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42歳の大学教員が20代の理系研究者に伝えたいこと

現在、私は42歳の大学教員(准教授)で、生物系の研究室に所属し、生物学と情報学を教えている。自身のこれまでのnoteでも詳しく語ってきたが、特に今回、20代の理系研究者に伝えたいことを記したい。30代向けの話は、次のnoteで記載する予定である。

「20代」

体力、気力が充実しているのが20代である。頭の回転も人生で一番早い時期だろう。そして雑用がほとんどないので、研究に全集中できる。世界中の研究室のエンジンは20代の学生・ポスドクにあるといっても過言ではないだろう。以下に3つのポイントを述べる。

①まずは「たくさん実験をこなす」である。研究テーマに沿って、率先して実験を進めよう。ただし実験を進めるにもコツがある。それは「闇雲に実験をしてはいけない」ということである。一度、原著論文を書いてみるとわかるのだが、どのような実験がキーになるのか、どのようなデータを積み重ねていけば効率良く論文のデータになるのか、がわかるのだ。無駄な実験を積み重ねるのは時間がもったいない。まだ原著論文を書き上げたことがない人は、先生・先輩のアドバイスを聞き、さらには原著論文をたくさん読み込んで、データを積み重ねる流れを、どんどん自分の中に吸収していってもらいたい。失敗を恐れず、どんどんチャレンジしていこう。

②次に「同世代の人脈づくり」である。学会で研究発表する機会に恵まれたら、特に「同じ世代の他大学の学生」に積極的に話しかけて、友達をつくろう。面白い口頭発表・ポスター発表に出会ったら、必ず質問をして、発表後に発表者のもとに駆け込み、自己紹介をして仲良くなってしまおう。前もって、自分の名刺を作っておくのも良い。今は、専用の名刺用紙(プリンタに合わせればよい)さえ買えば、Web上での自作も簡単だ。また、学会の懇親会は面倒だと思いがちだが、せっかくのチャンスの場である。どんどん同世代の仲間を作っていこう。この仲間達は近い将来、大学教員、研究所職員、企業研究者になる。切磋琢磨する良きライバルでもあり、かつ自身が講演会を開催する立場になったときに、講演をお願いできる頼もしい仲間になる。

③最後に「研究資金獲得の練習」である。博士課程の学生・ポスドクは、学振(特別研究員)に必ず応募しよう。その際、先生・先輩から、これまで獲得実績のある学振の書類を見せてもらい、アドバイスをもらうことが重要である。学振に合格するためには、1報でも自身の原著論文があるのが望ましい(この数は分野によるかもしれない)。博士課程に進む予定の学生は、早いうちから研究室の先生に進学の意向を伝えておこう。そうしておけば、先生は将来を配慮した研究テーマの流れを作っておいてくれるものである。私の場合は、研究室配属直後の大学3年生のときに、先生に「将来、研究者になりたいので、博士課程まで進むつもりです」と伝えていた。とにかく、学振(特別研究員)が研究資金獲得の第一歩であることは間違いない。将来のポスト選びにも、有利に働く。

さて、最後に注意点がある。20代は体力、気力は十分だが、メンタル面で苦しくなるときが絶対にくる。実験がまったくうまくいかず、途方にくれてしまったり、先輩との関係がこじれてしまって、うまくコミュニケーションがとれなくなってしまうなどだ。

こういうときは先生と直接相談して、思い切って1週間くらい休暇をとり、家に引きこもってもかまわないと思う。何よりメンタル面の危機は、今後の研究人生、何度も訪れるときがくるだろう。その対処の練習だと思ってもらいたい。自身のメンタルを維持するのはとても大切なスキルである。メンタルがぼろぼろになっているときは、本(文字)すら読めないだろう。そんなときには、おすすめのYoutubeチャンネルがある。

それは「フェルミ漫画大学」である。

人気の動画から順番にみていってもいいし、自分が気になったタイトルの動画をみてみるのもいい。画面すら観なくてもよい仕様になっているので、目を閉じて音だけ聞くのでもかまわない。きっと役に立つはずだ。そして、元気になってきたら、尊敬する先生の本を読むのもメンタルの元気に繋がっていく。

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