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ありがとう、こまわりくん~少年チャンピオンが友達だった~

およそ50年前、少年チャンピオン連載で一世を風靡した“がきデカ”を模写していたことを思い出し、再びマンガ(アニメ)模写に目覚めた。


▼今シーズンのお気に入り3作品のアニメ模写

①烏は主を選ばない

アニメは原作(小説)の時間軸をアレンジ

②忘却バッテリー

“忘却”ってそうゆうこと?
“パイ毛”はZ世代にはウケるのか?

③鬼滅の刃 柱稽古編

不死川と甘露寺を新たに追加

そして今回の投稿は、図書館の散策で目に入った“がきデカ”作者の山上たつひこ氏のエッセイ集「大阪弁の犬」を読んだことがきっかけ。
小学生のとき夢中に読んだ「がきデカ」の作者が漫画家から作家に転身していたことを知らなかった。
あるいは、ニュースは目にしていたけど、ブームを過ぎ興味を失ってからは気にならなかったのかもしれない。


本エッセイでは後半の“犬月猫日の記”で「がきデカ」誕生秘話や、後に人気を奪われる「マカロニほうれん荘」へのあからさまな嫉妬(憎悪)が正直に語られている。

▼以下、原文▼
そこへ弟が生まれた。両親の愛情は新しい命にそそがれ、兄の存在は片隅に追いやられた。鴨川つばめはぼくにはないすべてのものを持っていた。都会性、絵画センス、スピード感。圧倒的画力は鴨川つばめ最大の武器であったけれど、忘れてはならないのが彼の言語感覚である。ぼくのキャラクターが発するのは河内系大阪弁、大阪漫才をルーツとする言葉だったが、「マカロニほうれん荘」の登場人物の口からはロックのビートが迸った。絶え間なく、疾走するように。それは読者にロックコンサートの会場にいるような熱狂と臨場感を与えた。これはもう手の尽くしようがないなとぼくは思った。勝ち目はない。ぼくは心の中で早々に白旗をあげたのである。

「大阪弁の犬」より引用

回想文とはいえ、リアル感たっぷりのとてもとても正直な告白である。
筆者は本エッセイを通じて「素朴で正直な人」という印象。
“がきデカ”の下ネタ満載の超下品なイメージ笑からはほど遠い。
そして、私は上記の“両親”に含まれるファンの存在、“がきデカ”から“マカロニほうれん荘”へ関心を移した一人であり、この告白は当時の私の作品への思い入れ、鴨川つばめ氏の挫折の記憶と重なり、なんとも切ない。

“がきデカ”は迷走するも、“マカロニほうれん荘”の失速の後、ブームとは言えないまでも安定期を迎える。ギャグは“八丈島のキョン”だったかな。
が、その頃には中学生になった自分自身が既に「少年チャンピオン」を卒業していた。そう、がきデカの終了を見届けることはなかった。

「6年間続いたがきデカ」連載終了時の山上氏の思いも語られる。

「がきデカ」は終わった。
終わるべくして終わった。
自己弁明風に言えば、ギャグを書き続けることの自家中毒で体内気圧が高まり、精神が破裂する危機に瀕したそれを回避するために身を引いたということになるだろうか。
ぼくのようなタイプにはやはり国民漫画は無理らしい。

「大阪弁の犬」より引用

サザエさんのような国民漫画を夢見た作者の野心は潮時を迎えた。
人気作品を生み、続けるというプレッシャーは自分には想像もつかない。
「名探偵コナン」などのロングセラーの希少性を実感する。

最後に、“がきデカ”を模写した少年時代を思い出しながら、“がきデカ”を描いていなかったので、本当に約50年ぶりに描いてみた。

“死刑”ってギャグは今見ると、倫理的にどうかな…と思いますが笑


少年時代、友だちはテレビと少年チャンピオンだった笑

ありがとう、こまわりくん


▼以下、エッセイより「犬月猫日の記④~⑥」要約
・秋田書店からの電話ー編集者 阿久津氏
 少年チャンピオン連載の依頼
 「チャンピオンに刺激を与えてほしい」
・作品構想ー刑事物→当初タイトル“スタミナ捜査班”
 主人公は少年に→こまわりくん、がき刑事(デカ)
・脇役名はアイドルから
 西城秀樹、風吹ジュン、山口百恵、あべ静江
・連載後“失敗”を感じた直後→人気投票4位(のちに1位)
 コミックス1週間で売り切れ
・チャンピオン充実期
 ドカベン/ブラックジャック/750ライダー他
・鴨川つばめ“マカロニほうれん荘”の登場でパニくる
 弟が生まれた時の3歳児の心境(弟を憎悪)
 都会性・絵画センス・スピード感・言語感覚に白旗
 →タッチを真似、人物の頭身が異様に(心の弱さが招いた悲劇)
・丸6年で連載終了(終わるべくして終わる)
 精神が破裂する危機を回避するため身を引く
・漫画の筆をおき、作家へ転身(1990~)


私の“がきデカ”回想記、最後まで読んでいただきありがとうございました。
私の読書の原点?、そして人間形成の軸になった?「少年チャンピオン」にも感謝したいと思います。


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