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雑記コラム

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物理探査に関係が薄い雑多なコラムをまとめました。
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1秒前の月

いつものように車で大学に向かっていると、進行方向(西)の正面に明るい月が見えました。早朝なので白っぽい色をしていますが、満月の形がくっきりと見えます。 月は地球の衛星で、地球から約38万km離れたところにあります。光速は秒速30万kmですから、私たちが見ている月は”1秒前の過去の月”になります。 約45億年前、火星ほどの大きさの天体が地球に衝突し、地球の地殻の一部を分離させました。それらは地球の周回軌道に到達し、最終的には合体して月を形成しました。これがジャイアントインパ

科学に残るイスラム文化の痕跡

一見、科学とイスラム文化は関係ないように思われますが、実は密接な関係があります。と言うか、イスラム文化またはイスラムの科学知識なくしては、西洋の文化や科学は発展していなかったかもしれません。 再生や復活を意味するフランス語のルネサンスは、古代のギリシアやローマの文化を復興しようとする文化運動です。ルネサンスは、14世紀にイタリアで始まり、やがてヨーロッパ全土へと広まっていきました。この時、文化だけでなく、科学的な知識も再生・復活しました。 中世ヨーロッパでは、封建社会の矛

石炭 温暖化の元凶?

石炭は固体の化石燃料で、大昔の植物(おもに鱗木)が地下で、長い年月をかけて変化したものです。地中に埋まった植物は、泥炭→亜炭→褐炭→瀝青炭→無煙炭と熟成されていきます。通常使われる石炭は、ほぼ瀝青炭です。地質区分に石炭紀というのがありますが、古い時代の石炭はこの頃に繁茂していた植物が素になっています。石炭は燃料としてだけではなく、製鉄などの原材料(コークス)としても使われています。 私が所属している地球資源システム工学科は、最初は採鉱学科という名前でした。採鉱は鉱石を採掘す

"最先端"の研究 地下からのデータ送信

私の研究のメインは物理探査であり、地下資源に関する様々な探査法に関連した研究をしています。それに加えて、埋蔵文化財や古墳などの遺跡探査の研究もしています。また、物理探査の応用として不発弾探査の研究も行なっています。 これらの研究以外にも、『植物の根の可視化』や『坑井の掘削位置の検出』もしています。今日は『坑井の掘削位置の検出』に関する実験で、午後から唐津に出張していました。 水道管・ガス管などのライフラインは地下に埋設されていますし、最近では電線の地中化も進められています

車はセンサの集合体

タイトル画は、人間に取り付けたモーションセンサの例ですが、多くのセンサを取り付けると人間の3次元動作をデータとして入力することができます。 最新の車は、”動く”コンピュータそのものです。この車にも、多くのセンサが取り付けられて、車の動きや周辺の環境を監視しています。最近では当たり前になったカーナビですが、カーナビにはGPS衛星からの電波を受信するアンテナおよび受信機が内蔵されています。受信機で受信したGPS信号からは粗い位置情報が得られますが、車の移動中の方向や速度を決める

配列の添え字について

プログラミングでは、同じ性質の個々のデータを、ひとつの同じ名前で管理(格納)したい場合があります。そんな時に使われるのが、配列(行列)です。タイトル画の”フルーツ号”には、4つの貨車があり、それぞれの貨車には別々の果物が格納されます。この時に使われる”貨車の番号”が配列の添え字に相当します。 しかし、注意しないといけないのは”添え字の最初の数字”です。上の例では、添え字は0番から始まっています。0と1からなる二進数が基本のコンピュータでは、開始の添え字が0から始まるのは、自

"組み合わせ"が文明を進化させた?

現在のような機械文明は、偶然の産物らしい。蒸気機関の発明を端緒とした産業革命はイギリスから始まったのですが、これには次のような”偶然の連鎖”が関係しています。 イギリスは高緯度にあり、植物の生育には不向きです。そのため、森林が育つにはかなりの時間がかかります。イギリスではその昔、薪を煮炊きや暖房のために使っていましたが、森林を伐採し過ぎて山がハゲ山になってしまいました。そこで仕方なく、地下にある泥炭や石炭を燃やすようになりました。しかし、浅い所にある石炭を掘りつくすと、深い

新しい組み合わせ AとBのマリアージュ

食品には、一見合いそうもない2つを組み合わせたものが結構あります。あんパンは、それが異種の組み合わせであることを忘れるくらい、一体化した食べ物になっています。またイチゴ大福は、発表当初こそゲテモノ扱いでしたが、今や和菓子の定番になっています。甘いアンコとイチゴのほのかな酸味が絶妙なバランスをとっています。 スイーツではありませんが、カツカレーやカツサンドなども、カツとカレーライス、カツと食パンを組み合わせた食べ物です。フランス料理では、ワインと料理の相性が合うことをマリアー

科学の常識と非常識

それまで常識と思われていたことが覆ることは、科学の分野では結構起こります。人類は未熟で、”この世界”のことを全て把握できているわけではありません。例えば、宇宙は物質だけで構成されているのではなく、その大部分はダークマターやダークエネルギーで構成されています。このダーク○○については、まだわかっていません。また身近な地球でも、大陸が動くなって有り得ないと長い間考えられてきましたが、いまやプレートテクトニクスは常識で、地球上の大陸は長い時間をかけて離合・集散を繰り返します。 重

10日ぶりの大学

三連休(土日月)、三泊四日の東京出張(火水木金)、週末(土日)と9日間も大学に行っていません。今日は久しぶりの大学です。最近はすっかり秋めいて来て、通勤の行き帰りでの朝晩の気温も真夏のように高くはありません。ようやく、エアコンを使わなくても、丁度よい温度になってきました。 長く大学を留守にした時に最初にするのは、リアルな郵便物のチェックと、電子メールのチェックです。最近は”電子メール”の方がリアルな手紙(メール)より主流ですので、”電子”を削除した”メール”単体が電子メール

俺はまだ本気出してないだけ

”本気”とは、冗談ではない真剣な気持ちのことです。逆に、冗談ではないけれど、真剣ではないと本気ではないことになります。しかし、真剣さの度合いは人によって異なるので、本気度も個人差が大きい気がします。 自分では一生懸命やっていても、他人から見るとそうは思えない場合もあります。この場合、本人は本気でも周囲からは本気と思われないことが少なくありません。他人の本気度を測ることは、それほど難しいのです。 日本の諺に、『能ある鷹は爪隠す』というのがあります。これは、能力があっても他人

どのデータに着目するか? 見えないデータに着目!!

面白い動画を見ました。ショート動画でしたが、統計に関する逆説的な話でした。アメリカ軍が飛行機を改良をするため、敵から受けた飛行機の機体の損傷個所の統計を取りました。 第2次大戦中のヨーロッパ戦線で、アメリカ軍はある重要な対応に迫られていました。それは、ドイツ軍による地対空の機銃掃射からどのようにして爆撃機を守るか、ということです。そこでアメリカ軍は、戦場から無事に生還した爆撃機の弾痕分布をタイトル画のようにまとめました。 この上から見た被弾マップによると、主翼の両端(A)

物理探査学会参加(4) 3日目(最終日)

今日は学会の最終日。今日も一般講演はなく、物理探査の「防災への応用」や「土木分野への応用」についての話がありました。 なかなか興味深い話があったのですが、”技術者間のコミュニケーションの難しさ”が心に残りました。物理探査の技術者は、自分たちのことを”物探屋”と呼びます。また土木分野の技術者は、自分たちのことを”土木屋”と呼びます。さらに、地質関連の技術者は、自分たちのことを”地質屋”と呼びます。 この、物探屋さん・土木屋さん・地質屋さんたちの話す言葉は、英語・ドイツ語・フ

物理探査学会参加(3) 2日目

今日は学会二日目で、一般講演はありません。その代わりに、パネルディスカッションや物理探査学会のアウトリーチ活動についての特別講演がありました。アウトリーチ活動というのは、”物理探査学会はこんな社会貢献をしていますよ~”という活動のことです。 『物理探査』という言葉は、社会一般ではまだまだ聞き慣れない言葉で、物理探査がどんなことをするのか、一般の人はほとんど知りません。”物理探査”の周知/認知のためには、アウトリーチ活動は欠かせません。 午後からは75周年記念大会なので、こ