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坂口恭平 著『建設現場』

読みながら、わかろうとしなければわかる!ということに気がついた。

少し前の話になるが、10月21日に、青山ブックセンターで行われた坂口恭平さんのトークイベント「書かずにはいられない」に行ってきた。

定員は110名で、会場はほぼ満員だったと思う。

会場に着いて本を書い、席に着いてすこしページをめくってみたのだけれど、いきなり坂口さんの夢の中に入り込んだような書き出しだった。cakesの連載とも印象が似ている。

イベント当時坂口さんは鬱気味で、口も重く、結構弾き語りをはさんだり、本を読んでみたり、質問を受けたり、なんというかこの小説の空気そのもののような感じだった。

この小説は、ある意味超絶わかりにくいのだけれど、「理解しよう」という気持ちを一切捨てると、ゆるやかな流れの川でボートに乗っているように、自然とゴールに到達する、そんな感じだ。

登場人物とか設定とか時間とか場所がわからなくなっても一切前のページを振り返らないでただ進んでいくと、ああ、ただ移り変わっていく景色を眺めていればいいのだということに気づく。

そうしていると、移り変わっていく景色が象徴しているものがなんなのかというものが、頭で考えずとも飲み込めていく感じだ。

この流れていく風景が象徴しているのは、地球なのか世界なのか社会なのか日本なのか自分なのか、読む人にとって変わる気がするのだけれど、明るいものでないことは確かだ。

帯にもある文章をここに。

「だから、最後に聞きます。これからはじまることを、あなたは知っていたのですか。それならば、なぜそれを止めようとしなかったのですか。なぜ、あなたはそのまま放置し、労働を続けたのですか。それは自分で理解していたのですか。それともあなたは自分自身であることを見失っていたのですか。」

さらに、この小説に出てくる「労働」が象徴しているものは、自分にとってなんだろうと、自動的に考えさせられる不思議な時間を過ごした。

理路整然と並べられた論理を読むよりも、もっと自然に自分や自分の属する場所を振り返ることができて、改めて坂口恭平さんのすごさを感じた。

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