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【読書】いなばのしろうさぎ(絵本)

 今年はうさぎ年。古事記にも登場する「因幡の白兎」は、小さい頃から大好きなお話です。2010年には金の星社からいもとようこさんの挿絵の絵本が発売されました。いもとさんのかわいらしい絵が大好きなので、大切にしています。

 舞台は「おきのしま」。海の向こうに見える大きな島に行きたいと考えている白兎のお話です。
 おきのしまとは「淤岐ノ島」あるいは「隠岐の島」だそうです。私は「沖ノ島」だと思っていました。確かに地図で確認をすると、沖ノ島からでは白兎海岸まで距離がありすぎます。

●本州を眺める●

 白うさぎは本州へ渡る方法として、サメを利用することを思いつきます。「サメとうさぎ、どちらの数が多いか比べるから並んでほしい。」と嘘をついて並ばせ、その背中をぴょんぴょん跳んだのです。
 渡り終える瞬間に、騙したことを告白する白うさぎ。それを聞いたサメは怒り、うさぎの皮を剥いでしまいます。自業自得です。

●”意地悪な神”は足だけ登場●

 意地悪な神様に「海の塩水で身体を洗い、風に吹かれていると治る。」と教えられたうさぎはその通りにし、さらに悪化させてしまいます。
 痛くて動けなくなった白うさぎ。そこを大国主命が通りかかり、「川の水で身体を洗い、ガマの穂綿にくるまると元通りになる。」と教えてくれます。その教えの通りにし、痛みは引いて白い毛が生えてきました。

●ふわふわになる●

 すっかり治ったうさぎが大国主命に感謝するところで、この物語は終わります。
 しかし古事記では続きがあります。大国主命は八上比賣(ヤガミヒメ)の元へ行く途中であり、このうさぎが「あなたは八上比賣と結婚できますよ。」と予言をするのだそうです。同じ物語でも、この続きがあるかないかで読み手の受け取り方が変わりますね。「白うさぎとは何者なのか。」と考えさせられます。

 私はこの絵本だけを読むのなら、「他者を騙してはいけないよ。」というメッセージが込められているのだと感じます。子どもにも分かりやすいですね。

 遠い昔の話なので記憶が曖昧なのですが、大学の教授から「この物語は禊の仕方を教えるものである。」という話を聞いたことがあります。本州に暮らす人々は真水で禊をしていた。しかし、渡来してきた人たちはその風習を知らない。「そんなことも知らないのか。」と馬鹿にされ辛い思いをしたが丁寧に教えてくれる人もいて、それでこの地の風習を学んだのだとか。
 「沖ノ島」では、白うさぎが初めにしたのと同じように海水で禊をするそうです。不思議な縁を感じずにはいられません。
 古事記や日本書紀、神話、昔話…物語そのものも大好きですが、そこに込められた意味をたくさんの人たちが考察しているのを読むと、なるほど、と学びになります。

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