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ぶったん箸休め

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物理探査のことを略して、物探(ぶったん)と呼びます。ここでは、物探とチョッとだけ関係ある話題を集めました。智の箸休めです。楽しんで下さい。
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#エッセイ

人工知能と群知能

 人工知能AI(Artificial Intelligence)は、人間の脳細胞を模したニューラルネットワークを基礎にしていますが、それとは全く異なる方式の群知能SI(Swarm Intelligence)と呼ばれるものがあります。群知能とは、分権化し自己組織化されたシステムの集合的ふるまいの研究に基づいた一種の人工知能技術です。  SIシステムは、相互に接続されたニューロンではなく、独立した単純な個体群から構成され、各個体(エージェント)はローカルおよびグローバルな環境と

日本は世界3位の”地熱資源大国”

 日本はアメリカ、インドネシアに次いで世界第3位の地熱ポテンシャルを持ちますが、実際に開発した地熱発電量は世界10位です。日本は、技術が劣っているからでしょうか?。実はそんなことはありません。日本の地熱開発技術は、世界でも有数なのです。では、なぜ技術があるのに、こんなに順位が低いのでしょうか?。それには技術以外の様々な理由があります。  ネットで調べ物をしていたら、偶然に下記の”地熱開発に関する”記事を見つけました。2022年4月10日の『サンデーステーション』というテレ

『厄介者』が世界を救う!?

 ドローンは、人が搭乗しない無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle: UAV)のことを意味する広い概念ですが、我々がイメージするドローンは、ヘリコプターのような無人機です。ドローンは英語でdroneといい、元々は巣にいても働かないオスの蜂(=厄介者)を指す言葉です。ただし、ドローンにはもう一つ”(ハチなどの)ブンブンいう音”と言うのがあって、プロペラ音の騒音から名付けられたようです。  ドローが出現した当初は、プロペラが4つあるので、クアッドコプター(4

『一億円プロジェクト』始動!!

 昨年(令和3年)の10月から、地熱開発用の探査機器を開発するプロジェクトをスタートさせました。これは、国(経済産業省)の機構である(財)石油天然ガス・金属鉱物資源機構の受託研究で、令和3年度から5年度までの2年半のプロジェクトです。  令和3年度は昨年の10月開始で、研究帰還が6ヶ月しかないことから、予算は7000万円弱でしたが、令和4年度は継続課題の1年間のプロジェクトとなるので、予算は1億円強となりました。予算が1億円と言っても、このお金を自由に使えるわけではありま

まさか? エイプリルフールではありません!

 今朝、何気なくメールをチェックしていたら、1年前くらいに学術誌に掲載された論文が、"Top Cited Article"になったというメールが届いていました。今日は4月1日なので、エイプリルフールかと思って、メールの送信日時を確認したら、1日前の3月31日付けでした。  ”cited”というのは”引用された”の意味で、”article”は”論文”と言う意味です。つまり、私たちの論文が、2020年から2021年の間に多くの研究者の論文に”引用された”という賞なのです。研究者

年度末はいつも忙しい!

 どこの職場でもそうでしょうが、年度が切り替わる3月末から4月初旬にかけては、忙しくなります。私の場合、いつもはそれほどではないのですが、今年はビッグプロジェクトが採択されたこともあり、実験や報告書の作成に追われて、てんてこ舞いです。  本当はこんな記事を書いている余裕はないのですが、最近はブログ書きが習慣化したので、日記代わりに書いています。ビッグプロジェクトというのは、MT法(地磁気地電流法)という電磁探査法の測定機を作るというプロジェクトのことです。令和3年度は、最初

リアル『バットマン』を目指して

 バットマンは、アメリカン・コミックスに登場する架空のスーパーヒーローです。コミックの他にも、映画・ドラマ・アニメ作品などが作られています。しかし、私が目指しているのは”ヒーローのバットマン”ではありません。今回の記事で扱うバットマンは、アメコミのバットマンではなく、コウモリ男(bat-man)の意味で使っています。  『はじめの一歩 物理探査学入門』の『地中レーダ』の章で、コラムに書いていますが、音を使って周囲の様子を”視る”ことができる人がいます。ダニエル・キッシュさん

ミリしら物理探査#25 探査深度と分解能

 気付いてみれば、ここ最近は物理探査に関連した記事を書いていませんでした。そこで今回は、物理探査法を選択する場合の基本となる『探査深度』と『分解能』の説明をします。この話は、別の記事でも触れたかもしれませんが、重要なので繰り返し説明します。  まずは用語の意味からです。『探査深度』は可探深度とも呼ばれ、”どの深さまで探査が可能か”を示す指標です。英語では”penetration depth”と言います。地下に存在する天然資源や人工物を探査する場合、どの深さに存在するのかを予

アイデアを現実に

 思い付いたアイディアを、実際のモノ(ハードウェア/ソフトウェア)に結実させるためには、多くのハードルが立ちはだかります。私がこれまでに出願した特許は20件ほどありますが、そのうち最終的に取得した特許は半分もありません。また、その取得できた特許を利用した製品も、試作段階までは行っていますが、商品化には至っていません。  特別な原理や法則を使わなくても特許は成立しますし、既存の技術を組み合わせても”スゴイ発明”をすることは可能です。現在当たり前に使われているスマホの無線技術は

『はじめの一歩 物理探査学入門』のタイトルロゴについて

 拙著『はじめの一歩 物理探査学入門』の表紙の図は、私が考案・作成しました。この本は、文章の校正や印刷は出版元である『九州大学出版会』のお世話になりましたが、それ以外は全て自力で作りました。表紙のレイアウトも例外ではありません。白黒を基調にしたシンプルな図柄にしたかったので、グレイスケールのピクトグラムにすることにしました。ピクトグラム(pictgram)と言うのは、ある意味の概念を単純化したシンボルで表したものです。日常的によく見るピクトグラムは、下のような”非常口”のシン

No Geophysics, No Life.

 "No~, no life" の直訳の意味は、「~がなければ、人生はない」ですが、「~なくして、なんの人生かな」や「~無くして人生無し」などと訳します。”No music, no life”は、「音楽の無い人生なんて」と訳せますし、"No game, no life" なら「ゲームなくして、なんの人生だ」などと訳せます。この構文は、色々な応用が利くので多用されています。  私がこの構文を使うとすれば、”No geophysics, no life”です。直訳すれば、「地球

地磁気と地電流

 地磁気は、地球が持つ磁気や地球によって生じる磁場のことを指します。地球は、北極側にS極、南極側にN極がある一つの大きな磁石と考えられます。この強い地球の磁場は、大気や水が宇宙空間へ拡散するのを防ぎ、地球に降り注ぐ宇宙線や太陽からの紫外線を減らす役割を担っています。地磁気は、我々を含む地球の生命を守る役目も果たしています。  この地球による磁場は一定ではなく、さまざまな時間スケールで常に変動しています。そのなかでも、地磁気脈動と総称されている現象は、周期が0.2秒から100

物理探査で遭遇した動物

 昨日の記事では、伊都キャンパス内の生物多様性ゾーンで物理探査を実施した話を書きました。生物多様性ゾーンは、自然をそのまま残しているので、野生のイノシシやタヌキに遭遇することも少なくありません。伊都キャンパスは福岡市にありますから、山奥というわけではありませんが、それでも中心部に比べれば自然が多く残っています。  物理探査は、人里離れた山岳地域で行なうことも多く、そんな時には普段滅多にお目にかかれない野生動物に遭遇することも少なくありません。電気探査を行なう場合には、電線を

伊都キャンパスでMT法探査

 現在進行中のMT法プロジェクトの一環として、伊都キャンパス内でMT法の試験調査を実施しました。今回使ったのは、大学の研究費で購入したMT探査装置・V-8の新型モデルです。何故だか、このプロジェクトは計測機器などの備品が購入できないので、自腹(といっても研究費ですが)で、新しいMT探査機を買いました。1つ前のタイプの装置も持っているのですが、あまり使わないうちに古くなってしまいました。  今回は、新装置のお披露目&訓練を兼ねて、この装置の日本の総代理店である日鉄鉱コンサルタ