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海底熟成で味まろやか 日本酒150本引き揚げ 万石浦湾で特産品づくり

 昨年12月に石巻市の万石浦湾に沈められた日本酒の海底熟成酒約150本が10日、引き揚げられた。全国的に初夏を思わせる晴天に恵まれ、湾内の作業も順調に進み、陸揚げの後すぐに洗浄し、倉庫に移した。近く試飲を経て、インターネットで資金を募るクラウドファンディングの返礼品として今月末に出荷される。

 石巻市穀町の老舗酒店・四釜商店の四釜壮俊社長と海洋調査ダイバーの福田介人さんが仕掛け、県漁協石巻湾支所の全面協力で始まった海底熟成酒プロジェクト。10日の湾は朝からなぎの状態で、最初に福田さんが潜って酒を沈めた場所を確認した。

海底から引き揚げられた酒瓶の入ったケース

 福田さんによると視界は良くないが、何度も潜っているとあって手慣れたもの。10分ほどで場所を確認した後は、金具付きのロープを酒を収納したビールケースに取り付け、漁船に引き揚げた。福田さんの計測では水深は約16メートル、水温は7度という。

 昨年12月12日に沈めて以来119日ぶりに引き揚げられた酒は、ビールケース8箱分約150本。残りの1箱は味の変化をみるため残された。岸壁に上がったケースには、ナマコ、ウニ、ヒトデなどが付着していた。「このままバーベキューができるな」と四釜社長。福田さんは「生物が付着するのは、ケースが漁礁の役割になっているということ」と環境になじんだ形跡になると説明した。

 1ケースに20本の地酒「日高見」の生しぼり4合瓶がロープでしっかり固定されていて、一本も割れたり、流されることはなかった。四釜社長は「破損もなく、まずは安心。(海底熟成酒は)かどが取れてまろやかなになると言われているので、どんな味になっているのか楽しみ。飲み手には酒の可能性を感じてほしい」と新たな特産品に期待した。

酒瓶を確認する四釜社長(左)

 湾内での一連の作業や酒の引き揚げに漁船を出すなど協力した湾支所の高橋文生運営委員長は「早く飲んでみたいな」と日焼けした顔をほころばせた。泥のついた酒瓶は、ていねいに洗浄され、四釜商店の保冷庫に保管された。

 今回のプロジェクトの資金は「Zenes(ゼネス)」のクラウドファンディングで募っており、海底熟成酒は参加者への返礼品として送られる。目標の100万円は突破したが、酒の本数にはまだ余裕があるという。締め切りは5月15日。つまみ付きや飲み比べセットなど1万円から2万5千円まで各種コースがあり、それぞれ500円が万石浦の環境保全に寄付される。【本庄雅之】





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