道

M&Aの世界では「買収後100日プラン」なるもので日割・週割で細かくタスクやゴールが設定されるほどに、100日間を重要な期間と捉えています。

関係者間の「顔合わせ」や「懇親会」は開かれますが、「Day1から全速力で結果を出しに行く」というのが基本スタンスです。何故か?私の理解は以下の通りです。

買収後 or 合併後は究極に混沌とした状態。言い換えると、人も組織も非常に不安定な状態。ここに秩序が生まれ、安定を取り戻すまでの間にどれだけ適切にピースを組めるかが、そのM&Aの成否を決める。

失敗例の一つはみずほフィナンシャルグループでしょう。統合後に「しゃんしゃんPMI」をやったせいで、今でもシステムや社内文化に問題を孕んでいます。

どれだけの事件が起きようとも、必ず秩序はもたらされます。それが整っていようと歪んでいようとも。その過程は既にDay1から始まっており、「調和なんて悠長なことは言っていられない」というのがPMIであり、それは一つの「正しさ」を持っています。

転職ではどうか?

さて、これを転職に当てはめるといかがでしょうか。PMIと違う可能性があるのが、「先方(転職先)が不安定でない可能性がある」ということです。

PMI時は先方も当方もどちらも不安定。ですが、転職の場合はそうでないかも知れません。例えば普通の大企業に転職した場合にこれをやったら、99%上手くいかないでしょう。弾き出されて終わりです。

このやり方がうまく行くのは、以下のどちらかでしょう。

①かなり不安定 or 下降曲線上にあるスタートアップ・中小企業に転職する場合
②社長 or No.2レベルの経営層で転職する場合

仮に安定大企業が転職先だったとしても、CEOやCFOで行くなら話は違います。嫌われようがなんだろうが、明確なビジョンと戦略を示し、結果を出すことが求められますので、M&A的な100日間を過ごす必要があるかも知れません。

パターン③:溶け込むことを意識しつつ、Quick Resultを積み重ねる

ブラジルとウクライナの経験

私はブラジルとウクライナでM&Aを実行し、共に担当者として乗り込み、2年と3年、計5年駐在しました。ブラジルは日本人3人/現地人500人、ウクライナは日本人1人/400人。極めて孤独な戦いであり、転職よりもある種ハードルの高い出向でした。

多くのM&A書籍は「パターン②」を紹介しているので私もそのつもりでいましたが、出向先で仕事をし始めてすぐに、「それを適用したら、終わる」と確信しました。

詳細はこちらのNoteに書きましたが、社員が皆「恐れ」を抱いており、心が私の方に向いていないことは手に取るようにわかり、「先ずは受け入れてもらい、私の言うことが応援される体制にしなければダメだ」と判断しました。

具体的にやったことは2つ。

①リスペクトを持ち、相手の話を全て聞く。中断しない。まず受け入れる。
②小さくてもいいので、「Quick Synergy」を出し、「細田が来てよかった」と思って貰えるきっかけを多く作る

①は当たり前のこととして、特に②が大事です。ホームランは狙わない。ポテンヒットでも進塁打でもいいから、小さい貢献を積み重ねる。これをやると、口コミで「細田って奴がこんなことをやってくれたらしいぞ。悪い奴じゃないらしい。」といった評判が広がり、結果私を見る目が少しずつ変わってきました。

転職後に気をつけたこと

私は転職後、このパターン③をベースに行動してきました。

例えば会議中に違和感を感じたとしても、先ずは受け入れる。でも無言では終わらず、少ない口数でも一つ一つの会議に必ず貢献する

また、雑用だとしても自分が手を加えた方がいいと思ったことは、どんどん手を上げて、1点でも成果物のクオリティを上げる。転職直後から激務になることはないので、空き時間で色んな仕事を引き受ける。

それとは別に、出来るだけ多くの方と1 on 1でランチやお茶に行く。自分を知ってもらい、相手を知る。

その結果、少なからず多様な部署の方々に受け入れてもらい、お陰様でDay40くらいからは非常に広範なお仕事を任せてもらいつつ、忙しい日々を過ごしています。

「転職後100日プラン」の場合分け

③が王道?そんなことはありません。

『パターン③は①と②の良い所どりだから、どこでも上手くいくに決まってる』と思われたかも知れませんが、そんなことはありません。

改革のスピードは②よりは劣りますし、①に比べたらリスクがあります。ピンチヒッター的に呼ばれたケースなどは、②で行くべきでしょう。

パターン③は、今回の私のように「ある程度の規模感を持ったベンチャー」に行く場合には一つのやり方だと思っています。明日潰れる訳ではないし、数年以上の歴史があるので、そこに配慮しつつ結果を出していく。

もっと小さければ、そこへの配慮は少なくていいので、②比率を高めていいと思います。

もしくは、大企業だとしても、「所属先の組織がある程度Open & Flatな場合」は③がありだと思います。古風で旧態依然としている場合は、パターン①がいいでしょう。提案を練りに練って、人間的に皆から好かれた頃に、一気に纏めて提案するやり方がいいと思います。

最後に、ここまで述べてきたことを表に纏めてみました。これと本人のキャラクターを掛け算して、転職後の戦略を考えていただけたら。

終わりに

本当に怒涛の100日でした。ブラジルよりもウクライナよりも濃い100日を、渋谷で過ごさせてもらいました。

当初想定よりも遥かに広範な守備範囲、遥かに速く質の高いレスポンスを求められる日々は大変ですが、刺激的で楽しいです。

もし読者の方で転職に悩まれている方や、転職直後・直前の方がおられ、今回のNoteが役に立っていましたら幸いです。

これを読んでいるセルソースメンバーや自分の部のメンバーから「え?打ち解けてないですけど?」とか思われていないことを祈りつつ、筆を置きたいと思います。

来週も転職について書きます。では、また来週。

細田 薫


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