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教室のアリ 第23話 「5月6日〜5月7日」①〈穏やかな日々は続かない…〉

 オレはアリだ。長年、教室の隅にいる。クラスは5年2組。

「元気で力持ち!よく食べ、カラダはまーんまる〜まるお!」
「クールで頭脳明晰!イケメン名探偵、ポンタ!」
「度胸満点、アクティブボーイの命知らず!コタロー!」
3匹揃って、コタポンまる!!』(決まった…かな?)
 大変で、いろいろあった1日が終わり、爆睡して起きて、オレたちはこんなことをしていた。それだけこの出会いは3匹にとって『よかったこと』だったんだ。みんなでスーパーマーケットへ行き、ゴミ置き場のエサを給食室に運び、食べ、音楽室や図工室を案内した。音楽室の絵のヘアスタイルにはまるおも大爆笑だった。この日も子どもたちは学校に来なかった。
「ポンタ、まるお、字は読める?」
「読めない…」とポンタは答えた。そりゃそうだ、つい最近まで草原にいたんだから。
「ひらがななら」まるおは答えた。そりゃそうだ、保育園にいたんだから。オレは考えた。2匹はもっと小さい子どもたちのクラスが良いのではないか?
「勉強する?簡単なことから」オレは2匹に聞いた。
「もちろん!」元気で揃った返事だった。あした子どもが来たら遠征だ。おそらく、2年生くらいがちょうどいいだろう。国語があればなお良いと思った。
「ダイキくんは大丈夫かな?」ポンタが言った。
「多分、近いうちにダイキくんのママ(コロッケが上手)が学校にくるよね?その時、オレたちも同席して(ただ、同じ教室にいるだけ)話を聞こう。で、作戦を考えよう」
「運動会はいつだっけ?」今度はまるおが聞いてきた。
「25日だよ。それまでは大きなボールをオレたちみたいに転がす練習や、棒を走って渡す練習、ダンスとかをグラウンドでやるんだ。見ているだけでも楽しいよ」オレの答えにまるおはうなずくとヒラヤマ先生の机に入って、うまい棒のカスを食べ始めた。だからまるくなってしまうんだ…と、オレは思ったけど口にはしなかった。その後、ポンタとまるおは仲良く散歩に出かけ、オレは誰もいないグラウンドを眺めた。

〈将来について〉
「『コタポンまる』か…悪くない」3匹いれば、エサも上手に集められる。学校の中だけでこの先も十分な生活ができるはずだ。でも、でもなんだよ。オレはどんなアリ生を歩むのか…いろいろ考えていたら、いつの間にか寝てしまった。

「ひっさしブリブリ、ブリブリう○こ!!」ダイキくんの大声で目が覚めた。まるおは初めて見るダイキくんにビックリしていた。
「あの大きい子のことをシュニンたちは話していたの?」オレはうなずいた。
「昨日はホームランを打ったんだ!」(この日の夕方、いろいろあるのに今は元気…)ダイキくんの言葉に、やっと普段通りだと一安心。よし、2年生に行ってみよう。さぁ、勉強だ!

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