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【Interview】「自然=緑」の方程式を塗り替える。土屋康一の見ている世界とは?

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無題(*1)
板、アクリル絵の具、クレヨン / 650×910×10mm

黒い地に対して、のびやかに走る白い線と豊かな色面。
構成要素が明快な分、独特なリズム感が目を引くこの作品のシリーズのタイトルは、通称「はっぱ」

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HERALBONYのネクタイ、ハンカチ、スカーフ、そして新商品のエコバッグにも使用されている「はっぱ」のアートを手掛けたのは、
福島県の地域生活サポートセンターパッソ(以下「パッソ」)に所属する土屋康一さんだ。

ファンを魅了してやまない、土屋さんのアートの秘密はどこにあるのか。

作品の内容からコロナ禍での私生活に至るまで、土屋さんの内部に迫るインタビューを大公開する。


集中力が切れることはない? —— 制作時の態度

スクリーンショット 2020-10-11 23.03.57

右下から反時計回りに、土屋さん、ヘラルボニー大田、「はじまりの美術館」の大政さん、ヘラルボニーインターン(インタビュアー)

——作品を一枚描くのにどのくらい時間かかりますか?

土屋:「結構かかる…」

——もう何日もって感じですか?

土屋:(頷く)

——長い間描いていると、お腹が空いたり身体が痛くなることがあるかと思うのですが、ありますか?

土屋:「ない。ないです」(即答)

——え、ないですか?もうずっと絵に集中して描いている?

土屋:「はい」

——それは本当にすごいですね。描くことがすごく楽しいっていう。

土屋:(言葉の途中で大きく頷く)

公園で見た植物たちに想いを馳せて —— 作品について

土屋さんの描く作品は、串に団子が刺さったような図が描かれる「はっぱ」と、画面全体を色面で分割する「はな」に大別される。
ここでは、「はっぱ」「はな」に込められた想いや、画面の中で豊かなテクスチャを生み出している描画材・支持体についてお話を伺った。

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「花」(*2)
画用紙、鉛筆、水性マーカー、油性ペン、水性ペン / 256×362mm / 2007.1

——「はな」って呼ばれる作品があると思うんですけど、例えばこの紫は何故この大きさで描いたのでしょうか。

土屋:「…」

——好きな色だから大きく描くということはありますか?

土屋:(頷く)

大政:「土屋さん紫色は好きなんですか?」

土屋:「うん」

大政:「一番好きな色はなんですか?」

土屋「黄色」

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無題
紙、油性ペン、プラスチック色鉛筆 / 270×240mm / 2018.10.6


——ペンとクレヨンとか、たくさんいろんな道具を使うと思うんですけど、何か理由がありますか?

土屋:(頷く)

——あ、ある?

土屋:「……」

大田:「パッソにはたくさんペンやクレヨンがあるんですかね」

土屋:「はい」

——たくさん道具を使って絵を描くのは好きですか?

土屋:「好きです」

大政:「色々組み合わせて描くのが楽しいのかもしれないですね」

土屋
:(大きく頷く)

——一つの色とか一つの鉛筆、とかだけじゃなくて、いろんなペンとか色とかを使うのが楽しい?

土屋:「はい」

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無題
空き箱、油性ペン、水性ペン、水性マーカー、ボールペン / サイズ可変

——土屋さんの作品の中で、いくつか箱に描いてる作品があると思います。箱に描かれるのがお好きですか?

土屋:(頷く)

——この箱は、描いたあと組み立て直したりしますか?


土屋:「しません」(即答)

——じゃあ一枚の画用紙として扱っている?

土屋:(小刻みに頷く)

——ちなみにこれって本当にお菓子の箱ですか?

土屋:「うん」

——じゃあもう、お菓子は食べて。

土屋:「うん」

——よく食べるお菓子とかありますか?

土屋「抹茶」

大田:「抹茶おいしいですもんね」

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「花ともよう」(*3)
コピー用紙、油性ペン、水性ペン / 249×352mm / 11月20日 


——土屋さんの作品には「はっぱ」と「はな」の作品がありますが、何故「はっぱ」と「はな」なのか聞かせてください。

土屋:「自然。自然です。

——例えば「はっぱ」を描いているときは、公園にある葉っぱとかをイメージしていて、「はな」のときは花壇にあるお花とかを考えて描いているということですか?

土屋:「はい」

大政:「土屋さんは見たことあるお花とか葉っぱを描いてるんですか?」

土屋:「うん」

大政:「頭の中でこういうのがいいなーって考えたものじゃなくて、見たことあるものですか?」

土屋:(頷く)

大政:「どこで見た葉っぱとかお花ですか?」

土屋:「公園

大政:「パッソで育ててる植物は関係ない?」

土屋:(大きく頷く)

大政:「あ、関係ないんだ(笑)」

大田:「パッソでも育ててるんですね」

土屋:「はい」

大政:「あれは別なんですね」

土屋:「別」

——具体的にどの花を描いているとかありますか?例えばこの作品(*3)だったら「薔薇」とか。

土屋:「はい。薔薇

——全部薔薇ですか?これ(*2)は?

土屋:「…キノコ

大田:「えっキノコ?花だと思ってた」

大政:「聞いてた話だと花なんですけど」

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「花のケーキ」(*4)
画用紙、プラスチック色鉛筆 / 380×540mm / 2019.8.2

——これ(*4)はどうですか?

土屋:「水生植物

大政:「それ前聞いた時『お花のケーキ』って言ってましたけど」

土屋:(爆笑)

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無題 (*5)
板、アクリル絵の具、クレヨン / 650×910×10mm

——じゃあこれ(*5)も聞いてみたいな。ヘラルボニーのネクタイになってるやつ。これは何の葉っぱですか?


土屋:「……桜

——桜?

土屋:「はい」

大田:「桜の…花弁?」

土屋:「はっぱ」

大政:「いつの季節の桜ですか?四月の…?」

土屋:(頷く)

大政:「四月の…お花咲いたあと?咲いてる時?」

土屋:「終わったあと」

大田:「じゃあ葉桜なんだ」

大政:「朝の桜?夜の桜?昼の桜?」

土屋:「(爆笑しながら)昼…! 」

——初めて知りました。じゃあ土屋さんのネクタイやハンカチを付けている方は、みんな葉桜を身に纏っているということなんですね。

土屋:(頷く)

——ヘラルボニーのネクタイをどう思いますか?本物を見たことがありますか?

土屋:「…嬉しい(頷きながら)」

ゲイバーを開く日は来るのか…!?——普段の生活の様子

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無題
和紙、アクリル絵の具、油性ペン / 870×340mm

大田:「さっきお寿司の絵もチラッと出てきたと思うんですけど、土屋さんはお寿司は何のネタが好きですか?僕はマグロなんですけど」

土屋:「マグロ」

大田:「え、同じですか?マグロおいしいですよね。あともう一つ、以前パッソでゲイバーを開きたいって話があった(以下参照)と思うんですけど、あれから人集まりました?」

土屋:「集まらない…(笑)」

大田:「メニューは決まりました?」

土屋:(軽く頷く)

大田:「じゃあ後は人が集まれば営業できますね。頑張ってください」

夏の間にいっぱいになったスケッチブック——コロナ禍での新作をチラ見せ


大田:「今土屋さんはどんな作品を描いてるんですか?」

土屋:(大きく口を開ける)

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意気揚々とスケッチブックのページを手繰って見せてくれる土屋さん

大田:「ええ〜!すごい!これは花ですか?」

土屋:「はい、花です」

大政:「何日かけて描いたんですか?」

土屋:「結構かかった…」

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大田:「これはまた違う感じの…」

大政:「これは何かを描いたんですか?イメージ?」

土屋:「闇です」

大政:「闇?!」

大田:「綺麗な闇ですね…。このスケッチブックはいつから使い始めたんですか?」

土屋:「七月…?」

大田:「じゃあ夏だけでそんなに描いたんですね。すごい」

次は柿の絵を商品に!——今後への意気込み

今回は土屋康一さんにお話を伺った。

土屋さんの作品は植物をモチーフにしていることが多い。「はっぱ」も「はな」も、"植物らしさ"を残しつつ、固定化された形や色のイメージに囚われない、色彩豊かで目に快い世界観を表現している。

「あのネクタイやスカーフの柄が実は葉桜だった」という裏話も聞け、より土屋さんのご自身とアートへの愛着も深まったところで、最後にこんな問いを投げかけた。

——次にHERALBONYで商品にするとしたら、何の絵がいいですか?

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新作の中から柿の絵を選んで見せてくれた土屋さん。

コロナ禍も休むことなく新作を生み出し続けている土屋さんとヘラルボニーの活躍を、今後も是非注視していただきたい。


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