東京で年収250万は割と普通にいる

日本の一人当たりGDPが台湾に抜かれたらしい。23年には韓国に抜かれる。

みなさんは日本人の年収がだいたいどんなもんだと考えていて、どれくらいなら自分の理想の人生が手に入ると考えているだろうか。

日本で一番多い給与水準の分布を見ると、300~400万らしい。大体17%くらいおり、200~300万が15%近くいるそうで、もはやどこが先進国なのかと思ってしまう程ではある。ただ、事実として平均年収はじわじわ上がってきて、失業率も低い。結果としてアベノミクスは成功だと私は考えているが、増税の影響がこれからじわじわくると思う。

東京か田舎かで全然話も違うんだろうが、東京でも年収200万台の求人なんかいくらでも見つけられるし、単純に最低賃金でフルタイムで働いたら、東京でも200万もいかないことになる。

もちろん金はあればあるほど困ることはない。ただ多くの人が夢見る年収1000万だったとしても、自分がもし忙しくあくせく1000万稼いでいたとしたら、おそらく満足ではないかもしれない。

だらだら毎朝10時くらいに出勤して、きっちり7時間働いて、年収380万くらいだとしたら、それはそれで満足かもしれない。

私は正直、結婚したいという気もないし、子供が欲しいという気もあまりない。生きていけるなら、最低限の金があればいいし、週5日で働くなら週3で最低限のお金を稼いで旅行していたい。

そういう考え方の人は世界中に増えている。だが、日本を除く世界中の国の多くはGDPが増加して金銭的に豊かになっている。タイの外食は日本とほぼ変わらない価格になっているし、フィリピン(マニラ)の生活費は、日本の生活費と較べて極端に安いというような時代も終わりつつあるらしい。

戦争をしている国でさえGDPが増えているというのに、世界一平和だと言われている日本が全く経済成長していない。

養老孟司先生は日本はこれだけ経済成長していないのだから、脱炭素の先進国だという事を言っていた。これだけマスクをして、あれだけ問題になってもFAXを使い続ける国民性なのだから妙に納得してしまう。


大卒の男性の平均年収が470万という説があるが、これはなんというか、微妙な感じがする。日本の平均年齢は47歳くらいだと仮定すると、大卒の47歳の年収が470万ということなんだろうか。

470万あれば、普通に人ひとり生きるのに苦労はしない。高級な車や広い家は買えないが、貯金したり資産運用を上手にすれば買えなくもないし、家族がいたら、妻にも働いてもらって、贅沢しなければ子供も不可能ではない。

ただ、一般的には47歳で初婚というのは遅いだろうし、そこから子どもを産む人が居てもいいが、子どもを産むのなら20代、せめて30代で産んだほうが母子の健康を考えてもベターという考え方は一般的だろう。だとしたら、結婚適齢期および初産での年齢では、年収がもっと低いことになる。

いろんなライフスタイルがあるのは確かにそうなのだが、少子化が問題視されている日本において、本当に平均年収がこのくらいで大丈夫なんだろうか。

私はなんだかんだ10年以上、転職サイトを見続けている。そこで最近気づくことがある。明らかに年収の低い部類と高い部類の求人が分断されている。

CMの言葉を借りれば、ハイクラス転職の場合は800万以上の求人がバンバンあるのかもしれない。だが、実際に考えてみるとハイクラス転職であっても、5000万とか、8000万とかいう求人はエンジニア以外あまりない。日本企業ならほぼあり得ない。

昨今は正社員で年収300万という求人が珍しくない。むしろ普通だと思う。東証プライム上場している大企業でも、それが普通である。ちなみに、転職サイトで300万なので、新卒ではない。条件には学歴不問とか高卒以上と書かれている場合が多いが、大学全入時代の今となっては大卒が多いだろう。

ハローワークなどを見ると、東京で年収260万円とかも珍しくない。普通に労災保険が無かったりする。ハイクラス転職が普通のアッパー層としては、何でそんなことになんねん??と疑問に思うかもしれない。

だが、特殊なつぶしの利かない会社で変に2~3年働いてスキルを磨いても、転職できずに年収が上がらずに、500万に一生届かないような人生になるのも普通に考えられる。

そうなると一念発起で転職するが、仕事が合わなかったりして病気になったり、早期退職すると、もう年収200万台コースに入ってしまう。

別にそのような年収でオファーを出す事自体は問題じゃない。最低賃金を守っていれば、責めようがない。だが、そのような仕事に就くことを選んでしまうような状況に追い込まれている人もいるという現実もある。

正社員なのにボーナスがないとか、別のバイトをやったほうが稼げる仕事もある。最近は正社員を削減して派遣で穴埋めするような経営判断が多い。だから、非正規社員の平均賃金が上がっていて、正社員の給料は上がっていないということになる。

非正規社員の割合は労働者のほぼ半分くらいなので、正社員でも非正規より年収が低い人もいるだろうし、めちゃくちゃ給料が高い人はほぼ正社員だと思う。

そういう構造になると、派遣で置き換えられるような仕事をしている正社員は、上の層に上がるのが難しくなって、上層部と下層部で分断されることになる。

普通に大学卒業して、普通に正社員で働いて、なんにも社会に疑問を持たずに仕事を一生懸命やってきた人は、おそらく東京で年収200万円台で生きている人に出会ったことがないと思う。

だが、東京に200万とか300万の求人はかなり溢れている。30歳で年収500万はレアと言われている理由がそれである。だが、500万が特別珍しいのかというと、実際はそうでもない。誰でも名前の知っている企業に勤めていたら、30歳で500万は彼らにとって普通(むしろ安い)だろうし、そういう人達に囲まれて、社外に目を向けたら「えっ?マジで?」となると思う。

普通に名のある大学を卒業して、名のある企業に務めたら家賃補助や年齢給と福利厚生てんこ盛りで2~3年で500万は超えるので、そういう人にとって特にニュースで議論されている貧困については縁もないし、どうやったら年収200とか300になるのか不思議に思うかもしれない。

結局のところ、スキルどうこうより会社選びが9割と言える。もちろん、その企業に入るためにスキルを磨けということなのだが、本当に日本企業がスキルで人材を選んでいるのかというと、そういうわけでもない。

私のようなゴミキャリア人材でさえ、たまに大企業にエントリーして、何かの間違いで書類をパスしてしまうと、他社とは比べ物にならない年収が提示されたりする。

そういうこともあり、日本での大企業信仰は消えないのだと思う。楽して儲かるの代名詞になりつつある。結局、大企業に入ったほうが年収から人生設計から全てうまく行きやすい可能性を高められる。

もし社内結婚したら、それのダブルインカムになるのだから、ほぼ無敵になるし、もちろん、ぬるま湯が嫌で辞める人も多いのだが、変な中小企業に入ってしまうと、本当にここって仕事する場所なんか?と思ってしまうくらいの環境もあるので、日本で転職が広がらない理由もそういうことだと思う。

大企業に入ったら、もう先がないというか、飼い殺しに近い状況になる。留学するとか外資に行くとか、若い頃は夢を見るかもしれないが、金があって大企業だとモテるので、結局30前で結婚してしまうと、もうそんなことを考える余裕も熱も失われ、会社でどう定年まで生きるかしか考えられなくなる。

芸能界やGoogleのように、とりあえずここで1年勤めれば、人生の労働時間を10年分くらい減らせるわ。という見込みが立つなら、そういうつもりで大企業に働く人も多いかもしれない。だが、日本の大企業というのはそこまでではないし、クビにならないし、気が狂う就活をして入ったのに退職届を出すのも面倒だし、辞めた後の社会保険の手続きや、年金の書類など自分でするのも面倒である。

結局、メガバンクの頭取でさえも、まぁもらって数千万というところで落ち着いている。アメリカや他の国とは比べ物にならない。トップがそうなのだから、その下のボリュームゾーンの給料が伸びるわけがない。トップの水準を落とさないように、ボリュームゾーンをどんどん削っていくことになる。

日本の労働環境では、下手にリスクを犯して挑戦する理由がないというか、アッパー層になるほど、実力以外のぬるま湯に浸かるようなシステムが出来上がっているような気もする。

大企業の仕事とくらべて、居酒屋の深夜バイトのほうがキツイ仕事はたくさんあると思う。ただ、本当にメンタルをやられるほどの仕事も大企業には溢れているというのも事実である。

メンタルがやられるというのは、逃げ場所がないからだと思う。すき家。のワンオペでも時給の何十倍のプレッシャーがかかる。学校の先生なら、担任の先生が学期途中で飛ぶわけにもいかないし、3ヶ月にわたって準備した脳手術を前にして医者が飛ぶわけにもいかない。

メーカーなら大きな工場を建設するプロジェクトもそうだろうし、社運をかけたプレゼンを任されるのもそうだと思う。最近で言えば、W杯のPKだってプレッシャーのかかる仕事に違いない。

好きな仕事なら迎い撃てるが、好きでもない仕事をずっと40年以上、下手したら50年から死ぬまでミス無く続けなければいけない。

そんなプレッシャーに人間が勝てる訳がないし、毎日毎日パソコンと向かい合って生活費を稼ぐような行動が、人間にとって健康的で文化的なライフスタイルなのか疑問に思う。

20歳のころ、円高も相まって韓国で焼肉をバク食いしても、日本より全然安い金額だった。ナイキのスニーカーも2000円くらい日本で買うより安い感覚だったし、それが10年以上経って、韓国はおろか、タイ人がブランド物を買うならタイより日本のほうが安いと思われている。

別に日本人が頑張っていないわけではない。むしろ、頑張りすぎて自分を安売りしているせいで、安くなっているんだと思っている。ブラック企業で低賃金で働く人がいなくなれば、ブラック企業は無くなるし、詐欺を働いているような不動産会社で知人を騙して借金漬けにしているような人がいなくなれば、もっと困窮する人を減らせる。

日本人がデモをしないというのは、そういう事かもしれない。デモをしている人もいるが、大体は暇な老人である。会社に給料を上げてと交渉しても、ヘラヘラされて誤魔化されるか、自分の居場所がなくなって給料が上がらなくなるかどちらかだと思う。

とりあえず私が言いたいことは、本当に日本が貧乏になってきているという事実を多くの人に知ってもらいたいし、自分が大丈夫だからと無視しないで欲しいということである。

大企業でお金は貰えても、そこから逃げられないという問題もある。せめて逃げられるくらいの会社をどんどん日本に作らなければ、トップも伸びていかない。

20日、黒田総裁が事実上の利上げを発表したので、これからの日本の景気はもっと厳しくなる。銀行業の人は羽振りがよくなるかもしれないが、個人的には天下り先を確保するための政治的な思惑でしかないと考えている。

一般企業は給料も頭打ちになる。円高に振れたとはいえ、まだまだ円安水準ではあるので、そこまで輸出企業は心配しなくて良いと思うが、マクロ的な景気は悪くなること必至ではある。今の大学生はより海外を目指すようになるだろう。

今の自分なら年収500だったら、うひょーと喜ぶかもしれない。だが、実際、日本の経済水準で考えると500万は喜ぶべき金額なんだろうか。1000万はすごい人なんだろうか。もっと1000万の同級生が身近に何人もいて良い気がする。

もっとお金が欲しいからYoutubeで一発当てるみたいな、そういう発想は貧困国になりつつある予兆じゃないだろうか。本来なら、普通の堅気の仕事で稼いで年収1000万・2000万稼ぐのが珍しくない社会であれば、豊かな社会と言えると思う。

インフレはこれから収まるかもしれないが、デフレに逆戻りする可能性もある。500万で喜ばない人が増えてくれば、日本社会は豊かになってきたという証拠かもしれない。

正社員年収250万の求人を撲滅するのが一種の私の夢になりつつある。私が社長だったら、そんなことしてまで人を雇うだろうか。そう考えて、悩んだ結果、派遣という選択肢を取る経営者が多いのかもしれない。


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