マガジンのカバー画像

トピックス(小説・作品)

8,442
素敵なクリエイターさんたちのノート(小説・作品)をまとめています。
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

パステルカラーの恋 6

1話から読む 5話に戻る  有沢飯店でわたしが倒れてしまったのは睡眠不足と暑さのせいで目眩を引き起こした事が原因だと思う。ワンピースのベルトを少しきつめに締めていたのもあまり良くなかったみたいだ。あやうく救急車を呼ばれ搬送されてしまうところをすんでの所で堪えた。咄嗟に病院送りを拒否してしまった理由は、心と体の性の不一致を第三者に暴かれてしまうのを怖れたからかも知れない。事態を大袈裟にしたくないという心理が働き、周囲の人達に迷惑をかけた。お恥ずかしい限りだ。有沢飯店の方

パステルカラーの恋 5

1話から読む 4話に戻る  朝、目覚めると美和からメールが届いていた。中身を開いてその文言にドキリとした。ジュリアが私とのツーショット写真を撮った時、まさかその先の事まで頭が回らなかった。たかが記念写真の一枚のつもり、その時のノリではしゃいでしまった。  仕事で急遽、東京に出張した事、ツイッターでそれを呟いてジュリアから食事の誘いを受けて待ち合わせをした。それらを美和に言ってなかったのは何も隠しだてしようとした訳ではない。仕事の話はあまりこれまでして来なかったし、ジュ

パステルカラーの恋 4

1話から読む 3話に戻る  電車のドアが閉まる瞬間、わたしは思わず「さくら!」と叫んでいた。車内にチラホラと他の乗客がいたにも関わらずに。さくらは動き始めた電車を追い掛けホームの端まで走って来たが、行方を遮られて立ち止まった。次第に小さくなってしまうさくらの姿を見詰めてわたしは涙が頬を伝わるのを感じていた。  今のわたしはさくらを中心に世界が回っている。朝起きてはさくらを想い、仕事をしていても、ご飯を食べても、街を歩く時、テレビを観て、部屋で一人音楽を聴いていても、常に心

パステルカラーの恋 3

1話から読む 2話に戻る  二度目のデートはK駅での待ち合わせになった、この場所は丁度私の家と美和の街との中間地点にあり、私は車、美和は電車でやって来る。どちらか一方に負担を掛けてしまう交際はお互いにとってあまり良くないのではないか、という判断である。もちろんそれはこれを基本にという事で、たまには私が美和の街に出向く事もあるだろうし、逆に美和が私の街に来るというケースもある。あるいは別の場所にしようかと、そんな場合もある。月に一度は会おうという事が当面の二人の約束事だ。ど

パステルカラーの恋 2

「パス恋」①↓ https://note.com/sakiueno/n/nc6ce0c52371d  わたしがそもそも自分自身の心に違和感を覚えたのは小学校へ入学した当初に遡る。それまで仲良く一緒に遊んでいたお隣のミコちゃんや近所のユウコちゃん達は小学校に上がると可愛いお揃いのピンクのランドセルを背負った。髪にはリボンの飾りまで着けていて、いいなあと思った。わたしはと言えば黒のランドセル、髪は短く耳上と後頭部を刈り上げられ、前髪は眉の上2cmの辺りで真っ直ぐ揃えたお坊っちゃ

パステルカラーの恋 1

あらすじ SNSを通じて知り合ったさくらと美和。さくらは普通の男性。美和は女性装をして暮らすトランスジェンダー。二人はやり取りを通して親しくなって行く。やがて二人は実際に会う約束を交わし待ち合わせをする。それから二人の恋愛が始まる。 最初はぎこちないながらも二人はお互いのことを気遣い、愛情を深めて行く。東京で行われたイベントに参加したり、美和の実家をさくらが訪れたりする。ある日さくらのアパートで料理をして幸せな時間を過ごした帰り。さくらの運転する車が事故に遭い。さくらは重症、

よく考えればいらなかったけど、何かのご縁ということで。

 人のことを言う資格なんてなかった。  祖母が「店員さんがいい人だから」という理由で不必要なものばかり契約してくる。やっとらくらくフォンを使えるようになったばっかりなのにアイパッドまで契約してきて、結局放置している。  「いや、すごい親切だったよ」という祖母に「みんな契約とるために必死なんだし仕事なんだから優しいよ」とみんな口をそろえて言うが、押しに弱いのか、店員さんと仲よくなれ|生来の明るい性格のせいなのか、なんでも契約してくる。  でも私は人のこと言えなくて、言う資格

自分を好きになる方法

というタイトルの、本谷有希子による小説があったなとこれを書いていてふと思う。本谷有希子の小説を最後に読んだのはいつだろう。『静かに、ねえ、静かに』のあと、新刊って出たんだっけ。 読んでも読んでも、全てを覚えていることはできない。それがたまに、私を少しだけ悲しませる。makes me sad. 年末に、自分の持ち物と部屋を整理した。 従妹たちに譲る服を選別し、あとは衣装ケースをひっくり返してゴミ袋二つ分の服を捨てた。中学生から着ていた服がケースの奥に紛れ込んでいたり、クローゼ

手放した灰色の世界は、本当はいつだって色づいていた。

今日こそ、彼にちゃんと別れを告げる。 何度心の中で呟いたかわからないこの言葉を、もう一度心の中で唱え、エスカレーターを足早に降りていく。 彼の新生活がはじまる前に、わたしはこの4年間の2人の関係を、今度こそきちんと終わらせるんだ、と決めていた。 決して嫌いになったわけじゃない。 愛情も敬意も、変わらずある。 だけどわたしたちの目の前には、「2度目の遠距離」という、大きな壁が立ちはだかろうとしていた。 そして、ここ数ヶ月間のわたしには、その壁を「彼ともう一度一緒に乗り

ちょっとした振り返り。考えを練りすぎるより動き出したい

1月31日。もう1月が今日で最終日だなんて、信じられる? 今年に入ってもう1ヶ月が経ってしまうなんて、どのように月日の流れを感じたら良いのだろう。 振り返ってみると瞬く間に時が過ぎていたことに気が付く。 行動に移すときさすが「風の時代」。 なんて、流行りに乗っかるみたいで使うつもりはなかった言葉だけど、そうとしか説明のつかない世の中の流れや動きを肌で感じる。 わたし自身のことを考えても、今年に入ってからファッションコンサルティングをスタートしたし、それとは別で動き出したい

車線変更で人生変更

あ やっぱりこっちに行きたい そんな風に思うことがあったなら 迷わずハンドルを切って 車線変更していこう 本当に大切なものに気付けたら 進むのは怖くなくなると思うから 見つけた 今まで見えていなかった未知に 両手を上げて 前進していこう こんにちは。 家で一人ぐるぐると考えていても何も閃かないわ!という時は、 ぜひぜひお外へ散歩してみてください。 物理的に止まっていると思考も止まりやすいです。 私は、自転車に乗っていると、その前までぐるぐるしていたものが急にどうでも

つながりってなんだろう・・・。

みなさん、こんにちは。綺羅です。 今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。 このご時世では、人と直接関わることは難しくなってしまいました。 それでもnoteを中心としたSNSで、友人とお互いに「元気にやってる?」と声をかけ合ったり、フォロワーさんと「今日もよろしくね♪」という、何気ない挨拶のやりとりでも、こころが温まります。 こんな時期だからこそ、そうした「ちょっとした気持ちの交換」も何か響くものがあるのかもしれません。 今日、予定では、創作活動を載せる

魔女のランタン

そのランタンは消えないランタン。 長く長く点いているのに、いちども燃料を変えたことがない。 灯りを落とすこともせずに、ただただ夜道を照らし続ける。 誰かの帰りを照らし続ける。 強い風が吹いても、冷たい雨が吹き荒んでも、その灯りが消えることはない。 誰かが言った、 魔女の流した涙で出来てる。 強い祈りで光ってる。 誰かが言った、 魔女が作った呪いのランタン。 人の命を奪って光る。 誰もが言った。 魔女のおかげで夜道も明るい。 みんながみんな、その灯りを頼りに暗い夜道でも

148 星の下、風のなか

新年早々、仕事に追われてしまいました。 一瞬で暗くなる一日。走るように過ぎていく日々。 家に帰っても、くたくたな状態のまま仕事の調べものをしたり、情報収集をしたり。 今日はお休みだから午前中だけ、と思っても、気がついたら夕方…。 そんな風に過ごしていたら、ある日、仕事中に激しい頭痛に襲われました。 肩や首のこりからくる頭痛だとわかったのですが、鎮痛剤をのむ気にもなれず…。 結局、その日は残業をせずに帰ることにしました。 電車の中で鞄を開けようとしましたが、手が動きませんでし