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レジの無人化が店舗の進化を促進するのか

レジメーカーの寺岡精工が壁掛け式のセルフレジを発売。
日経MJ6月13日
の記事
オンライン版が無いので要点は以下の通りです。

小売店の柱や壁にかけられる構造で売場スペースを広く取る
顧客がスキャンから決済まで全て行う
・人手不足解消
・売場スペースの確保
・非接触対応

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コロナ禍でセルフレジの需要拡大しているという。

コロナ以前でも小売業、飲食業の人手不足によりセルフレジやセルフオーダーシステムの需要が高まっていました。それに拍車が掛かった様です。

コロナの社会では人と人の接触を可能な限り避けるということからセルフレジのニーズが高まっています。

レジの進化が商売のあり方を進化させています。顧客にとっても店にとってもレジ会計の煩わしさを解消するのかが課題でした。

🔴 レジと小売業の歴史

小売業はレジの進化と共に成長してきました。直接の現金のやり取り掛け売り、帳簿や発注在庫管理から顧客台帳、スタンプカードに至るまでアナログだったものがシステム化されています。

システム化されていますが、原点はモノと現金の交換、商品と顧客管理は変わってはいません。

江戸時代以前から戸板商売や座売り商売でのが中心でした。戸板商売は文字通り家の戸の板やそのに変わる様なものに街中や路上店舗で商品を陳列した商いの方法。

座売りとはNHKの朝ドラの「あさが来た」の両替商や呉服屋などの商いの方法です。店員に要望を伝え対応してもらう方法です。商品は直接選ぶのではなく奥から出てきます。今でいうコンシェルジュの様な役割をしていたのかも知れません。

第二次世界大戦後に、アメリカからセルフサービス型のスーパーマーケットが日本に浸透しました。今のスーパーのモデルです。こちらもNHK朝ドラの「おしん」でセルフサービス型の店に周囲の反対にあいつつも業態転換して繁盛をしたストーリーがありました。

その後、コンビニ業態ができてPOS(販売時点情報管理)で本部とつなぎ、どの店で何時に何個、何が売れたかを販売した時点で情報収集ができる様になりました。これにより、死に筋商品や不良在庫を売場から排除し新商品、人気商品、定番商品、売れ筋商品を効果的に陳列販売することができる様になりました。

アナログのスタンプカードやポイントカード、会員証がデジタル化し顧客情報も管理できる様になったのです。顧客データを知ることで商品の品揃えだけでなく、商品開発にも活かすことが可能となります。

ポイントカードはTSUTAYAのポイントカードがローソンとエネオスとの共通化され、共通ポイントカードとして進化。複数企業での顧客の動向をマーケティングに活かされる様になりました。

そして令和に入り、小売業や飲食業の人件費が上がりはじめます。売上は横ばいか下がっているのに人件費が上がります。また、働き方改革が叫ばれサービス残業が当たり前だった業界にもメスが入ります。

これにより小売や飲食の各社はレジオペレーションの省力化を余儀なくされ、セミセルフレジやセルフレジの導入が進みました。

各業界の課題解決とレジの発展

システムの発展が会計や決済の進化とも言えます。

業界を小売業から広げて見てみると、鉄道に乗る際の切符の購入は窓口でしたし駅員さんが切符を切ります。券売機に代わり今では電子マネーが主流です。地方のローカル線に乗車するときに券売機で買うのが戸惑うくらいです。JRは特急券を購入する際に利用できるみどりの窓口をさらに削減するといいます。




ガソリンスタンドも対面が減りセルフ化が進みました。1994年の6万店をピークに2018年度に約3万店となりました。3割以上がセルフスタンドで地方の小規模のスタンドはフルサービスのところが多い様です。

ホテルのセルフ化も進んでいいます。ロボットが対応し完全に無人化している「変なホテル」を筆頭に、ビジネスホテルではチェックインチェックアウトがセミセルフ化が進んでいます。

コンビニやスーパーのレジもセルフレジが導入され、自らスキャンや決済することも日常になりました。

レジをセルフにすることで、店舗側のメリットとしては人件費の削減、従業員の動きを少なくすることがあげられます。顧客側としてはレジ待ちのストレスの削減が図れます。

🔴 セルフレジは店のサービスを顧客に転嫁しているだけ?


しかし、本来の店側のサービスを顧客に転嫁しているだけ。顧客の手間とストレスが増えるだけではないのか、という意見もあります。店舗側としては自分の都合を顧客に行ってもらうという意見にどう向き合うかが重要です。

🍎 アップルストアとアマゾンGOが解決策になるか

こうした議論にはアメリカ型の小売店にヒントがありそうです。

そのひとつがアップルストアです。世界に500店舗あるというアップルストアですが、コンセプトがそれまでの店舗の考え方と全くちがいます。アップルの製品の特徴はシンプルです。その思想を店舗にも導入しているといいます。

アップルストアで特徴的なのはレジカウンターがないということ、顧客がスタッフと対面でその場で会計ができる様になっています。

こちらも日経の記事から。

最も力を入れていたのが、同社の対面サポートカウンターの「ジーニアスバー」だ。「マーケットを生むということは、マーケットを教育すること」だと語っていたジョブズ氏にとって、製品のプロフェッショナルが顧客の疑問に何でも答える場を作ることは、店舗開発に欠かせない要素だったのだ。

これまでサポートスタッフと言えば日陰の存在だった。ここにスポットを当て、ジーニアスという全く新しい価値として定義し直した。アップルストアの各コーナーの中で唯一、専用のロゴを設けたのも、店舗内での地位の高さの表れだ。
(2012年4月26日 日本経済新聞)

Amazonはレジ無し店舗の「アマゾンGO」を立ち上げた。レジスタッフは無人というよりレジそのものが無く顧客は商品をそのまま持ち出す。決済はAmazon Goアプリで自動的に行います。コンビニ型だけでなくススーパーマーケット「AmazonGo Grocery」もシアトルでオープンしているそうです。



(Introducing Amazon Go and the world’s most advanced shopping technology)


アップルもアマゾンの共通点はIT業界が小売業に参入していること、コンセプトが「人手不足の解消」や「コスト削減」ではないこと。顧客体験をより重視しているというモデル。

日本のカイゼン型、人件費を減らしたい、省力化したいというモデルとは根本思想が違う様です。顧客視点をどうもつのか、買い物のストレスを無くし楽しさをどう提供するのか、それをシステムで実現できるか。

日本版レジ無し店舗も増えてきています。省力化やスピード化、スペースの有効活様に加え、その分充分な日本の文化である「おもてなし」を活かせるのかが日本版のセルフレジ化へのポイントになるでしょう。

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