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【小説】『マダム・タデイのN語教室』7/10の上

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(10回中7回目の上:約700文字)


LESSON5 心の動きが表れる


 どうだいヤツは、そろそろ尻尾を出したかね、
 なんて言いながら、葉っぱも詰めていない雰囲気で買ってみたパイプを、夫のアツムは夕食後にくわえるフリだけしているんだけど、
「ヤツ、なんて言い方やめてちょうだい。女の人に」
 私は結構真剣に、ここから先を一体どう教えたらステファニーに伝わってくれるのか悩んでいて、夫の探偵気取りに付き合っていられる余裕が無い。
「もちろん奥さんじゃないさ。旦那の方だとも。もしかすると、奪い取った品は父親の、金とは限らないかもしれないからな」
「どういう事?」
「はからずも、父親の愛人に横恋慕し、上手い具合に言い寄っては彼女の歓心を買い、息子に乗り換えた奥さんと、二人で共謀した可能性も、なきにしもあらずってところじゃないか?」
 これがまた、選んだ言い回しばかりが大層に聞こえるけど、要するに具体的なところは何にも推理していなくてイライラする。
「ステファニーは愛人になるような人じゃないわ」
 N語が通じないから恥かくの怖いからって、いつも外に出掛けやがるか家の奥に引っ込みやがるくせに、
「いやいや」
 とさも知ったふうな顔で苦笑して、
「女は本性を隠すものだよ、お前」
 なんて言ってきた、その「お前」を耳にした瞬間に、五年に一度くらいの強さでプチンと切れた。
「女にはそのくらい、女に生まれた時点で百も承知なのよ!」


イントロダクション
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ディテクション


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