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相手に喋らせるとなぜか上手くいく「50:50の法則」:会話のデザイン

おはようございます。JX通信社の細野です。寒暖差がしんどいですね。

普段はCXO(Chief Experience Officer)として、デザイナーに限らずセールスやエンジニアと一緒にビジネスを組み立てる仕事をしています。

とある商談に同席した日、気づいたことがありました。

自分と相手の「発言量」に着目すると、相手がたくさん喋る打ち合わせは温度感や納得感が高いことが分かりました。

相手は前のめりになり発言量が増えると、自ら発言することで納得感を高めてくれる。人の納得感は、セールストークの良し悪しだけでは決まらないのです。

逆に、ほとんど発言しない顧客が成約に至るることはまずないのです。むしろ「早くこの打ち合わせ終わらないかな…」とさえ思っているかもしれません。

自分だけでなく相手もよく喋る。その結果、発言量がいつの間にか「50:50」に近づく。これを「50:50の法則」と呼んでいます。

相手よりも多く喋ってはいけない。相手が喋らなさすぎてもいけない。

この「50:50の法則」は、セールスに限らず1on1や社内の打ち合わせでも幅広く適用できます。

相手を喋らせるにはコツがある

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ここで考えたいのは、いかに相手の発言量を引き出すか。

ひたすら雑談をすればいい、という話をしているわけではありません。問い方、聞き方。話し方。こうしたコミュニケーション技法の積み重ねによって、相手の発言を最大化し、相手の納得感につなぐことができます

このnoteでは、その具体的な方法を抜粋して紹介します。なお、使い方にはくれぐれもご注意を。

(1)適切な自己開示

まず大前提。発言を引き出すには、信用がとても重要です。自分の過去の失敗談を話すなどで親しみを持ってもらいましょう。

「俺も開発マネージャーやってたときはしんどくて。なかなか言葉にできない難しさがあるよね。だから正直なところ、偉そうに言える立場ではないんだけど…。でも、そういう自分だからこそ、一緒に考えられることがあると思うんだ。」

(2)極端に問う

もし、商談先にこう言われたらどうしますか。

「いや〜、予算の関係でいまは契約できないんです。」

3歩譲って、契約できないのは仕方ないこと。でも、ここで「なるほど、わかりました!」と引き下がってしまうと失注理由が明確になりません。

ここで必要なのは「なぜ契約してくれないのか」を明確にすること。顧客は「予算の関係で」と言っていますが、果たして本当なのかを確認したい。

そんなとき、以下のように直接聞いても効果的な答えは返ってきません。

「契約してもらうには何が足りないのでしょうか?」

この場合は、制約条件を取っ払う極端な問い方をしてみると良いです。

「もし3万円のこのプロダクトが1000円で使えるとしても、契約できませんか?」

ここで「そうですね」と返ってきたら、純粋に「やっぱり予算のタイミングが合わなかったのか」と整理できます。

これを応用して、僕はよく1on1で以下のような問いかけをしています。

「もし○○さんが会社の社長だったら、プロダクトに真っ先に実装したい機能はなんですか?」
「もし○○さんがチームのリーダーだったら、このチームをどう改善したいですか?」

本来ありえないような条件で考えてもらうのがポイントです。

(3)時系列に着目する

例えば1on1で、こう言われたとします。

「言いづらいのですが、チームの開発スピードが遅くて困っています」

なかなかウッとくる言葉ですが、ここで「なぜ?」と聞いても会話は弾みません。「なぜ?」はオープンクエスチョンだからです。

「状態」の話が出たら過去・現在・未来に展開して聞くようにします。

「1ヶ月前と比べて、遅くなったと感じますか」
「過去にもスピードがあがらない時期がありましたか」
「遅くなったきっかけや出来事は何がありましたか」
「もし1ヶ月後に改善できるとして、1つだけ変えるなら何を変えますか」

これにより言語化が支援でき、相手の解像度を高めます。あとは勝手に言葉が出てくるはず。

(4)抽象→具体で言語化を支援する

商談のときにこう言われたら。

「このプロダクトはなんとなく使いづらくて…うーん…」

「使いづらい」は、極めて抽象的な表現です。なぜなら、

「UIが見にくい」
「ひと目で操作の仕方が分からない」
「操作コストが高い」
「作業ミスが頻発する」
「競合プロダクトのほうが使い慣れている」

はすべて「使いづらい」と形容できてしまうからです。

このとき、「使いづらいって具体的にどんな感じですか?」と聞いても聞きたいセリフは引き出せないので、直近の記憶を想起させます

「最近、使いづらいなと思ったタイミングはどんな状況でしたか?」

狙いは、抽象的な内容を具体化することで、真の問題を明らかにすること。また、相手の言語化を促進することで、勝手に相手の口数が増えます。

相手が抽象的な表現をしたら、徹底的に掘り下げるチャンス。だいたい言語化できていない領域なので、うまく聞いてみましょう。

(5)的確にサマる

一般的に、人が話す言葉は体系化も構造化もされていません。断片のような言葉を代わりに「翻訳」してあげることで、相互に理解が進みます。

転職直後で不安を抱えるディレクターがいたとします。

「ぼく、コードが書けないんですけど、前職ではエンジニアと仲良くて。飲み屋で気さくに恋愛話するくらい打ち解ける仲でディレクションしやすかったんです。それで別の会社に転職したんですけど、一般的にエンジニアってそういう人だけではないと思うんですよね。なんというか、すごく心配になってしまって…」

これを、以下のようにサマってあげます。

「なるほど。関係性が築けていない中、かつてのノリでディレクションするのが怖いってことですか?」

一言でサマることで、相手の言語化が進みます。加えて、正確に理解していることを相手に示す意味にも。

(6)引用を多用する

例えば、1on1でこう言われたとします。

「Slackのチャンネルを見ていると、とても追いきれなくて。ただでさえ自分のタスクがあるのに、見るべき情報が多すぎるんだと思います。あるいは、他のメンバーがさばけているのに、自分だけが見切れていないんでしょうか」

聞く時は、引用しながら問う手法がおすすめです。

「ふむ、そうなんですね。"見るべき情報が多すぎる"という主旨の話がありましたが、業務中にSlackを開いて確認してもなかなか消化しきれないイメージでしょうか。」

引用することで、相手への「聞いているよ」の意思表示に。どんなシチュエーションでも活躍する万能薬です。

(7)言い換え表現を多用する

言い換え表現は、多角的な思考を促すことにつながります。

「この1週間で、エンジニアとの共同作業が大事だと改めて感じました。一緒に協力できなければ、絶対にいいものなんて生まれないじゃないですか。ときには、立場を超えて協力しないといけないこともあるし。次の1週間はその領域にチャレンジしてみたいです。」
「確かに、僕も似た経験があります。もしかしたら、"協働"と"越境"が直近のテーマなのかもしれませんね。」

このように、相手の代わりに言葉を言い換えてみます。もし「いや、そういう意味じゃないんです」と言われたら、逆に言語化のチャンスなので具体化してみましょう。

50:50にならないときは何かがおかしい

よくあるのは、自分ばかり話してしまうパターン。納得してもらいたいがためにたくさん話してしまうと、逆に納得感が得られなくなってしまうかもしれません。

発言量が50:50にならないときは、何が足りないのかを観察するのをおすすめします。

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