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映画・テレビ・音楽におけるアジア系のレプリゼンテーション、2018年のエンターテイメント業界を振り返る

ハリウッドにおける性別による給与格差やホワイトウォッシングなど、もう何十年にも渡って問題となってきたことが、トランプ大統領の爆誕と#MeTooムーブメントをキッカケに、いっきに雪崩のように人々を突き動かしたかもしれない。ダイバーシティとインクルージョン。米国は、そういうことに寛容な国だったと信じられてきたが、(薄々誰もが感じていたけど)実は全くそうではなかったことを、認めなくてはならなくなってしまった。誰も他人のせいにはできなくなって、自ら語り出した1年だったかもしれない。

Martin Luther King Jrの時代からBlack Lives Matterを経ての「Black Panther / ブラックパンサー」の大ヒット。長編アニメーションの「Coco / リメンバー・ミー」は特にポリティカルなメッセージは押し出してないにしても、メキシコ国境に壁を作ることを宣言した国で大ヒットした。「Incredibles2 / インクレディブル・ファミリー 」だって、女性の社会進出と家庭の中の男性にまつわるストーリーでもある。

そして今年がターニングポイントだったのは相対的に控えめなアジア人或いはアジア系が、”Asian representation”を主張するようになったこと。アジア系オールキャストの映画「Crazy Rich Asians / クレイジー・リッチ!」もそうだし、グーグル出身の監督が撮った映画「Searching / サーチ」はアジア系の家族にまつわる話だった(そもそもAneesh Chaganty監督もインド系)。新しいジェームスボンド映画を撮るのも、「闇の列車、光の旅」のCary Joji Fukunagaに決まって話題となった。前述の「Incredibles2 / インクレディブル・ファミリー 」と同時公開された「Bao」はアカデミー賞短編アニメーションノミネート、監督Domee Shiは中国系カナダ人。


ドラマならSandra Oh主演の「Killing Eve」がアジア系として初のエミー賞主演女優賞のノミネート、シーズン2に突入したABCのドラマ「The Good Doctor」は韓国ドラマ「굿 닥터」のリメイクで、続編の製作も決定したNetflixオリジナルドラマ「To All the Boys I’ve Loved Before / 好きだった君へのラブレター」の主演Lana Condorは、ベトナム系米国人だった。


「Crazy Rich Asians / クレイジー・リッチ!」や「Ocean's 8 / オーシャンズ8」にも主演したAwkwafinaは、人気番組「Saturday Night Live」にホスト役として出演。Lucy Liuに以来、アジア系女性としては二人目、実に18年ぶり。1975年から続いているこの番組でアジア系がホスト役で出演したのは5人目だった。彼女は番組オープニングのモノローグでLucy Liuへの感謝の思いを発していた。

Back in 2000, I came here to 30 Rock and waited outside when my idol Lucy Liu hosted SNL. I was a kid and I didn’t have a ticket so I knew I wasn’t getting in. I just wanted to be near the building. I remember how important that episode was for me… It totally changed what I thought was possible or an Asian-American woman. Standing here tonight is a dream I never thought would come true. Thank you Lucy for opening the door. I wasn’t able to make it into the building back then, but, 18 years later I’m hosting the show!


スポーツなら日本人史上初のグランドスラム優勝を成し遂げたNaomi Osakaも。ブーイングの中での優勝セレモニーと、彼女の言葉がスポーツ界を賑わせた。フィギュアスケートのMirai Nagasuはオリンピック史上3人目となる女子のトリプルアクセルの成功者に、韓国系のChloe Kimは女子スノーボード史上最年少となる17歳で平昌オリンピック金メダルを獲得した。


音楽ならRich BrianやJojiやBTSがビルボードて1位を獲得。解釈の仕方で話題となったChildish Gambinoの「This is America」のミュージックビデオの監督はHiro Murai、日本人だった。


メディアエンターテイメントの世界にこれほどアジア系或いはアジア人が注目された時代はなかった。2019年。アジア系のインクルージョンが進展して、次はアジア発の物語が、メインストリームに織り込まれる時代になってほしい。

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140文字の文章ばかり書いていると長い文章を書くのが実に億劫で、どうもまとめる力が衰えてきた気がしてなりません。日々のことはTwitterの方に書いてますので、よろしければ→@hideaki