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#マフィア譚~昔そんなことがあったことを思い出した

 言うまでもなくマフィアとはイタリア語で、その語源はシチリアのかつての悲しい歴史にまでさかのぼるみたいですが、通常、「犯罪組織」を意味する言葉として使われています。
 他の使われ方としては、ウィキペディアによると「メンバーシップが限定的で排他的かつ強力な団結力を持つ組織」とあって、よく新聞記事などで「通貨マフィア」とか「金融マフィア」と呼ばれたり、また特定の出身地や出身校などのつながりでタイトにまとまった集団をXXマフィアなどと、あるときは畏怖の念をこめて、またあるときは揶揄する意味で呼んでいる場合もあると思います。
 ともかく大抵は「犯罪組織」を指す言葉であって、日本の場合はマフィアに該当するのは、「広域暴力団」とか「ヤクザ」になるのかと思いますが、日本のヤクザは「YAKUZA」として、海外ではそれなりにジャパニーズ・マフィアとして認知されているようです。
 一般の市民が、普段、普通に生活していれば、そのような「犯罪組織」と関わり合いを持つことはないのでしょうが、無関係でありつつも、日常の中で、予期せぬ遭遇をすることがあったりするかと思います。以下は過去にあった、身近なところで、そんな予期せぬ遭遇をした話です。

・学校の近く

 その事件は、当時私が通っていた広島市内の中学校の近くで起きました。 広島駅にわりと近い場所でした。ネットで調べてみると昭和60年11月、私は中学三年生で、高校受験を間近にひかえて皆そわそわし始めているころです。
 ちょうどその日、午前中の授業で確か3時間目あたりが始まる前、担任の先生が突然教室へ入ってきて曰く「たった今、警察から連絡が入りまして、学校の近くで発砲事件があったらしく、急遽、本日は休校します。途中寄り道しないようまっすぐ帰宅するように」とのこと。
 ともあれ、授業がなくたって帰れるんだから皆大喜びで、まっすぐ帰れと言われたところでいう事を聞くはずはないので、帰宅途中、悪友共と連れ立って事件現場とおぼしきところへ、さっそく行ってみた。
 事件現場の前の道路は、黄色の規制テープが張られて、大勢の警察関係者が現場検証の真っ最中で、遠目で見ても物々しい雰囲気でした。
 その日の夕方のニュースでは、喫茶店内で組の関係者二名が射殺され、広島市内に本拠を構える地元暴力団組織の内紛が背景だとか報じていました。
 事件があったその喫茶店の隣は、その当時書店があって、学校の帰り道とかよく頻繁に立ち寄っていたので、よもや身近なところでそのような事件が起きるとは思いもしませんでした。
 とはいえ思い返してみれば、その町も当時日教組の支部かなにかがあって、たまにその建物で大会みたいなのがも催されると、右翼の宣伝カーが何台もつらなって建物を取り囲んで、スピーカーでがなり立てて周囲が騒然とした光景が何度かありましたし、また同じ頃、その町の近所に、一時"その筋の人たち"が事務所開いたと思いきや、すぐに撤収したりすることがあって、恐らく警察がいろいろ圧力をかけたのだろうと思いますが、当時はまだ暴対法や組織犯罪処罰法とかの法律ができる前で、よく調べてみるとその年(昭和60年)の1月には、山口組四代目組長が射殺されたいわゆる山一抗争が勃発していたりで、そういう時代背景からすると、日本全国どこかしら似たような事件があった時代なのかもしれません。

・新幹線~その①

 私の実家は広島駅の近くで、よく新幹線ホームのアナウンスや発車アラーム音が聞こえてきます。広島の玄関口である広島駅は、当時のひかりが全て停まる駅で、在来線の山陽本線も三原、尾道方面の東側と岩国方面の西側の路線の分岐点で、呉方面へ行く呉線や県北に行く芸備線の発着駅でもありました。
 その事件は、広島駅の新幹線ホームで起きました。昭和63年7月、そう確か夏の夕方、自宅縁側の窓は網戸だけで、私はちょうどリビングでニュースを見ていたとき、突然「ダンッ!ダンッ!ダンッ!」と爆裂音が鳴り響いて驚いたものの、てっきり車のバックファイヤーか何かかと思って気に留めてはいなかったところ、しばらくしてから「ピーポーピーポー」というサイレンが聞こえてきて、それも何台も連なっているような感じで、そうこうするうちにテレビのニュースアナウンサーが「只今入ってきたニュースですが、広島駅の新幹線ホームでさきほど、発砲事件が発生、負傷者が出ている模様・・」と伝えて、思わず「えーっさっきの音は銃声だったんだ・・」とあらためて驚いたのと、銃声音も反響して意外と大きく響くもんだと変に関心した次第です。
 後々のニュースでは、これも地元組織内での主流派と反主流派の対立抗争が伏線となり、このような事態に至ったそうで、この発砲事件で組関係者一人と一般市民一人が負傷したそうです。それにしても、平和都市を標榜する広島の玄関口で、こんな事件が起きたのはまったくもって皮肉なものです。
 以前読んだ記事で、メキシコのギャングは、刺客を仕向けるときは、きまって夕方の六時前だそうです。それは標的を殺したあと、すぐにその後の夕方六時のニュースで報じられて、抗争相手なり敵に報せることができるからだそうです。そう思えばこの事件も発生後、すぐに夕方の全国ニュースで報じられたのですが・・ただそれを意図したのかどうかはわかりません・・。
 メキシコのギャング話ついでに、メキシコのタクシーの運転手は、ギャング同士の抗争が続いているとき、交差点では必ず前の車との間隔を一台分以上の余裕をもって停車させるそうです。メキシコのギャングは、標的が交差点に停車中に襲撃するケースが多い為で、間隔を空けるのは、もし事件が発生した際にはすぐに車をUターンさせて、その場から避難できるようにするためだそうです。
 何はさておき、はっきりしているのは、無関係の一般市民が、あちらの世界の角逐に巻き込まれる謂れはないということです。その後の、暴対法や組織犯罪取締法などがつくられて、警察の取締りが強化していったのは必然の成り行きだったと思います。

・新幹線~その②

 恐らく10年以上、もっと前だったと思いますが、東京行きの新幹線のぞみ号でのこと。私は帰省先の広島から、新横浜まで帰る途中、季節は8月のお盆の前あたりだった。その日、私たち家族はすぐ後ろがグリーン車の車両で、後部側の入り口ドアに近い座席に座っていました。
 列車が新神戸を出た後、ちょうど食べ終えた弁当箱とかを捨てようとデッキに出ました。すると、黒っぽいスーツに身を包んで、一目でその筋とわかる、鋭い眼光をした屈強そうな男4~5人がズラッとグリーン車入口付近立っていて、何やら物々しい雰囲気を漂わせていました。やたらあたりを警戒している様子は、その人たちはボディーガードで、新神戸から乗ってきて、そのグリーン車の中にいる人をガードしている感じでした。
 列車が次の停車駅である新大阪駅へ停車すると、またなんとホームにもボディーガードらしき集団がいて、乗降客を確認している様子が窓越しに見えました。デッキの方を見てみると、同じように先ほどのボディーガードの4~5人が乗ってくる客に鋭い視線を送って警戒していました。
 結局、列車が次の京都駅に着くと、ホームにまた一目でその筋っぽい人たちの一団が出迎えにきていて、グリーン車から降りたのであろう"VIP"とおぼしき人をサーッと取り囲みながら、ゆっくりと歩いて行ってしまいました。
 その"VIP"の人は、"業界"の専門雑誌とかの表紙によく出ていた人で、当然のことながら、車内の中から窓越しにみても、一般人とは違うオーラを放っていました。
 先ほど屈強なボディーガードがいて、物々しかったデッキも、もぬけの殻で、ウソのように静かになってました。
 神戸から京都に移動するのも車ではなく新幹線で、また何よりも一国の大統領並みの・・といえば大げさかもしれませんが、ともかく、厳重な警護体制には驚きました。

 あちらの世界を擁護する人たちの言い分の一つに「社会のどこかで、治安維持の機能を果たしている」というのがありました。
 一方で「役に立っている面はあるだろうが、それですんでいるのなら、警察も一斉取り締まりとかしなくてもいいわけで、という事は綺麗事ではすまない裏があるわけだ」という解説をした作家もいて、私もこの指摘が本質をついているように思います。
 昨今、暴対法や組織犯罪処罰法などの法律を強化して、警察が徹底的な取締りをおこなった結果、鳴りを潜めたこれまでの広域暴力団組織にかわって、「半ぐれ」とかチャイニーズマフィアが跋扈するようになったと言われています。
 いずれにせよ、時代が移り変わり、それらの世界で当事者間の世代交代が進んだとしても、冒頭で述べた「メンバーシップが限定的で排他的かつ強力な団結力を持つ組織」のような集団が、犯罪によって利潤を挙げることは無くならないように思います。警察の地道な取締りを期待したいです。

以上 
 

    


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