シェア
ひじかたかた
2019年8月29日 18:33
8月は眠かった。とにかく。小説を読む時間はいつも決まっていて、ベッドに入ってから目を閉じるまでだ。調子がいいときは、40ページくらい読むと、まぶたが重くなって、自然と眠りにはいれる。ぼくにとって、寝る前の読書は、ここ数年、睡眠導入剤のような役目を担っている。ただ8月は、5ページくらい読んだらもう眠くなって、文字が頭にはいってこなかった。先へ進まなかった。亀の歩みのような読書だった。エッ
2019年8月1日 19:07
日照時間が異常に短い、じめじめとした梅雨の気候と、ようやく出番とばかりに張り切ってでてきた夏本番の暑さ。7月前半の不足分を取り戻すかのように、ここ数日、陽の光がさんさんと降り注いでいる。しかし、太陽が全く見えないと、あんなにもうつうつとした気分になるとは。暑いのはそんなに得意ではないけど、今回ばかりはまぶしい太陽の光にうれしくなる。そんななか、今村夏子さんの芥川賞受賞のニュースは、
2019年6月27日 18:33
最近は、雨の日が多いので読書がはかどる。といっても基本的に出不精なので、雨だろうが晴れだろうが特に関係はないのだけど。ただ、雨の音をBGMにしながらする読書は、また違った趣があって、けっこう好きだ。ということで、6月に読んだ本を軽くまとめる。『あひる』は、なんだろう。ゾワゾワして、面白い。著者の冷静で、客観的な文章がとにかく好きだ。読んだあとは、きまって心の奥の方に「問い」を投げか
2019年5月23日 19:04
1、冬のUFO 夏の怪獣 クリハラタカシ1ページ目を読んだ瞬間、いきなり心を掴まれた。これはたまらなく好きな世界観だと。ひとつひとつのセリフのワードセンス。それぞれの物語に流れるなんともいえない緩やかな時間。空想と日常の絶妙なバランス。画面の鮮やかさ。効率的な世界から漏れてしまった、意味のない愛おしい世界がここにはある。これは忙しすぎる現代に向けた、一種の啓発書なのかもしれない。特に、ひろしとみど
2019年4月11日 18:56
1、モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 内田洋子最後のー頁を読み終え、本を読めることがどれだけ幸せなことか、本が自由に読める時代に生きているということがどれだけ恵まれたことか、その尊さを強く噛み締めた。いまは誰でも自由に本が読めて、さまざまな主張を本にして出版することが許されている。けど、それはあたりまえのことではなくて、手に取りやすいかたちと自由な内容の本が生まれたのは、たった500年ほ
2019年3月21日 18:45
1、夕べの雲 庄野潤三これほど日常を日常のまま、切り取った作品があっただろうか。今日あった一日の出来事を、家に帰ったら家族に話す。そんなどこの家庭にもありそうな瞬間の連続がこの小説の主題だ。読んでいて退屈だと感じる人もいるかもしれない。けれど、その平凡さにだんだんと病みつきになっていく。この小説を読んでいるときは、妙に平和な気分で、まわりの時間がスローリーに見えた。誤解を恐れずに書くと、劇的な人生
2019年2月21日 18:50
1、サザンウィンドウ・サザンドア 石山さやかマンガを久しぶりに読んだ。最近は、活字ばっかでマンガはかなりご無沙汰。この作品は、オムニバス形式で団地に住む人々の日常が描かれるのだけど、人と人の些細なやりとりが丁寧に切り取られていて、とてもいい。心にぽっと明かりを灯すようなあたたかさがある。ぼくは団地には住んだことはないけど、友だちが団地に住んでいて、外側から均等に配置されたベランダや窓を見ると、い
2019年1月10日 19:22
1、わたしのちいさな古本屋 田中美穂著者の田中さんは、仕事を辞めたその日に、古本屋になることを決め、物件探しも会社を辞めた足ですぐに始めている。その行動の迅速さたるや。とにかく売る本はある。しかし、資金はない。じゃあ、古本屋だと、わりと安易に決める。けど、人生には、こんな瞬間があるよなと思う。なにかに導かれるように物事が進んでいく瞬間が。後先も考えないで、勝手に体が動く瞬間が。最初は、わからない
2018年12月4日 19:25
1、生物から見た世界 ユクスキュル/クリサート動物は、人間のように多くの対象物を識別できるわけではない。が、生きていくうえで最低限かつ少数の対象物を把握できればいいので、とてもシンプルだ。たとえば、ゾウリムシは障害物とそうでないものという識別しかないので、なにかにぶつかったら、あとずさりし、脇へずれて、ふたたび前に進む。唯一、その行動をとらないのは、エサとなる腐敗菌のみ。腐敗菌にぶつかると、はじめ
2018年11月6日 19:01
1、夜市 恒川光太郎パラレルワールド的なストーリーには、ものすごい惹かれる。自分の知らない世界が、実はすぐ近くに存在している。なにかのきっかけで、そっちの世界に足を踏み入れる可能性がある・・・。というのは、とてもワクワクしてしまう。でも、客観的に見ているから面白いのであって、実際に自分の身に起こったら相当パニックになるだろう。だけども、いま生きている世界と別の世界が並行して存在しているのは、心をか
2018年10月9日 19:18
1、夢の叶え方を知っていますか? 森博嗣「夢」というのは、ひどく曖昧で漠然としている。「夢」を詳しく分解し、そのうえでどう行動をとればいいかを提案するのが本書である。印象的だったのが、その夢は時間的に長いスパンをもっているかという箇所。今の時代、「作家になりたい」という夢を叶えることは簡単(自分でものを書いて、名乗ればいい。自費出版もあるし、個人で電子書籍をだすなど)だが、「作家であり続ける」こと
2018年9月18日 18:48
1、バースデイ・ガール 村上春樹唐突に「願い事を叶えてあげる」と言われたら、なんと答えるだろう。ぱっと思いついたのは、本を無限に買えるカードとか(子どもっぽくてすいません)けど、ひとつとなるとなかなか決められない。人間の欲は無限だ。たとえひとつの願い事が叶えられたとしても、「ああ、やっぱりあれを叶えてもらえばよかった」とたぶん後悔してしまう。この本のあとがきのなかで、村上春樹は20歳の誕生日を覚え
2018年8月16日 19:20
1、ピンヒールははかない 佐久間裕美子自分的には、参考になることが多いエッセイだった。恐怖心や自信、幸せについてなど。特に印象に残ったのは、幸せは継続的な状態ではなくて、瞬間的なものかもという箇所。継続的な幸せとは幻想で、本当の幸せは、なにかいいことがあったとき、おいしいものを食べたとき、美しいものに感動したときなどに、瞬間的に湧き上がるもの。だから当然、ハッピーな状態には終わりが来る。けど、また
2018年7月13日 19:34
1、恋歌 朝井まかて悲しく、苦しい。一言でいうとそんな感じの物語。時代という、抗いようもない大きな力によって、人生が変わってしまうのは、なかなかしんどい。あとすこし生まれる時代がずれていたら、もうすこし平和だったのにとも思うけど、そしたらふたりは出会ってもなかったし、う~ん、難しい。結局、自分に課せられた運命を受け入れて、精一杯生きていくしかない。そんなありふれた答えしか導き出せないのが、なんとも