薬と『悪の哲学』

(中島隆博『悪の哲学』を読みながら,
大切な友人たちが向精神薬を服用しており,
薬について気になっているので,
気になる箇所を引き,メモする)

「社会的に極めて劣悪な環境に置かれた人々に対して、道徳の薬が処方されたとしてみよう。
その人々は自らの怒りを抑制し、自己犠牲を払うようになるかもしれない。それは、劣悪な環境を作り出している側の人々や制度にとっては大変都合のよい事態である(強調は筆者)」。
(中島隆博 (2106-02-07T15:28:15). 悪の哲学 ──中国哲学の想像力 (Japanese Edition) (Kindle Locations 51-53). Kindle Edition. )

映画『ジョーカー』で描かれる薬を想起した.

処方される薬は,患者のためといいながら,
劣悪な環境を作り出している側の人々や制度にとって
大変都合のよい効果を発揮する.

ひとをモノ扱いすること,
社会の歯車になるということ
がどういうことか,少しわかった気がする.

もしも(と,言っておこう)
薬の処方が不必要な人にも薬を売ろうと考えている製薬会社があるとするならば,
それを「悪」と呼ばずになんと呼べばいいのか.

友人たちの思考力を奪う彼らを,恨まずにいられない.

続きを引いてみよう.

「しかし、それ[社会的に極めて劣悪な環境に置かれた人々に対しての道徳の薬の処方]は、
劣悪な環境それ自体を改善し、
よりましな社会を作ろうとする努力に対しては、
冷や水を浴びせかけるもの
だ。
正当な怒りが社会変革のきっかけになりうることは経験が教えるところである。
わたしたちは、個人に還元できない、
いわば社会的な悪があることを正面から見据え、
たとえ手間暇かかるにせよ、
その悪をできるだけ少なくするようにした方がよい
のではないだろうか(強調は筆者)」。
(中島隆博 (2106-02-07T15:28:15). 悪の哲学 ──中国哲学の想像力 (Japanese Edition) (Kindle Locations 53-57). Kindle Edition. )

向精神薬の作用の本質は,
「正当な怒り」を抑制させ,
「劣悪な環境を作り出している側の人々や制度」に
都合の悪い「社会変革のきっかけ」を奪うことにあるのか.

つまり,治安維持のため、他者に人間性を奪われているということか.

中島の言うように,
社会的な悪の存在を正面から見据え,
少なくするようにした方がよい.
薬による管理ではまずい。

薬の服用を止め,解放されたアーサーはジョーカーになった。

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