表現と物語 1 へびやま 2023年7月21日 07:32 作品を作ることについて語られたものと、「物語とは何か?」のヒントになりそうな文章を集めました。作家> 小説なんか書かなくても、人生は聡明に有効に生きられます。それでも書きたい、書かずにはいられない、という人が小説を書きます。そしてまた、小説を書き続けます。> あらゆる表現活動の根幹には、常に豊かで自発的な喜びがなくてはなりません。> もしあなたが何かを自由に表現したいと望んでいるなら、「自分が何を求めているか?」というよりむしろ「何かを求めていない自分とはそもそもどんなものか?」ということを、そのような姿を、頭の中でヴィジュアライズしてみるといいかもしれません。「職業としての小説家」村上春樹> オーダー通りに仕事をこなせる作家は一定数いる。でも、そのような作家はたいてい、じきに書けなくなるそうです。自分を押し殺し、相手に求められるだけの仕事に徹する。それは階段の踊り場をただぐるぐる回っているようなものです。いつまで経っても次の階段に足をかけない。「孤独論」田中慎弥>もし文筆家が「筆で身が立つようになるまで、生活の足しになるようなものを書いていよう」と考えたとしたら、その時が来ても書きたいものはもう書けないでしょう。彼の手に生活のための書き方が染み付いていて、より高いレベルのものが書けなくなってしまうのです。「ジョーゼフ・キャンベル対話集」> デビューアルバムは大事よ。でも2作目がこれまた1作目以上に大事。点が線になるから。で、3作目では面をつくるということで、3枚のアルバムを乗り切れればプロでやれる。> 歌詞って、テーマをどっかにもたないとダメだから。強烈にあなたが好きだとか、ふられて悲しい、というテーマをもってこないと歌詞にならない。そういうニーズに応えて聴く人にこっちから供給しているわけ。でも、私が自分でもっているテーマは違うところにあるっていう感じなの。「ルージュの伝言」松任谷由実>小説って、基本的には読む必要なんてまったくない物語だし、生きていくうえで何の意味もないわけだから、それなら、逆に小説をどうやって読ませるか、読んでいただくかっていうことになるんですよね。「狂いの構造」春日武彦、平山夢明 物語>『物語とふしぎ』を書いているうちに、この本には書かなかったが、子どもの頃に読んだ面白い話を思い出した。(中略)あるところに幽霊が出て人々を困らせるのだが、その幽霊は出てくると、「今宵の月は中天にあり、ハテナハテナ」と言うのである。 確かになぜ月は中天に浮いているのか、ふしぎ千万である。これに対して、納得のいく説明ができないものは、ただちに命を失ってしまう。恐ろしいことである。まさか、当時は万有引力の法則がわかっているはずもないし、どう答えるのか。ところで水戸黄門は幽霊の問いかけに少しもあわてず次のように答えた。「宿るべき水も氷に閉ざされて」 すると幽霊は大喜び、三拝九拝して消えてしまった。つまり、これは、黄門の言葉を上の句とし、幽霊の言葉を下の句とすると、三十一文字の短歌として、ちゃんと収まっている。そこで幽霊も心が収まって消えていったというわけである。 子ども心にもこの話は私の心に残ったのか、未だにこんな歌の言葉まで覚えている。私は子どもの頃から妙に理屈ぽくて、「なぜ」を連発し、理づめの質問で大人を困らせていたので、論理によらない解決法というのが印象的だったものと思われる。これはひとつの日本的解決法と言えるのではなかろうか。「物語とたましい」河合隼雄> 何度も述べてきたように、人間は不本意な状況に置かれると、「なぜ?」と問います。そして、不本意な状況があまりに深刻だったり、あまりに長期化したりすると、「なぜ生きてるんだろう?」と問うてしまうようになります。「人はなぜ物語を求めるのか」千野帽子 ダウンロード copy この記事が参加している募集 #新書が好き 841件 #創作活動 #村上春樹 #創作論 #松任谷由実 #河合隼雄 #新書が好き 1 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート