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トピックス(小説・作品)

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素敵なクリエイターさんたちのノート(小説・作品)をまとめています。
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2023年2月の記事一覧

『永遠にひとつ』第8話 恋の悲しみ

「……ダフネ。違うんだ。注文したのは確かに月子だが、けして君を歓迎していなかったわけじゃない。君と暮らして、私の毎日がどんなに楽しくなったか。君も知っているだろう?」  遠矢はあわてて言い訳し、私を抱き寄せようと腕を差し伸べてきましたが、私は後ずさりしました。思えば、私が彼を拒絶する態度を取ったのは、これが初めてでした。  私から避けられて、遠矢は、呆然としていました。ああ、彼は、やっぱり私が彼を男の人として愛しているとは、全く思っていないんだ。ペットの犬や猫、子どものように

『永遠にひとつ』第7話 身代わりの人形

 奥入瀬へのスケッチ旅行から、二年の月日が経ちました。あれから、年に一度はどこかへ旅行しながら絵を描くのが、遠矢と私の年中行事になりました。彼の制作活動は、私が知る中では、もちろん今が一番活発でした。それどころか、画家生活の中で最高と言って良いレベルだったようです。スケッチ旅行から戻った彼は、精力的に多数の作品を描き始めました。評論家からは、 「生命力に溢れた作風に進化した」  そう褒められるようになりました。幾つかのコンクールで賞を獲り、絵の注文も増え、個展なども開けるよう

『永遠にひとつ』第6話 淡い恋心

「ダフネ。君は私にとって大切な家族だよ。でも、番ではなく、娘みたいなものだ。君はまだ子どもだからね」  遠矢は、ゆっくり優しく私に語り掛けます。けしてうそではないけれど、彼がこの話題に緊張していることが、かたい声から分かりました。 (遠矢が、私を恋の相手だと思っていないのも、私がまだ子どもなのも本当のことだ。でも、彼は、本当のことを言うと、私が気を悪くするんじゃないかって、二人暮らしの雰囲気が変わるんじゃないかって、心配してる)  内心、私は、遠矢から娘としか思われていな

『永遠にひとつ』第5話 嫉妬

 心の目。  絵を見る人に伝えたいこと。  もう少しくわしく教えてと聞こうと思った時、木の上から、鳥の歌声が聞こえました。 「あの声は、なあに?」 「番を呼んでいるんだろう。今の季節は、ひな鳥が産まれて、お父さんお母さんが二羽で力を合わせてひなを育てているはずだよ。弓美と冬樹さんが夫婦として輝を育てているようにね」 「どうして私には、お母さんがいないの?」 「ダフネ。前にも話したと思うが、君は、ラボで組み立てられたアンドロイドだからだよ。人間の赤ちゃんと違って、お母さんから

『永遠にひとつ』第4話 初めての旅行へ

 最初は、模写する絵を選ぶ時しか開くことのなかった画集を、自分から進んで眺めるようになりました。どうすれば、こんな色が出せるのだろう。どうしてこんな形に描いたのだろう。絵を描くことに対する人間の考えや気持ちは、とてもふくざつで、ややこしい。そこに、私はひきつけられました。  何枚か模写を描き上げた後、遠矢が言いました。 「そろそろ、模写でなく、自分の絵を描いてみようか。今日はお天気も良い。一緒に庭に出て、睡蓮を描いてみようよ」  私はうなずいて、いそいそと自分のお絵描きセッ

コロナ禍アメリカ紀行①

コロナ禍に訪れたアメリカ。ニューヨーク→コロラド→ユタ→ネバダ→カルフォルニアと東から西までの写真記録を。 先ずはニューヨーク。兄家族にお世話になり、マンハッタンの街並みをじっくり歩くことができた。 前に来たのは随分前。その時もずっと歩いていた気がするけど、全然見え方が違うな。

小説家の労働環境改善/①なにはともあれ窓ですよ

こんにちは、小説家の朱野です。 のっけからなんですけど、毎日寒いです。小説なんか書けたもんじゃない。でも指は動かしておいたほうがいいので、前からやるやる言ってる「小説家の労働環境改善」の話を書こうと思う。 この一年、休んでいる間に、労働環境を改善しようといろいろやってきた。時系列で書こうと思っていたのだけど、小説でもそれをやって、さらにnoteでもそれをやったら心が死ぬので、書きたいと思った順で書くことにする。途中まで無料、途中から有料で読んでいただけます。 小説家の労働

有料
300

既存システムの拡張をやるか、新規システム開発するか問題

こんにちは、まだ長編を書いてる朱野です。 12月には終わると思ってたけど終わらず、2月には終わると思ってたんだけど、それも終わらず、やばいなと思いはじめている。だが、焦ったところで終わらないので着々とやっていくしかない。 以前、こんな記事を書いた。 この記事のなかで私は、小説の内容によって工数が変わること、の工数をある程度見積もれるようになっておかなければならないこと、などを書いている。そして、この記事を書き終わってから、新たに考えたこともある。 工数を見積もれるのは「

春の涙とホットコーヒー

コーヒーの香りは穏やかで、外の空気は甘いのに、私の気分は苦かった。 適応能力だけはあった若き頃の私はそれなりに反抗心を燃やしながらも、この窮屈な社会には溶け込む事ができた。 それでも30歳を迎える頃にはあらゆることに疲れ切ってしまっていた。知らないうちに自分自身も見失ってしまい体調を壊してしまったこともある。 そんなことだって私にとってはもう遠い昔のことである。過去の自分はいつも外国の旅で捨ててきたつもりだった。いや、だから私は外国に旅に行っていた。旅先には過去の感情を全

読書感想『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』

「愛」の証明って難しい。 ⁡ あなたを愛しているという事実を、明らかにすること。 そんなことできるんだろうか。 ⁡ 「愛してる」って伝えても、嘘なんていくらでもつけるって反証できる。相手を抱きしめようとも、物理的に本当に思ってなくてもできる。 ⁡ いつも頭の中に存在する、ひねくれの悪魔が口を出してきます。 ⁡ そしてこの『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』は僕の頭では到底不可能な愛の証明に挑んだ作品です。 ⁡ 舞台は人口1000人ほどの山に囲まれた集落、昴台。 ⁡ 財政を

今の話

住野よるです~。 もう二月も最終日、気づけば「恋とそれとあと全部」の発売日まで過ぎてしまっておりました😵 ツイッターの方では言ってもらったんですが、小説新潮という雑誌の三月号で「滅亡型サボタージュ」っていう短編を発表もしました。(これはいつか本になると思うのですがいつかは不明ですん) そんなことも告知せずに何してたかというと新しい仕事机を見に行ったりしていました🤗 「恋とそれとあと全部」を早速ご購入くださった方、まだだけど興味を持ってくださってる方、心からありがとうご

『永遠にひとつ』第3話 絵を描くアンドロイド

 ある日アトリエで、ふと思い付いたように遠矢は言い出しました。 「なぁ、ダフネ。君も描いてみないか?」 「えっ? 遠矢、私は絵なんて描いたことないよ。ラボでも教わっていないし」 「絵を描くのに理屈なんて必要ないさ。描きたいように描けば良いんだ」  遠矢は、うれしそうにいそいそとしたくを始めています。自分の画架のとなりに、もう一台小さめのイーゼルを立て、スケッチブックをとめました。 「油彩は難しいだろうから、最初は水彩にしような。服が汚れるといけないから、私のスモックを着ると

【大事なお知らせ】「HSPで思考と感性のセルフアレンジ」をリニューアルします

【本日は全文無料記事であり、マガジンについて、今後の展開をお知らせいたします】 みなさん、こんにちは。禧螺です。 今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。 本日は、この題名にあります通り、大事なお知らせとして、今後の「HSPで思考と感性のセルフアレンジ」マガジンについて、お話しさせていただきます。 💟 早速、結論から申し上げます。 リニューアル内容について、現段階において、具体的に申し上げることはできないのですが、 ・今まで”書いてこなかった”こと

YouTubeショートの話。

最近YouTubeを観る時、ショートばかり観ている。 前まで20分、30分、長いと1時間ほどあったと思う動画を喜びながら観てたのに、今はそんな好きだったYouTuberさんの動画さえショートしか観なくなっていたりする。 別に時間がないとかでもない気がするし。 なんだろう? 観やすいんだろうね。 サクサク観れるから良いのかな? 情報も一瞬で見れるから? やっぱり時間がないのかも…。 最近わたしがハマってるのはこの方たちのショート。 ゆみさん(ゆみたん)とけんご