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ひじかたかた
2018年4月18日 19:47
列の先頭は、遠くてよく見えません。列の進みはやけに遅くて、カメのようにゆっくりと進んでいきます。 ピーターが列の最後尾から前の方をのぞくと、その顔触れは様々で、ずいぶんと個性的でした。人ばかりではなく、牛や馬、猫や犬、あっ、モグラが列を割り込んで怒られている。ちょうちょやとんぼ、コガネムシにカブトムシ、虫たちも律儀に何かの順番を待っていました。 ピーターは、まだ子どもです。たぶん年
2018年2月2日 19:44
「ピチャピチャピチャ」 黄色い長靴、赤い水玉模様の傘をさしながら、女の子は雨の音を口ずさんでいました。道路にはいくつも水たまりができています。女の子は、水に濡れるのも、汚れるのも気にせず、あえてジャブジャブと水たまりを通って歩いていました。しばらく水たまりと遊んでいると、向かいからお母さんと手をつないだ女の子が歩いてきて 「テテンテン、テテンテン」 と雨の音をマネしながら
2018年1月17日 18:14
「あっ、あぶない!」 しずくは、顔をそむけました。しかし、しばらくしても、何も起こりません。しずくは、おそるおそる再び夜空を見上げました。夜空は、平和そのもので、しんと静まり返っています。しずくの隣には、おじさんがいました。おじさんは、お母さんの弟です。「おじさん、ずっと空見てた?」 しずくは、聞きました。 「あぁ、見てたよ」 おじさんは、夜空から目をそ
2017年12月15日 18:22
キャンプに行く日が決まってから、裕翔は、ずっと有頂天だった。はやく、明日が来ないかと、ワクワクして気が気じゃなかった。のんきに空を渡っている太陽を急かしたいくらいだ。行く先は、静かな山奥にあるキャンプ場で、夜になると満点の星空が見えることで有名な場所だった。裕翔は、筋金入りの星好きだった。ただ見ているだけで、落ち着いた。幼稚園のころ、裕翔は、「星は夜が好きなんだ」と思っていた。夜に
2017年11月13日 18:27
スイスイと、流れる川を泳ぐ一匹のカエルがいました。この川は、いつも泳ぐ川です。もう長いあいだ、泳いでいるので、目を閉じても、どこになにがあるかは、はっきりとわかります。カエルは、平泳ぎをしたり、バタフライをしたり、時には腹を太陽に向け、死んだふりをして、遊んでいました。 泳ぐことにも飽きてくると、近くのキャベツ畑にいって、ひと眠りします。キャベツの葉と葉の間に入って、それを布団代わりにし