見出し画像

フェリカとQRコードの国境はどこにある?(続)香港の大学で語る

FeliCa電子マネーが普及する香港で、QRコード決済の可能性を考察する。

FeliCa

日本製のFeliCa技術による電子マネーであるオクトパスカードが普及している香港では、いま、お隣の深センからやってきたQRコード決済が導入されつつある。果たして、FeliCa電子マネーの利便性に慣れたユーザの目に、QRコード決済はどのように映っているのであろうか。

香港には国際的に評価の高い大学がいくつもあって、それぞれに特徴を有している。香港の大学に勤める知人から、さしあたって次のような観点でみると把握しやすいと教えてもらった。

香港には国際的に評価の高い大学がいくつもあって、それぞれに特徴を有している。香港の大学に勤める知人から、さしあたって次のような観点でみると把握しやすいと教えてもらった。

英語による教育が基本 ⇔ 中国語による教育が基本

大陸出身の学生が多い ⇔ 大陸出身の学生が少ない

この分類に従うならば、知人が所属する大学は、英語による教育を基本とし、大陸からの学生が比較的に多い方に分類されるらしい。国際的な評価はすこぶる高い。教授陣の国籍や経歴も多種多様である。この大学には、ビジネスモデルを提案する練習をするグループ演習のプログラムがある。その講義の一回に、ゲスト講師として呼んでもらったので、フェリカとQRコードの将来性について学生さんたちに聞いてみた。

Octopus Card

QRコードの浸透度

香港の地下鉄に乗って、ふと車内を見渡すと、壁も床もびっしりと、QRコード決済のプロモーションで埋め尽くされていることがある。だが、地下鉄で通学する大学生に聞いてみると、広告は見ているけれど、自分は香港人だから関係ないや、といったリアクションである。

それもそのはずである。地下鉄に乗るときにタッチしたのはFeliCa電子マネーのオクトパスカードであって、QRコードをかざして乗ったわけではないのだから。今、乗っている地下鉄では使えないというのに、QRコード決済のプロモーションと言われても、イメージが湧かないらしい。

まるでよその国のことのようで、自分には関係ないかな。そんな印象のようだ。

画像3
Old HK Tram

フェリカの利便性

この大学は大陸出身の学生も多いとあって、QRコード決済を利用したことのある学生さんもいた。すでに本国では現金がほぼ姿を消しており、日常のほとんどがQRコード決済に移行している。

それでも、香港ではQRコード決済は流行らないだろうと言う。香港の生活スピードではフェリカのほうが便利であり、スマホでアプリを立ち上げるQRコードは利便性ではフェリカに勝てないだろうと。

スピード感あふれる香港の生活では、圧倒的にオクトパスカードが便利だというのが、このクラスの意見の大勢であった。香港育ちの学生たちは、フェリカ・ネイティブの世代であり、小さい頃からずっとオクトパスカードを使い続けている。紙幣がなくなっても困らないが、オクトパスカードは手放せない。

なんで、そんなにQRコード決済のことが聞きたいの?

それ、観光客のためのものだよ。

そんな反応であった。

香港の深セン文化

学生さんの意見の多くは、QRコード決済は大陸のもので、香港ではニーズがないという読みだった。だが、教授陣の意見は少し違っていた。香港にも大陸のQRコードの文化が静かに浸透しているという。

香港郊外の公園には、黄色や緑色の自転車が並んでいて、シェアサイクルの文化が定着しつつある。そこには、まるで大陸の公園にやって来たかと思わせるような光景が広がる。

どうやら使い方は、アプリをダウンロードして、支払カードを登録して、自転車のQRコードを読み取って開錠するらしい。自転車のQRコードを読み取っているが、QRコード決済を使うわけではないようだ。それでも、QRコードを読み取る練習にはなるので、深センで暮らすための予行演習ぐらいの意味はありそうだ。

画像5
North Eastern HK

一国二通貨

今回お聞きした学生さんたちは、QRコード決済は遠い国の話であって、自分たちには関係がないという反応だった。だが、ミシガン学派の社会心理学者である教員らは、香港の経済が染まっていく様子を冷静に見つめていた。

変わりゆく香港と、変わらない風景。

フェリカの国としての香港の姿は、もうしばらく続きそうである。

画像6
New Territory

Photos by H.Okada in Hong Kong 2000-2018