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チェルシー×サウサンプトン プレミアリーグ 第25節 2021.2.20

こんにちは! へーこです。今回はチェルシー×サウサンプトンのついて戦術分析レビューを書いていきます。チェルシーはトゥヘル体制下では未だ負けなし。そして、来週のミッドウィークにはチャンピオンズリーグ決勝T1stレグのアトレティコとの試合を控えています。対するは、我らがミナミーノこと南野拓実を擁するサウサンンプトン。CLが楽しみで仕方ないところですが、ひとまずはこの試合を勝利で飾りいい流れでアトレティコとの試合に臨みたいところです。

それでは、早速試合を振り返っていきましょう。

スタメン

チェルシーは毎度お馴染みの343。GKにメンディー。3バックはアスピリクエタ、ズマ、リュディガー。中盤はジェームズ、カンテ、コバチッチ、アロンソ。3トップにはマウント、エイブラハム、ヴェルナーが起用された。GKはメンディーが2試合ぶりに復帰。カンテもリーグ戦のスタメンは久しぶりだった。ミッドウィークのCLを考えてか、全体的にメンバーは落としてる印象だった

対するサウサンプトンはいつも通りの442。GKはマッカーシー。ディフェンスラインは右からベドナレク、ベステゴーア、サリス、バートランド。中盤は右からジェネポ、ロメウ、ウォードプラウス、南野。2トップにはレドモンド、イングスが起用された。

チェルシー保持時① 基本形&前節の振り返り

前節の振り返り

・チェルシーは343
・ニューカッスルは433
・ニューカッスルの守備に対して、コバチッチがディフェンスラインに降りて数的優位を作る。
・チェルシーはニューカッスルの中盤の脇を起点に攻略を試みる。
・チェルシーは右で作って、左で仕留める?

前節はニューカッスルの守備の穴をついて堅く勝ち点を稼ぐことができた。そして、本ブログ記事でもチーム全体の構造まで言及した話題を書いた。それをふまえて今節はどうだったのかをみていく。

◆チェルシー保持の基本形

いつもとほとんど同じ。3バック+2CHでビルドアップ隊を構成。3トップ+2WBで5レーンを使い、裏表の駆け引きをしながら段差を作ってサウサンプトン攻略を試みる。

ただ少し気になったのはWBのキャラクター。アロンソとジェームズの二人はどちらもサイドの1on1で突破力を発揮するタイプではなく、この2人が同時に起用されたのは守備に重心を置いたスパーズ戦のみ。そのため、この試合ではサイドからの仕掛けでのチャンスメイクは減り、停滞気味の時間もあった。多分トゥヘルはCLのアトレティコ戦を見据えてオドイを休ませるという判断をしたのだろう。

あと、今節はリュディガーの効果的な持ち上がりが散見された。右利きで左サイドに置かれているというのはパスの供給という点ではデメリットになるが縦に一気に持ち運ぶのには有利である。

チェルシー保持時② サウサンプトンの守備

この試合、サウサンプトンは左右それぞれで違う守備の形を用意してきていた。そして、基本的なコンセプトはどちらもサイド圧縮を使いつつ、ライン間にはボールを通させないというもの。

◆アスピリクエタ保持時
この場合は2つのパターンが用意されていた。

2つのパターンはサウサンプトンのスライド(特にイングスレドモンドのスライド)が間に合うか否かによって使い分けがされていた。

①イングス、レドモンドのスライド守備が間に合った場合

まず、イングスがカンテへのパスコースを消しながらアスピリクエタへ寄せていく。そして、レドモンドはズマを抑える。これでサイド圧縮は完了。LSHの南野はRWBのジェームズを抑える。ライン間を取ろうとハーフスペースにいるマウントへはLSBバートランドが対応する。そのためCHのウォードプラウスは少し中盤で余れるようになる。余ったウォードプラウスはライン間のスペースを管理する仕事に集中できる。このようにして、サウサンプトンはサイド圧縮&ライン間の封鎖を実現していた。

②イングス、レドモンドのスライド守備が間に合わなかった場合

この場合は南野が前に出てアスピリクエタを抑える。イングス、レドモンドはそれぞれズマ、リュディガーを抑える。そしてCHのカンテにはCHのウォードプラウスが対応。そして、変則的な動きがみられたのはディフェンスライン。RWBのジェームズにはLSBバートランドが対応。ハーフスペースのマウントにはCBサリスが対応。そのまま順にずれていって大外のアロンソに対してはRSHのジェネポがディフェンスラインに降りて行って対応していた。そのためこの試合ジェネポはディフェンスラインに吸収されるような場面が散見された。さらに、2トップの動きに守備の仕方が左右される南野はジェームズの脇で準備をしておいて状況によって臨機応変な対応をしているようにみえた。

もちろん、サウサンプトンの狙いはサイド圧縮&ライン間の封鎖であるため①を第一選択肢として持っていたと考えられる。

ちなみに、この守備はバーンリーも似たようなことをやっていた。そして後の章でも書くのだがこのあとトゥヘルがやった修正策まで同じである。

◆リュディガー保持時

この場合はまずレドモンドがリュディガーを抑える。そして2CHには2CHをぶつけて対応する。

特徴的だったのはジェネポのタスク。ジェネポはチェルシーのビルドアップ隊がボールを持っているときハーフスペースの封鎖を担当する。この時のジェネポの立ち位置はかなり低くときにはウォードプラウスよりも低い位置にいた。そして、アロンソにボールが入った時点でハーフレーンを切りながらアロンソに寄せる。この時、ベドナレクもアロンソに寄せていく。そのため右サイドでは大外の選手vsジェネポ&ベドナレクの2対1の構図になることが多かった。サウサンプトンの狙いとしてはここをボールスティールポイントにするor前節調子のよかったヴェルナーにボールを入れさせない。このあたりがあったのではないか。

そして、残りのディフェンスラインの選手はスライドをしてチェルシーの選手を捕まえるのだが右サイドで数的優位を作ってる分、しわ寄せがくるのはLSBのバートランド。ここでは右サイドの逆に1vs2の数的に不利になることが多かったのでバートランドはマウントに対して外へのパスコースを消しながら寄せていくことが多かった。

◆左右で非対称の守備をした狙い

サウサンプトンがこのような守備をした狙いはチェルシーに左回りのビルドアップをさせるということだったと考えられる。

前節の記事でも書いたことだが、チェルシーは右からの組み立てのほうが得意な構造になっている。

https://note.com/heko5606/n/ndfc4f8d0373a  ←前節の記事のリンク

そのため南野が後ろから出ていき、もともと高い位置にいるレドモンドが少し内側から守備をすることによってアロンソサイドの深い位置にボールを引き込んでボールを奪うという狙いがあったと考えられる。


サウサンプトンが用意してきた守備に対して攻めあぐねる時間が多かった前半。この状況を踏まえてトゥヘルはどのような修正策を打ったのか...。

余談だがトゥヘルはほとんど毎試合途中で修正orプラン変更をしてくれるので戦術好きの身としてはとてもありがたい。

チェルシーのプラン変更

◆チェルシーの後半戦の戦い方

後半のスタートからトゥヘルは善後策を打ってきた。

それは、エイブラハムをオドイに交代してシステムを3412にするというもの。2トップにオドイ、ヴェルナーを据えてトップ下にマウントを置いた。

このプラン変更の狙いとしては前半封じられていたライン間の攻略だと考えられる。2トップで2CBをピン留めしつつ、ライン間でマウントに自由に振る舞ってもらおうという狙いがうかがえる。

ちなみに、前の章でも書いたのだがこのプラン変更の流れはバーンリー戦と同じである。

サウサンプトンの守備のプラン変更

チェルシーのプラン変更に合わせて、バーンリーも守備の仕方を変えてきた。

1番大きな変化はジェネポのタスク。前半は低めの位置に構えてアロンソを見つつハーフスペースを消す役割を担っていたが、後半は逆のSHである南野と同じくらいの高さにポジショニングし、ハーフスペースへのパスコースを潰す役割を担っていた。

このことによって、カンテ、コバチッチを前線の6枚で囲い込みつつ、ライン間へのパスをシャットアウトするというのが狙いだったと思われる。

トゥヘルの細かいが効果絶大だった修正 〜『運べ』の意味〜

この章が本記事おおとり。一番書きたかった内容である。

チェルシーのビルドアップ時の問題

後半、チェルシーはプラン変更をするものの大きな効果を生み出すことができずにサウサンプトンの狙い通りの試合展開を作られてしまっていた。では何に問題があったのか...。

それは、サイドへの揺さぶりが足りなかったことである。

サウサンプトンのように人ではなくスペースに基準点を置いて守備をするチーム相手に最も効果的なのはサイドへボールを振って間を使っていく攻撃。チェルシーはこれができていなかった。

そしてこの最大の原因はWBとHVの距離が遠いことだった。

ここで重要なのは距離が遠いことであって、WBとHV間のパスが少ないことではない。このことに注意をしてほしい。

HVとWB間の距離が遠いことによる弊害

①サウサンプトンのSBがコンパクトな守備が可能

WBとHVの距離が遠ければ、その間の距離の長さの分、長くSBはWBと距離をとって守備をすることができる。そのためサウサンプトンのSBはよりコンパクトな陣形を保ちやすくなる。

②WBからのチャンスメイクが減る。

HVからWBの距離が遠いほどその間のパスはつながりにくくなるため、HV-WB間のパスは減少し、WBがボールを待ってチャンスメイクする機会は少なくなった。

この2つの現象により、サウサンプトンはコンパクトな陣形を保ちやすくなっていた。

ジョルジーニョの運べ意味

この2つの問題を解決するためにトゥヘルが打った修正策はシンプルなものだった。

それはCBにボールを運ばせるというもの。ジョルジーニョ、ツィエクの76分の交代以降にこの修正は見られた。

CBがボールを持ち運ぶことによってWBへのパスコースができる。このことによって、HVからWBへのパスが増える。さらに、サウサンプトンのSBはよりWBに近い位置で守備をしなくてはならず、陣形をコンパクトに保つのが難しくなる。

このため、ジョルジーニョはCBに対してボールを運べという指示をしていたのだと考えられる。

ちなみに、この指示をしていたのはジョルジーニョだけではなく、アロンソもしていた。それまで、CBに対して何の要求もしていなかったアロンソがコーチングをし始めたというのはトゥヘルがチーム全体に策を与えていたということの証左だろう。

修正前と修正後の変化がはっきりとわかるシーンを挙げておく。

【修正前】6344、6408、7154

【修正後】7831、7857、8324、8543、8708

この8つのシーンを振り返っていただければトゥヘルの修正がいかに効果的であったかどうかわかると思う。あと少し修正するのが早ければチェルシーはサウサンプトンを攻め落とすことができたかもしれない。

まとめ

・チェルシーは343。WBには守備的なチョイスをした

・サウサンプトンは442。ライン間の封鎖&サイド圧縮を使いつつチェルシーの攻撃を左に誘導する。

・後半の立ち上がりからチェルシーはシステムを3412にしてライン間の考略を試みる。

・サウサンプトンはチェルシーのプラン変更にあわせて真ん中への縦パスを封鎖することに重点を置くようになった。

・トゥヘルはサイドに振る攻撃が少ない問題をHVに持ち運ばせることで解決した。

引き分けにはなったものの最後の10分間で大きな変化を見せたチェルシー。トゥヘルの修正策はさすがのものだった。とにかくサッカーは細部にこだわるのがいかに大切かということがよく分かった試合展開となった。よくをいえばあと少し早くその修正をしてほしかったともおもってしまう。この試合を見ていない人は先に挙げた8つのシーンだけでも振り返ってほしい。

そして、次はアトレティコ戦。今日の最後の修正をみてより楽しみのなった。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

試合結果

プレミアリーグ 第25節 2021.2.20

チェルシー×サウサンプトン

スコア 1ー1

得点者 南野、マウント

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