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9. 言葉はみんな生きている

皆さんが、最初に英語に出会ったのはいつ、どこでのことですか?

外国への憧れはあったものの、海外へ初めて飛び出したのは20歳の時という私は、中学校の授業で、初めて英語に出会いました。
勿論、その前に、ABCの本を見たり、「英語」という言葉の存在は知っていましたが、今のように、小学生でも、「ある程度の英語の挨拶などが出来る」なんてことはありませんでした。

私の頃の英語の授業は、読み書き及び、文法中心。英語圏からの先生もいなくて、テキストを使って、日本人の先生が教えてくれていました。

その英語の授業のテキストで使われている英語が、日常で本当に使われているものなのか、「今」使われている英語なのかなんて、疑問に思うことすら思いつきませんでした
テキストに載っている英語は、全て正しい英語で、英語圏での日常で使われているものなんだと信じていました

「ん?もしかして、テキストで使われている英語って、ちょっと違う?」と思ったのは、海外で暮らし始めてからです。

日常で使われている英語の言い回しやよく使われる単語が、日本で習ったものと違っていると感じたからということもありますが、それ以外にも、日本語学習用のテキストを見た時に、「こっ、これは…何か違う…」と思ったことも影響しています。

間違った日本語ではないけれど、今の時代に、そんな言葉を使っている人はいないという表現を見かけることがあります。
こちらの高校で勉強している日本人留学生が、英語の勉強にもなるから(日英、英日に訳す問題もあることなどから)と、日本語の授業を履修することもあるようですが、日本語の先生から、テキストに載っている日本語は、今でも使われている一般的な日本語かどうかを聞かれたりするそうです。

日本語でも、10年前と今では、使われなくなった言葉があったり、新しい言葉が誕生していたり、同じ言葉でも使われている意味が微妙に違ったり、同じ言葉の短縮形が使われるようになったり、複数の言葉から一つの新しい言葉が生まれたり、いろいろと変化していると思います。

英語も同じです。

よく、古い英語の辞書をずっと使っている方がいますが、辞書は、定期的に改訂版が出版され、使われなくなった言葉が削除されたり、新しい言葉が追加されていたりするそうです。(私も、かなり古い辞書をそのまま持っていますが、新しいものも購入しています。)
今では日常で使われている英単語なのに、古い辞書には載っていないものもあります。(※追記…辞書はオンライン版が主流になったとはいえ、更新されているサイトかどうか、アプリ等に含まれているものなら、設定がイギリス英語とアメリカ英語のどちらになっているのか等、確認することをおすすめします。)

また、英語圏で生活される場合は、英英辞典を、日本の国語辞典の要領で、是非、使ってみて下さい。
英日辞典で解説されている単語の意味と、微妙に違う意味を発見出来たりします。

ニュージーランドには、ニュージーランド特有の単語を集めた辞典などもあります。日本の「現代用語の基礎知識」のような、現代語辞典などは、英語圏にもあります。興味がある方は、是非、ご覧になってみて下さい。

ちなみに、辞書にも間違いはあるようです。
載っていた例文をアレンジして、自信を持って使った時、「そんな使い方しないよ~」と指摘されたことがあります。
「だって、辞書に…」と見せても、「使わないものは、使わない。変だ」と言われてしまいました。
逆に、日本語を勉強している友達の日本語が不自然だったので、「そんな日本語なんて、ないよ」と教えてあげると、「辞書に載ってたもん」と、辞書の例文を見せられたことがありますが、完全な間違いとは言えないものの、日常使うにはちょっと不自然という表現もありました。

「下手な英語もこうすりゃ使える」のテーマに結びつかないと感じていらっしゃる方も多いと思いますが、下手な英語を作り出している原因について考えることは、英語を使いこなせるようになる為に必要だと思います。
日常生活の中で使われている英語が変化していることに気づかなければ、これからも使えない英語を学び続けることになってしまうかも知れません。

古いテキストに載っている、現在一般的に使われていない言い回しを、いくら一生懸命覚えて使っても、相手は「???」となるだけです。
逆に、相手が「???」となったら、あなたの発音や英語が間違っているというより、「もしかして、この言い回しは不自然なのかも?」という可能性についても考えてみて下さい。

ニュージーランドに来たばかりの時、数ヶ月、語学学校に通いましたが、アイルランド人の先生に教えてもらったことわざを、若いアメリカ人の先生の前で使ったら、「何千年前の英語を使ってるの?そんなことわざ、今のアメリカじゃ誰も使わないよ」と言われました。

でも、逆に、そんな誰も使わなくなった英語の古いことわざを、日本人が使うと、面白がってもらえることもあります。
日本人以外の人が、日本の古いことわざを使っているのを聞くと、なんとなく注目してしまいませんか?それと同じです。

最近の英語はどうやって学べばいいのでしょう?

勿論、英語圏で、「旬」の英語に触れるのが一番だと思いますが、日本にいる方は、

○フォーマルな文章であれば、英語のニュースサイトの記事などを読んでみる
○くだけた文章であれば、ニュースサイトの投稿掲示板やディスカッションのページを読んでみる
○話し言葉であれば、現代を舞台にした英語の映画やテレビ番組を見てみる

と、参考になるのではないかと思います。

古い英語を、目的を持ってわざと使おうとするのでないなら、既に使われていない英語は、頭の中から省いてしまった方がいいと思います。

使っているテキストはいつ作られたものなのか、使っている辞書はいつ頃作成されたものなのか、一度、確かめてみて下さい。
それから、ネイティブスピーカーの人と話す機会を持っている方は、自分が使っているテキストに不自然な英語がないか、聞いてみると良いと思います。

言葉は、変化を続けるという意味で「生きている」と思うのですが、それ以外に、「命(気持ち)」を持つべきという意味でも、「生きている」必要があると思います。

日本語を学んだことがある人たちは、よく、私は日本語のフレーズをいくつか知っていると、自慢しながら言ってみてくれます。
「コニチハ」とか、「アリガト」が一般的ですが、名前や出身地などの自己紹介の他、お決まりのように、「アナタカワイイ」とか、「アナタカッコイイ」とか、誰かに教えてもらったフレーズやテキストで覚えたフレーズが続きます。

ある時、「ワタシハアナタヲアイシテイマス」を繰り返す友人の中で、「愛してるよ」と、さらりと軽く言った友人がいました。
私に対して言われた訳ではありませんが、一瞬、ドキッとしました。
僕も知っている、私もそれなら言えると、それまで続いていた「ワタシハアナタヲアイシテイマス」は、テキストにある文章であったり、誰かに教えてもらったフレーズをそのまま「文字」として読んだだけであって、そこに「心」は無かったような気がします。
きっと、日本のテレビドラマか何かから覚えたのだと思いますが、「アイシテルヨ」という自然な口調には、ただの日本語フレーズ自慢大会だったので、そこに「愛」は無かったものの、「命」はあったような気がしました。そう、言葉が生きてました。

それ以外にも、友達同士なのに「サヨウナラ」とか「シツレイシマス」と別れ際に言う人がいるかと思えば、「ジャアネェ~」とか「マタネェ~」という人もいます。テキストで習う日本語なら、前者なのでしょうけれど、日常使うとすれば、後者の方がより自然な気がします。

当然のことですが、何も言えないよりは、不自然であろうが、使われなくなった言葉であろうが、何かを言えた方がいいと思います。
ただ、英語を口にすることが怖くなくなったら、より、自然な英語を目指してみて下さい。

そして、現在テキストを使って学んでいる人、テキストを持っている人、テキストやテープで学んだフレーズを実際に使った時に、相手の反応が「???」だったという人、一度、テキストで使われている言い回しや単語が古いものでないか、確認してみて下さい。
(改訂版が出版されているようなら、古いバージョン以降に改訂された箇所について、調べてみても良いと思います。)

今回の技は:

「意味も形も変わり続ける、言葉の変化に気をつけながら、言葉に命を与えましょう!」



※この記事は、2003年に発行していた「下手英メールマガジン」で紹介していた「下手な英語を使うための技」に加筆修正を加えて、現在無料再掲載中のものです。令和版は、近日有料公開予定!

下手英メールマガジン発行から20年後、「2023年の後書き」:
英語の情報収集のためのメディアも、英語を学ぶ講座等も、ほぼ、すべてオンラインになってしまった今、全情報が常にアップデートされていると思いがちですが、古い情報も、結構紛れ込んでいます。
YouTube動画など、ふと、気が付いてアップロードの日付を確認すると、何年も前のものだったり、アップロード自体は最近でも、内容は、ずっと昔の古い映像だったり、ということがあります。

すべてがオンライン化して、リアルタイムの情報だと思いがちな今だからこそ、見聞きする英語の鮮度を確認する必要があるかもしれません。

また、ネット上には、英語圏でない国からの英語もたくさん存在します。
前号「8. 訛っているのはどっち?」に書いたように、訛り自体はあって当然のことですが、英語が普段使われていない国で使われている方言等には、不自然な英語の言い回しが含まれていることもあるので、そういった点を考慮しながら、英語に触れるといいかと思います。


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