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縄文村 古代役人のベルト復元 革部分残存 全国でも例なし 

 東松島市の奥松島縄文村歴史資料館(菅原弘樹館長)は9日、史跡赤井官衙(かんが)遺跡群を構成する矢本横穴から出土した市指定文化財「革帯」の復元模造品を制作したと発表した。革帯は古代の役人が正装時に使用したベルト。矢本横穴からは、1本分の金具と一部革が残った状態で出土。革の残存は全国でも例がなく、これにより科学分析で革帯の詳細を把握。復元模造品の制作にたどり着いた。

 矢本横穴は、東北随一の豪族「丸子氏(のちの道嶋氏)」一族の墓。東日本大震災後の平成26年、治山工事に伴う横穴調査で、6体分の人骨とともに金具と一部革を含む革帯一式が見つかった。

 一式がまとまって出土した例は県内でも栗原市の鳥谷ヶ崎古墳群のみ。また、当時の革は土の中のバクテリアに分解されるのが通例で、残存が確認されるのは国内でも例がなく、現存する革帯は正倉院宝物の数例だけという。直刀や馬具などと一緒に副葬され、これらから出土品が7世紀後半から8世紀前半のものと推定した。

 革帯は朝廷から位階を受けた官人が儀式などで正装する際、腰につけるもの。「養老律令」の衣服令では、五位以上の貴族や官人は金銀装、六位以下の官人は銅に黒漆を塗ったものを付けることが定められている。

 出土品は、従7位に相当するものとみられるが、金具を覆う塗膜は顔料を含まない「生漆」だったことが判明。律令に示された規定と実態を知る上でも重要な資料となった。

 革帯の復元を進める中、当時の鋳造と革の縫製技術も明らかになった。縫製は残っていた革の一部を分析したところ、牛革が使われていた。それを二つ折り(厚さ4ミリ)にして、縫い目が見えないよう絹糸で縫製。金具も生漆を繰り返し焼付、黒漆のようにしていた。

 同館は分析したデータをもとに専門機関に依頼し、復元模造品を制作。現在開催中の企画展「史跡赤井官衙遺跡群矢本横穴~古代牡鹿をおさめた人々のお墓」で展示している。菅原館長(60)は「矢本横穴は被葬者が判明している墓。出土品をみて当時の技術などについて考える機会にしてほしい」と語っていた。【横井康彦】




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