マガジンのカバー画像

翻訳:ユリウス・バーンゼン『世界法則としての悲劇的なもの』

5
運営しているクリエイター

2023年11月の記事一覧

(翻訳)バーンゼン『世界法則としての悲劇的なもの』(3):第一章「悲劇的なもの」第二節

(翻訳)バーンゼン『世界法則としての悲劇的なもの』(3):第一章「悲劇的なもの」第二節

第一章 悲劇的なもの第二節 倫理的なものの根本的本質における悲劇的なものの条件

 我々は、ヘーゲルの思想の弁証法(Gedankendialektik)が悲劇的な個別的主体において意志の弁証法(Willensdialektik)へと移行するのを見たが、同じことが普遍的な倫理的意志規定の分野においても起きている。その二つの領域、道徳(Moral)と法(Recht)は実在弁証法的矛盾に同様に貫かれてい

もっとみる
(翻訳)バーンゼン『世界法則としての悲劇的なもの』(2):第一章「悲劇的なもの」 第一節

(翻訳)バーンゼン『世界法則としての悲劇的なもの』(2):第一章「悲劇的なもの」 第一節

第一章 悲劇的なもの第一節 悲劇的なものの特徴的な前提

 悲劇的なものの様々な現れ方を分類しようとする時、最も手近な分類根拠として、主たる関係者(訳者注:悲劇の主人公)の性格及び、彼の運命との接触の形式が挙げられる。我々は単なる運命の単純な悲劇的なものを認めないため、偶然との衝突の形式はまずもって二次的なものとして、衝突する個性の内容を優先しなければならない。悲劇的英雄については故なく語られるわ

もっとみる
(翻訳)バーンゼン『世界法則としての悲劇的なものと形而上学的なものの形態としてのユーモア』(1):序言~緒論

(翻訳)バーンゼン『世界法則としての悲劇的なものと形而上学的なものの形態としてのユーモア』(1):序言~緒論


訳者前書き 下掲及び続稿は、ドイツの哲学者ユリウス・バーンゼン(1830-1881)の掲題書(原題:Das Tragische als Weltgesetz und der Humor als ästhetische Gestalt des Metaphysischen)の邦語訳。バーンゼンは、ショーペンハウアーの影響の下、その悲観主義を継承しつつも独自の立場を打ち立てた思想家、また「性格学」(

もっとみる