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震災の書 米国美術館に収蔵 石巻・千葉蒼玄さん制作 幅13㍍の大作「鎮魂と復活」

 東日本大震災を題材に、石巻市蛇田の書家千葉蒼玄さん(65)=書道芸術院理事=が書き上げた大作「3・11鎮魂と復活」が、西海岸最大級を誇る米国のロサンゼルス・カウンティ美術館に収蔵されたことが14日までに分かった。千葉さんは「震災から間もなく10年を迎える中、とても感慨深い」と話していた。【外処健一】

千葉蒼玄先生 (4)

千葉さんが手掛けた大作「鎮魂と復活」(北井画廊提供)

 千葉さんは震災の津波で気仙沼市の生家が全壊し、保管作品も失ったが、書道一本の不屈の精神まで奪われることはなかった。新聞から再生の力を感じ取った千葉さんは、石巻日日新聞社が発行した「6枚の壁新聞」など震災を報じた各紙の新聞記事を縦3.6メートル、横9メートルの紙に書き写した。

 作品は平成25年に東京都美術館で開かれた企画展で発表され、近付けば当時の状況を伝える新聞記事を読み取ることができ、離れて見れば文字のうねりが巨大な波を表現していることが分かる。30年に再び同館企画展で展示されたときは両翼が1.8メートル延び、13メートルの大作となった。

千葉蒼玄さん (2)

千葉蒼玄さん

 新型コロナウイルスの脅威が迫る今年2月には、作品が海を渡り米国ロサンゼルスで開かれたアートショーに出品。ここで千葉さんは縦3メートル、横2メートルの紙に禅語「〇△ロ」と揮ごうした。ショーの創始者は「石巻とロサンゼルスは太平洋を挟んでつながっている」と称賛し、美術館のコレクション担当者に推薦した。

 カウンティ美術館にはピカソ、ルノアールなど巨匠の作品が数多く並ぶ。江戸時代の画家伊藤若沖を中心とする日本画収集家のコレクションを収蔵する日本館もある。国内で千葉さんの作品を扱う北井画廊=東京都千代田区=の北井康郎さんは「書作品での収蔵は例がない」と話す。

 千葉さんは「震災の作品であり、日本に残したかったが、13㍍の作品を飾るスペースは難しい。海外で収蔵されて半永久的に作品が残ることになり、震災10年が近付く中で縁を感じ、感慨深い。何かの折に再び展示されることを願いたい」と語っていた。

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