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優勝/昇格の支度、降格の準備(前編)

INDEX
■ 優勝決定の舞台裏
■ 優勝/昇格の支度

 【メッセージ系/手数を惜しまず丁寧に】
 【物販系/キャッチコピーでブランディング】
 【お祝いもの系/大物量をキチンとさばく】
 【挨拶系/熱が冷める前にしっかりすます】
 【催事系/感謝の見せ所を意識する】
 【強化系/チーム編成は先を見越す】
(以下は後編に続く)
■逃げられない降格当日
■ 降格の準備
■経営トップとしての覚悟

■優勝決定の舞台裏

 このコラムを書いている段階で、JリーグのJ1では川崎フロンターレが21日(土)に行われたアウェイ大分戦に勝つか、負けても翌22日(日)に行われたガンバ大阪が引き分け以下なら、5試合を残して史上最速優勝が決まるシチュエーションとなっていた。しかし、フロンターレは敗戦しガンバが勝利したことで、優勝は25日(水)以降の試合に持ち越されることになった。

 いよいよJリーグではシーズン最終盤を迎え、クラブ個々での悲喜明暗が浮き彫りとなる時期が訪れた。ただ、私はここで優勝争いをしているチームのことやサッカーについて語ることを目的として、フロンターレのことを持ち出したわけではない。フロントが繰り広げる優勝の舞台裏について触れてみたいと考えたからだ。

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 「フロンターレのフロントは大変だろうなぁ…」結果を聞いてしみじみそう思っていた。優勝が決まれば、いつものシーズンとは異なる山のような仕事が待っている。その詳細は次の項に記すとして、もし、アウェイ大分で優勝が決まっていたら、TV用インタビュー会場の確保、番組別監督や選手選定とオンタイムでの引き回し、その他メディア取材会場や祝賀会場の確保、ご招待者選定等の段取り、タイムスケジュール決め、記念Tシャツ着せ込み等々、それはそれは目から火が出る忙しさである。

 それが遠く離れた大分の地で、勝とうが負けようが試合前までに準備を終わらせておかねばならない。それが今回の場合は空振りに終わったのだから、苦労は報われなかったわたけである。加えて翌日も今度は川崎某所で全く同じ準備をしていて、それも空振りに終わっている。経験者として文字通り心の底から「お察しします」としか言いようがない。会場使用や飲食のキャンセル料もばかにならないだろう。しかし、お祝い事だし賞金も入るわけで、喜びの桧舞台準備に文句は少なかろう。

 優勝、昇格、降格といった通常とは異なるシーズンの幕切れには、フロントも同様に通常とは異なる様々な仕事が生じる。その量は尋常ではなく、また粗相をすれば大変失礼になるばかりでなく、相手からお叱りを頂戴することにもなりかねない大事な仕事ばかりである。今回のコラムでは、まだ経験をされていないクラブフロントの方々へのご参考として、またこうしたシーズンエンドを共にするサポーターや支援者、メディアの方々へのご理解をいただくことを目的に、私の経験を踏まえながら、以下を記していきたい。

■ 優勝/昇格の支度

 確かに優勝や昇格の場合、通常外業務があるにせよ、基本楽しみながら出来るところが降格の時と大きく異なる。しかし、せっかくのお祝いごと、関係各所の方々が心から喜べる環境を整えることを心がけたいものだ。また、仕事は部署をまたがる内容が多く、ここは社長をトップとして機能別に進めて行くのが良いだろう。その内容は、大まかに言って「優勝会場運営」「メッセージ系」「物販系」「お祝いもの系」「挨拶系」「催事系」「強化系」に類別される。そのそれぞれについてまとめてみよう。

【メッセージ系/手数を惜しまず丁寧に】
先ず「優勝(昇格)会場運営」は前項で触れた通りなので割愛する。次の「メッセージ系」は、会場やスタジアムでの社長挨拶から始まり、決定後時間を置かずに発信するオフィシャルHP、Twitter等のSNS、そしてスポンサーや株主宛てのレターを通じた優勝報告メッセージ等々と多岐に亘る。それぞれの御礼文は事前に全て終わらせておかねばならない。御礼も通り一遍にならないよう、相手の心情を汲みながら相手毎に少しずつ変えた温かいタッチの文章としたいものだ。社長のサインは必ず手書きとしたい。こうした一連の準備に於ける注意点として、他の準備業務にも言えることだが、優勝(昇格)を意識してしまうので、決して現場に知られてはならい。

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【物販系/キャッチコピーでブランディング】
次の「物販系」も何を記念グッズとするのか事前に準備しておくことが大切だ。少々不謹慎な話になるが、優勝や昇格のようなワクワクする機会では、特にサポーターの皆さんは財布のひもを緩めてくれる。私の敬愛するエスパルスサポの皆さんは昇格の時など、大変ありがたいことに相当に買い込んでくれた。そこを踏まえながら定番のTシャツ、タオルマフラーに加えて記念集合写真とそのシーズン各試合のスコアやチーム全員の名前を記した盾やパネルをリリースしていけばいいだろう。また、デパートや商店街での記念セールがある場合、その内容をオフィシャルHPでご紹介する等のサービスをすると大変喜ばれるので参考にされてはどうか。最も留意すべきは優勝(昇格)の価値を上げるキャッチコピーだ。例えばマリノスが2003年両ステージを制覇し、翌年の1stステージも優勝というステージ3連覇をした際のキャッチは「Record Breaker (記録破り)」だった。2016年にエスパルスが一年でJ1復帰を果たした際には、他クラブでも同じキャッチを採用はしていたが、ここはやはり「待ってろJ1」だろうと。こうしたキャッチは後々そのシーズンを振り返る際の記憶に彩りを添える大事なメッセージとして有意義なツールになるので参考にしてみてはどうか。

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【お祝いもの系/大物量をキチンとさばく】
さて「お祝いもの系」はどうか。優勝(昇格)翌日から休日の有無にかかわらず、おびただしい数の祝花、祝電がクラブフロントに送られてくる。祝花はビジュアルを十分意識した置き場確保と、会社別重要度に応じた置き位置決めは総務、営業部の大事な仕事だ。また、祝電を含めた受領台帳を作成しておかないと返礼時の混乱のもととなってしまうので忘れてはいけない。返礼はレターなのか御品でいくのか、予め会社別に決めておかねばならない。私の経験として、最も大事なことは「返礼の迅速性」ということも参考にしていただければと思う。

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【挨拶系/熱が冷める前にしっかりすます】
怒涛の挨拶回り…優勝や昇格の際の挨拶回りは、余韻が冷めやらぬ前にしっかりすませておきたい。特にTV、新聞社は、先方の宣伝を兼ねてニュースとして取り上げてくれるので、事前によく日時調整と出席者について擦り合わせをしておくことが大事だ。また、スポンサーによっては社員総出でお出迎えやお見送り、集合記念写真を計画する会社もあるので、こちらも多めの選手人選や大旗を用意する等での対応が望ましい。そして頭に入れておくべき大事なこととして、この時期は来年度予算編成時期にあたることを踏まえ、嫌らしくならない程度でさりげなく「スポンサー増額」のお願いをしておこう。こうした良い話題での訪問を利用しない手はないだろう。

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【催事系/感謝の見せ所を意識する】
スポンサーやファン、サポーターをお招きして行うお祝いイベントは、少し時間をおいてでも丹念に企画して、後々記憶に残るようなものにしていきたいものだ。代表的な催事は、不特定多数の方々をお招きして行う「優勝報告会」だろう。この時ばかりは現場にも総動員してもらい、来場された方々に出来る限りの謝意を表したいものだ。ただの報告会とせず、出店やファンクラブ入会ブースを出したり、商談中のスポンサー候補法人さんをご招待したりと、喜びながらも当然営業を意識することは言うまでもない。

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私が個人的に素晴らしいと感じた催事は、「祝賀パレード」である。写真はF・マリノスが優勝した際に、みなとみらい地区で行ったパレードだが、お寒い中多くの方々にお運びいただき共に喜びを分かち合えただけでなく、ニュースソースとしても価値があるようで、殆どのTVニュースで取り上げていただいたと記憶している。オープンカー手配等、親会社にはだいぶ無理を言ったが、それだけの甲斐は十分あったと思う。

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【強化系/チーム編成は先を見越す】        
強化部の場合、優勝や昇格をいつまでも喜んではいられない。他部署は大袈裟に言えば楽しみながら準備実行出来るが、強化部の場合はそうはいかない。また、J1優勝と昇格では取り組む業務がかなり違ってくる。前者の場合はACL出場権を得たわけで、それに見合ったチーム編成を構築しなければならない。また後者の場合、上のカテゴリーで戦う上で必要な戦力を確保する作業が待っている。この際、補強は重要な手段になるので、自チームの戦力分析による補強ポイントの見極め、それに応じたスカウティング等の作業はシーズン中盤以降には既に始めていなければ間に合わないので、祝賀会に強化の人間の一部が不在となるケースも少なくない。

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また、強化費の見極めも大事で、これは社長の重要な先決事項となる。Jリーグの場合、昇格してカテゴリーが上がれば放映権料等のリーグ分配金が増える。またJ1優勝の場合、従来では理念強化配分金により大幅な増収の権利を得るのだが、今シーズンはコロナ禍により、その配分金を他のクラブ救済目的に充当するためなくなった。これは致し方ないだろう。その分経費として増えるACL遠征の補助金が増額されるのはありがたいことだ。興行面では、昇格すれば集客力のあるクラブも増えるので、入場料収入も増えるだろう。他にスポンサー営業や物販もやりやすくなるので一定額の増収は見込める。但し、賞金は単年としての増加なので、選手人件費に当て込んではいけない。報奨金や、チームバス購入、練習場のバージョンアップ等の使い切り案件か内部留保に回すのが常識としておこう。

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そして、それらを踏まえた上で強化費の提示を社長が行うわけだが、強化は優勝(昇格)のかなり前から動き出すので、数字の提示は社長としてある程度腹を括った上で行う覚悟が必要だ。大きく外すとそれは損益を悪化させ、責任問題にもなるのだから。社長が社長たる仕事をする、言い換えれば「社長権限で決める事、決めた事に社長として責任を持つ事」で、次年度強化費提示は、社長権限と責任の真骨頂を発揮する最たる場面に他ならない。

 さて、前編は弾むようなタッチで書き上げましたが、後編はお題の性質上かなり重いですよ。特に降格圏内にいるクラブトップの方にはご覧いただきたく、よろしくお願い致します。(後編へ続く)




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(株)スポーツBiz マネジメントの左伴繁雄です。 横浜マリノス、湘南ベルマーレ、清水エスパルスでの経験を活かしたスポーツビジネスコンサルタントです。現在は、プロバスケットボールのベルテックス静岡、二輪レースチームのS-Sports のサポートをしています。宜しくお願い致します。

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