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Internet of Dogs の惑星へ:台湾の農村で犬の位置情報を考える

台湾の農村を歩くと、たくさんの犬に出会う。人間に対してフレンドリーな犬もいるが、敵対心の強い犬もいる。時には、十字路で四方を犬に取り囲まれることもある。まさしく…

H.O
4年前
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52赫兹我愛你 台湾85世代は今

フォルモサ(麗しい島)の異名を持つ台湾には絶景の自然がひろがる。ゆえに台湾映画には山紫水明の風景と、昔ながらの暮らしが描かれてきた。だが、大都市の暮らしはどうだ…

H.O
4年前
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延世大の野外劇場を吹き抜けるJeJuの風

東アジア諸国の映像コンテンツを視聴していると小さな発見がある。ふと見かけた短い映像には、学園祭のステージでアーティストと観客が一つになる光景が映し出されていた。…

H.O
4年前
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オルタナティブな「遠くの領主」

木村尚三郎氏の著作をヒントに、国家とは何かを問う。 国家のバーチャル化仮想通貨の登場をきっかけに、近代以降の国民国家の概念が希薄化するのではないか。そんな論点が…

H.O
4年前
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カール大帝の貨幣体系

中世ヨーロッパ世界における貨幣の体系を定義づけたのは、フランク王国のカール大帝であった。イタリア語で「リラ」、フランス語は「リーヴル」である。 カール大帝中世ヨ…

H.O
4年前
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クリプト都市ツークの煙突—ブロックチェーン村を開拓する人々

スイス中央地方の都市ツークはクリプトバレーを自称しており、ブロックチェーン関連のイベントが頻繁に行われている。そんなイベントに集う参加者たちの人間模様と、ツーク…

H.O
4年前
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マカオ地図の誤差を読む --- 海峡に浮かび上がる予測大橋

マカオと珠海の間には海峡が横たわり、マカオ半島の内港埠頭から越境航路として海を渡ることができる。マカオのコタイ島と中国の珠海の間には一本の橋が架かる。だが地図を…

H.O
5年前
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西灣河電車廠---香港トラムは孤を描く

香港島を走る二階建てのトラムは、二階建てのバスと並んで香港の風景を形作るのに欠かせない存在である。地下鉄やバスと競合する区間も多いが、どんな人たちが利用している…

H.O
5年前
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収銀車が走る......香港から硬幣は消えるか?

香港のコインは重く、厚く、かさばる。そんな香港コインを電子マネーに変える便利なサービスがある。それは、タンス預金を一掃し、キャッシュレスへの一歩を踏み出すための…

H.O
5年前
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フェリカとQRコードの国境はどこにある?(続)香港の大学で語る

FeliCa電子マネーが普及する香港で、QRコード決済の可能性を考察する。 FeliCa日本製のFeliCa技術による電子マネーであるオクトパスカードが普及している香港では、いま、…

H.O
5年前

台湾の寺院に見る貨幣の源泉~冥銭

台湾の道教寺院を訪れる参拝者は、長い線香を燻らせながら三度拝し、冥銭をお供えする。 地元の方の説明によれば、冥銭というのは、神さん(=ご先祖様)のために在世の人…

H.O
5年前
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Old Money & New Money;ジグザグに発展してきた貨幣の歴史

Photos by H.Okada in Shanghai ビットコインが登場して以来、貨幣とは何かを問う論稿が数多く世に出された。その中でも、多くの人々の目に触れたのが、イングランド銀行…

H.O
5年前

フェリカとQRコードの国境はどこにある?**深センで夕食を。

香港に住む日本人の知人が、こんな話を聞かせてくれた。時折、地下鉄に揺られて深センまで出かけるのだという。買い物や仕事に出かけるのではない。夕方、仕事を終えてから…

H.O
6年前
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Internet of Dogs の惑星へ:台湾の農村で犬の位置情報を考える

台湾の農村を歩くと、たくさんの犬に出会う。人間に対してフレンドリーな犬もいるが、敵対心の強い犬もいる。時には、十字路で四方を犬に取り囲まれることもある。まさしく四面楚歌である。さて、どうする? イヌの集会台湾の農村地帯を歩いていると、大勢の犬が集まって昼寝をしている姿を見かける。ある町では、まるでネコの集会を開くかのように、犬達が集まってのんびりとくつろいでいた。 集会の場所は、新しい橋が架けられたことで人通りが途絶えた、古い橋のたもとの広場であった。人が来ないので、犬広

52赫兹我愛你 台湾85世代は今

フォルモサ(麗しい島)の異名を持つ台湾には絶景の自然がひろがる。ゆえに台湾映画には山紫水明の風景と、昔ながらの暮らしが描かれてきた。だが、大都市の暮らしはどうだろう。対照的な2本の映画に、台湾の今と昔を見る。 奄美の声今をさかのぼる1999年ごろ、屋久島や甑島など九州の離島を訪ねて、滞在型エコツーリズムの研究をしているグループがあった。チームを率いるのは、ゴミ博士のあだ名を持つ環境経済学者であった。 ある日、ゴミ博士は奄美へ調査に出かけた。ふと立ち寄った店で、美しい唄声を

延世大の野外劇場を吹き抜けるJeJuの風

東アジア諸国の映像コンテンツを視聴していると小さな発見がある。ふと見かけた短い映像には、学園祭のステージでアーティストと観客が一つになる光景が映し出されていた。この一体感はどこからやってきたのかと興味が湧いて、映像の背景を探ってみることにした。 AKARAKA(アカラカ)その映像は、延世大学校の公式チャンネルにあった。 ヨンセイの5月の学園祭はAKARAKAという愛称で呼ばれ、野外劇場ではアーティストがコンサートを開く。 2017年のAKARAKAのゲストは、歌手のイ・

オルタナティブな「遠くの領主」

木村尚三郎氏の著作をヒントに、国家とは何かを問う。 国家のバーチャル化仮想通貨の登場をきっかけに、近代以降の国民国家の概念が希薄化するのではないか。そんな論点が語られている。 遠くの領主、遠くの領主この論点を考えるためのヒントとなりそうなのが、冒頭で紹介した木村尚三郎氏の文章の一節である。 封建社会の終焉は、土地からの自由をもたらしたが、万物から自由になったわけではない。近くの領主から、遠くの領主へと、守り神を替えてみたに過ぎないというのだ。 こうした緩やかな変化とい

カール大帝の貨幣体系

中世ヨーロッパ世界における貨幣の体系を定義づけたのは、フランク王国のカール大帝であった。イタリア語で「リラ」、フランス語は「リーヴル」である。 カール大帝中世ヨーロッパ世界において、貨幣制度の体系が具現化されたのは、フランク王国のカール大帝の時代であった。次のような貨幣体系が出来上がった。 リラ・リーヴル貨幣体系というのは聞き慣れない用語であるが、各国での呼称をみると、かつて慣れ親しんだ呼び名であることが思い出される。 各国における通貨の呼称は異なるが、西欧中世において

クリプト都市ツークの煙突—ブロックチェーン村を開拓する人々

スイス中央地方の都市ツークはクリプトバレーを自称しており、ブロックチェーン関連のイベントが頻繁に行われている。そんなイベントに集う参加者たちの人間模様と、ツークの研究街区の営みを観察する。 ツーク駅の西口を出ると、駅の目の前には住宅街が広がる。生垣の間を抜けていくと、学園都市のような建物が姿を現す。 ガラスを多用した明るい曲面壁の前には、白いパラソルが並べられている。モノトーンの無機質な建物群に、移動店舗の看板が色を添える。 常連のお客さんが、ここは美味しいよと勧めてく

マカオ地図の誤差を読む --- 海峡に浮かび上がる予測大橋

マカオと珠海の間には海峡が横たわり、マカオ半島の内港埠頭から越境航路として海を渡ることができる。マカオのコタイ島と中国の珠海の間には一本の橋が架かる。だが地図を見ると、既に何本もの橋が架かっている。 珠海を臨むマカオは南北11キロメートルほどの特別行政区である。北側のマカオ半島は大陸と地続きであり、南側の島部(タイパ・コタイ・コロアナ)との間は、南北に架かる3本の橋で結ばれる。 南側の島部は、タイパ島・コタイ埋立地・コロアナ島の3地区から成る。コタイ地区の埋め立てによって

西灣河電車廠---香港トラムは孤を描く

香港島を走る二階建てのトラムは、二階建てのバスと並んで香港の風景を形作るのに欠かせない存在である。地下鉄やバスと競合する区間も多いが、どんな人たちが利用しているのか。山道から西湾河車庫まで乗車してみる。 山道トラムは香港島の北西から中環を通って北東へとつながる。一本線の往復なら分かりやすいのだが、路線図を見ると支線もあって、やや複雑である。行き先を確かめずに飛び乗ると、思わぬ場所に着いてしまう。 北西に位置する「山道」停車場から、東向きの「ハッピーバレー」行きに乗車する。

収銀車が走る......香港から硬幣は消えるか?

香港のコインは重く、厚く、かさばる。そんな香港コインを電子マネーに変える便利なサービスがある。それは、タンス預金を一掃し、キャッシュレスへの一歩を踏み出すための現実的なアイデアであった。収集車ならぬ収銀車が団地の広場にやってきて、かさばるコインの山を飲み込む。別名を神沙車とも言う。 硬幣の退蔵紙幣を使って買い物をすると、お釣りの小銭を受け取って、硬貨が貯まっていく。カードと携帯アプリで生活するようになると、小銭入れの出番は減るが、貯まった硬貨はいつまでも減らない。 キャッ

フェリカとQRコードの国境はどこにある?(続)香港の大学で語る

FeliCa電子マネーが普及する香港で、QRコード決済の可能性を考察する。 FeliCa日本製のFeliCa技術による電子マネーであるオクトパスカードが普及している香港では、いま、お隣の深センからやってきたQRコード決済が導入されつつある。果たして、FeliCa電子マネーの利便性に慣れたユーザの目に、QRコード決済はどのように映っているのであろうか。 香港には国際的に評価の高い大学がいくつもあって、それぞれに特徴を有している。香港の大学に勤める知人から、さしあたって次のよ

台湾の寺院に見る貨幣の源泉~冥銭

台湾の道教寺院を訪れる参拝者は、長い線香を燻らせながら三度拝し、冥銭をお供えする。 地元の方の説明によれば、冥銭というのは、神さん(=ご先祖様)のために在世の人間が送金する手段なのだそうだ。冥銭の札束をいくつか購入し、ご本尊の前に積み上げてお供えし、三拝してお願いごとをする。お参りが終わると、本堂を出て少し歩いたところにある仏塔のような建物に案内される。竈をのぞくと火が焚かれている。 左手の塔が、いわば「送金」コーナーである。 参拝客は、さきほどお供えした冥銭の束を、火

Old Money & New Money;ジグザグに発展してきた貨幣の歴史

Photos by H.Okada in Shanghai ビットコインが登場して以来、貨幣とは何かを問う論稿が数多く世に出された。その中でも、多くの人々の目に触れたのが、イングランド銀行で開催された勉強会の資料である。 英国の中央銀行であるイングランド銀行は、2015年5月に開催された「イングランド銀行/中央銀行研究センター・チーフエコノミスト・ワークショップ」(BoE / CCBS Chief Economists’ Workshop)と題する勉強会において Old

フェリカとQRコードの国境はどこにある?**深センで夕食を。

香港に住む日本人の知人が、こんな話を聞かせてくれた。時折、地下鉄に揺られて深センまで出かけるのだという。買い物や仕事に出かけるのではない。夕方、仕事を終えてから、ふらりと晩御飯を食べるために深センへと向かうのである。香港市街地の北部にある九龍塘駅で乗り換えて、北辺にある羅湖駅まではそれほど遠くない。羅湖駅にはイミグレーションがあって、国境を越えられる。検査官に入境目的を聞かれると「ジャスト・フォー・ディナー」と答える。これだけで簡単に通してくれる。国境を越える知人の服装はとい