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記録で残る街の記憶 浅井元義スケッチ展 被災修復作品も展示

 「浅井元義スケッチ展―石巻の風景―」が旧観慶丸商店=石巻市中央=、マルホンまきあーとテラス内の市博物館=同市開成=の2会場で行われている。展示のテーマは異なるが、震災前の街並みを中心に在りし日の風景がよみがえってくる。計43点中、30点が東日本大震災で被災し、国の文化財レスキューで修復された作品。旧観慶丸商店にはその過程を紹介するパネルが掲示されている。9月10日まで。

 洋画家、浅井さんは石巻高校卒業後、東北大学教育学部美術科に進学。卒業後は美術教師となり、平成7年に旧石巻女子高校(石巻好文館高校)を最後に現役を退いた。教員時代も製作も続け、退職後はその功績がたたえられて県教育文化功労章などを受賞。平成30年に80歳で死去した。

 2会場での合同開催は初めて。同店には中心市街地の風景23点が並び、同館では市街地に加え牡鹿・北上の風景20点が鑑賞できる。作品には説明文が添えられ、一部を除きスケッチされた現在の場所の写真も付されている。

壁一面に20点の作品が並ぶ(石巻市博物館)

 展示を企画した同館の伊藤匠学芸員(28)は「今はもう見られない風景も多い。スケッチから昔の石巻を知り、現在の街を歩いて風景を比較してほしい」と話していた。

 同館の前身である石巻文化センターで被災した作品は震災後、文化財レスキューの対象となった。同センターにあった浅井さんの作品90点も、県美術館での応急処置を経て、国立西洋美術館=東京都=で修復が施された。

 展示初日の15日、同店には石巻女子高美術部のOGを中心に構成された「アサイ美術部」のメンバーが来た。普段は浅井さんの作品を整理し、スケッチ旅行に出掛けては絵を描くことを楽しんでいる。

浅井さんの作品とその教え子「アサイ美術部」(旧観慶丸商店)

 作品を鑑賞し「男子校から石女に赴任になってから先生の作風は明るくなった」「新聞で『踏み切りのある風景』という連作を描いていたとき『締め切りのある風景だ…』とうなだれていたのを思い出す」と当時の思い出に花を咲かせていた。

 同部の和田佳子さん(60)は「先生から『時間をかければ良い絵が描けるわけじゃない。やめどきが大事』と助言された。不思議と普遍性のある言葉で今思い出してもハッとする」と振り返る。宮里紀恵さん(61)は「展示によって、経年変化や震災で街が大きく変わったことがよく分かる。記憶の中にしかない映像がこうやって記録として残っているのが感慨深い」と話していた。

 両会場ともに開催時間は午前9時―午後5時(入館受付は午後4時半まで)。旧観慶丸商店は火曜休館で観覧料無料。博物館は月曜休館で、常設展込みで一般300円、高校生200円、小・中学生100円。【泉野帆薫】





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