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泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』

新品のカードをシャッフルします。
あなたがお好きな一枚を選んで覚えてください。
もう一度カードの中に戻してシャッフルします。
あなたが選んだカードはこれですね?

カード当ての奇術は主にこんな手順で行われる。
この「11枚のとらんぷ」ではカード当てのタネが数多く解説されている。

言うまでもなくどこかの部分にタネがあり、それはそれほどパターンは多くない。
「この部分は隙がない。ならばあの部分にタネがある」
このように考えるのは難しくないが、推理で当てるのはとても難しいものだった。
人の思い込みを利用した柔軟な手。巧妙な隠し方をしていた手。あの手この手で騙される奇術短編は楽しいものだった。

しかし本作は長編小説である。11作の短編が作中作として挿入されているが、それが楽しいと同時にどう絡んでいるのか、そこも楽しんで欲しい。







ここからネタバレありの感想を書きます。
未読の方は読んでからどうぞ。














短編のタネを当てるというものは1.2つくらい当たったものがあった。
しかし長編として重要な役割をする無嗅覚症、鳥嫌い、アリバイ崩しは全く分からなかった。

志摩子が松尾を殺そうとしていた
ここで反転する
なぜ意味深な物を置いたか、ガス栓を開けてから死んだ志摩子、本当の動機が補完され、結末を迎えた。
まさに泡坂マジックである。




しかし晴江の証言がリハーサルのものだったというのは少しフェアじゃないと思った。(角川文庫新装版p366)
本番が終わったあとすぐの楽屋でくすぐったことを証言したのなら、そこの時点までそこに存在していたと示されているのだと解釈してしまうだろう。

皆さんはどう思いますか?フェアかフェアじゃないかどちらの意見もお待ちしています。

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