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最大級の津波想定で説明会 石巻市 4会場で289人参加 「逃げる場所ない」

 県が最大級の津波での新たな浸水想定を公表したのを受け、石巻市は11、12日、市内を大きく4つの地区に分けて住民説明会を開いた。最悪の条件下での想定であり、浸水面積は東日本大震災時の1.16倍。4会場で計289人が参加し、避難の場所や方法を早急に示すよう求める声が相次いだ。市は地域防災計画や避難計画の見直しを進め、来年度に改めて地区ごとの説明会を催す。

 どの会場も説明内容は同じ。県の担当者が想定の概要、市側がそれを踏まえた対応を示し、それぞれ参加者からの質問に答えた。浸水想定は地震による地盤沈下や満潮、防潮堤の破壊という悪条件で計算し、令和元年末時点での復旧・復興事業も反映。「なんとしても命を守る」という理念を基本に、防潮堤などのハードだけに頼らず避難を軸としたソフト面の対策も組み合わせて最大級の津波に備える国の考え方が示された。

新想定への地域課題が指摘された(11日、湊小学校体育館)

 旧市内の具体の想定では、震災後の新市街地である新蛇田地区が浸水し、湊、渡波地区は高台を除いて軒並み被災。震災時と比較した浸水の深さは、津波の影響がなかった現在の蛇田公民館が1.89メートル、1メートル以下だった石巻駅前の市役所は2.64メートル、0.5メートルだった渡波北端の際は3―5メートルの予想となった。半島沿岸部は高台の防災集団移転団地は免れるものの、かさ上げ整備された観光拠点施設などは被災する。

 震災では交通渋滞により多くの人が車内で被災したことから、新浸水想定でも原則徒歩での避難を推奨。本年度、市民が歩いて行ける避難場所の確認と検討を行った上で地域防災計画や避難計画を見直し、来年度に公表する。同時にハザードマップを全戸配布し、同年度後半には各自主防災会などと連携した避難訓練を行うことにしている。

■地区説明求める声

 湊、渡波、稲井、牡鹿地区を対象に湊小学校体育館で11日午前にあった説明会には、73人が参加。渡波地区区長行政衛生連合会長の阿部和夫さん(74)は「際で3―5メートルとなると渡波地区で逃げる場所がない」と地形上の課題を指摘。「歩いて逃げるのも現実的でなく、3月の地震では稲井に抜ける避難道が渋滞で車が動かなかった。このままだと渡波は津波の犠牲で地獄絵になる。逃げる方法、場所を早急に検討してほしい」と地域の声を代弁した。

最悪条件での浸水想定を示した(12日、県石巻合同庁舎)

 これに対して出席した齋藤正美市長は「支所・公民館が避難所となるよう移転も考えていかないといけない。住民の声が生かされるようしっかりと取り組む」と話した。一方、被災して女川町から移転してきた男性は「復興の途中で教えてくれれば、再建の方法も変わったのに。今さらどうなんだ」と震災から11年後の公表に不満。県の担当者は「復興まちづくりの定まったものがなかった。公表が遅れたのは申し訳ない」などと釈明した。

 同日午後には河北総合支所で説明会があり、河北、北上、雄勝地区の住民ら54人が出席。会場から「各地の状況が違うので、それぞれ地区で説明してほしい」との求めがあり、市は「ハザードマップが完成後、各地に伺って説明したい」とした。

 12日の説明会は県石巻合同庁舎を会場とし、午前は釜、大街道、山下、住吉、中里、駅前北通り、門脇町地区、午後は蛇田地区などが対象。それぞれ88人と74人が集まった。避難場所の見直しを求める声が多く、「浸水する想定の小学校では、保護者への児童の引き渡しをするのか」という問いには市教育委員会と調査する旨の返答があった。【熊谷利勝】


災害弱者対応を指摘 市議会でも全員協議

 新たな浸水想定は9日、石巻市議会議員全員協議会でも示された。

 議員からは最悪条件の想定を公表した意義が問われ、県担当課は「命を守るため、最悪条件とした。そうでない条件の想定を作ることは可能だが、地震が起きた時にはどういう津波か、潮位がどうなのかは分からない。逃げる基準とするため、ここまで来るという所を示した」と説明。自力で避難できない人への対応も求められ、市は「行政だけでは無理があり、住民を巻き込みながら取り組みたい」とした。

 また、ハザードマップの作成や要配慮者利用施設の避難計画策定が義務化される津波災害警戒区域を指定するのかどうかが問われ、県は「沿岸15市町の意見を聞き、時間をかけて検討したい」と回答した。【熊谷利勝】





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