SaaSベンチャーが“真の顧客志向”を目指してUX局を立ち上げた話
この記事はJX通信社アドベントカレンダー2019のエントリーです!
FASTALERTなどのSaaSを提供するJX通信社では、会社のバリューに「顧客志向」を掲げています。
でも「顧客志向」って、いざ実践しようとなると難しくないですか?
まず何をどうしたら顧客志向なのか分かりづらいし、顧客のために仕事していますか?と聞くとそう答える人も多いかもしれないけれど、実際のところ本当にそうなんでしょうか? 「私は顧客を大事にしています!」って言えば、顧客志向なんでしょうか?
このエントリーでは、うちの会社の顧客志向(カスタマードリブンの話)の考え方と、社内にインストールする方法について書きたいと思います。
顧客を主語にして語ろう
ここでひとつ、簡単な例で考えてみたいと思います。
神保町のカレー屋さんの例で考えると、お店は材料をもとに調理をし、顧客に届けてお金をもらうことができます。お店を主語として考えると、「やらなければいけないこと」をベースに業務フローが組み立てられます。
これを顧客視点で構築しなおすと、こうなります。
顧客の頭の中では、たくさんの選択肢があるなかで、さまざまな「意思決定」を行い、この980円のカレーを食べるに至ったわけですね。
こうして見ると、顧客目線で決定プロセスを整理したとき、飲食店が選ばれるためにできることは何か?のような問いが生まれてきます。このように、顧客が日々行う意思決定を最適化することを、僕は勝手に「顧客の決定を科学する」と呼んでいます。
「顧客志向」とは、顧客視点に沿って最適化することであり、それを実現するために顧客理解に努めなければ、2度と選ばれることはありません。顧客を完全に理解することなんてできないけれど、この姿勢が大事です。
カレーが大好きな人でも、毎日カレーを食べることはない
顧客を知るということは、壮大で奥が深いことです。
なぜなら、顧客にとって、一日たりとも「まったく同じ日」なんて存在しないし、また一人たりともまったく同じ顧客なんて存在しないからです。
なぜ、顧客はカレーを食べるに至ったのか。なぜそういう気分だったのか。
なぜ、そのお店を選んだのか。あるいは、はっきりした理由はなく、なんとなく選んだのか。だとすると、無意識で選んだ要因は何だったのか。
顧客を取り巻くさまざまな状況の変化、ストーリー、文脈があって、顧客は意思決定を行います。皆さんも自分の行動を思い返すと、似たような経験があるのではないでしょうか。
こう書くと非常にランダム性が高いと思われますが、だからこそ再現性を設計する必要が出てきます。
つまり、どのセグメントにどう接点を作り、顧客とどのようなストーリーを設計するか。世の中に絶対なんてないけれど、顧客に選ばれる必然性を作ることはできるわけです。
上記はカレー屋さんの例で説明しましたが、顧客起点で物事を整理する重要さにおいて、BtoB/BtoCのサービス開発でも同じことが言えるのではないでしょうか。
企業に「顧客志向」が必要な理由
結局のところ、なぜ顧客志向が必要なのか。
それは、顧客が求めているものを適切につかみ、適切に提供するため。そして、それを実現する意思決定の精度とスピードを向上するため。この言葉に尽きると思います。
世の中では、物事を決定するとき、
「(すべての変数を棚卸ししない状態で)○○だから○○、ゆえに○○」「(定量的な側面だけ見て)計測したデータ的にはこの選択肢が正しいっす」
「他社サービスにはこういう機能がありまっす〜(他がやってるからきっと正しい)」
「多数決で決めたのでこれが正しいです〜(プロセスに着目しすぎて意思決定の精度が伴わない)」
みたいな、一見すると合理的に見えるものを根拠にして、意思決定が行われていたりします。
客観性を欠く誤った判断や、博打っぽい判断が生まれやすい状況になって「市場で実験してしまうこと」になれば最悪。これは避けないといけません。
また隠れた効果として、「本当にうまくいくのか?」という不確実性を減らすことは、意思決定者の決定時の心理的なハードルを下げることにも繋がります。
組織にはいろいろな意見を持った人がいて、大きな意思決定になればなるほど気持ちがしんどくなり、大企業なら社内政治も相まって意思決定がズルズル長引くこともあるでしょう。これを防止することにも繋がります。
どのように顧客志向を実践するか
うちの会社では、まずバリューで「顧客志向」を定めました。
・顧客に価値をもたらすことで、社会を変えていこう
・顧客のニーズを適切につかみ、正しく解決していこう
・セールス・マーケ・エンジニア・デザイナー、それぞれの立場・それぞれの努力で、顧客価値を最大化しよう
今の市場において、ユーザファースト(カスタマーファースト)がサービス設計の必要条件であることにもはや疑いはないと思います。
セールスもエンジニアも、もちろんデザイナーも、結局のところ垣根を超えて「顧客価値」のために仕事するわけだから、社員全員で顧客志向を大事にしよう、という意図でバリューに設定しました。
その上で、ユーザ体験を軸とした意思決定をサポートし、その質やスピードを向上するためにUX局を立ち上げました。
UX局の主な機能は以下の通りです。
1. 顧客にまつわる情報を集約する
2. サービスの品質を管理する
3. 品質向上のための意思決定をサポートする
4. UX/CXマインドを組織に促し、顧客価値へフォーカスする会社にする
顧客を理解するために大事にすべきこと
顧客を正しく理解するために、僕が大事にしていることを4つ紹介します。
(1)方法にこだわる
・顧客を正しく理解しよう。
・そのために、顧客を理解するための方法を理解しよう。
顧客のことを考えていると言うのは簡単。でも、本当に大事なのは「顧客を正しく理解すること」です。
顧客を正しく理解しようとすると、その方法論が大事になってきます。その方法をよく知ること。
(2)検証にこだわる
・仮説を検証するために、実証しよう。得られたデータは客観的なファクトとなって、社内の意思決定に大きな影響を及ぼす。
「顧客はこう思うはず!」「こんな行動をするはず! 」
これはすべて主観的な推測にすぎません。しっかりとデプスインタビューやユーザテストを通じて検証することで、ぐっと解像度が上がります。
(3)一次情報にこだわる
・顧客にまつわる「一次情報」を解像度高く理解すること。
・「一次情報」とは、抽象化したり、脚色したりしていない生の情報のこと。真水の状態で情報を受け渡す工夫をしよう。顧客が何かを言ったとき、その言葉のニュアンスすら大事な手がかりになる。
・できるだけすべての発言を文章ではなく、動画や音声で記録しよう。
・オピニオン(高次情報)とファクト(一次情報)を整理しよう。
顧客の発言や行動は、正しく組織に伝達する必要があります。そのために、「私はこう思う!」ではなく、できるだけ生の状態で記録するよう努力すべきです。なぜなら、そのデータは最終的に、何らかの意思決定の根拠になるからです。
僕のおすすめはiPad Proで「Notability」というアプリ。録音と議事録をスピーディに&正確に記録、組織に伝達することができます。
(4)変容にこだわる
・UX/CXにフォーカスする視点を根付かせるために、組織やメンバーを変容させていくことに労力を惜しまない。
・自らもしなやかに変容しよう。そのために学習を惜しまず、多様な意見に耳を傾けよう。
顧客の理解は非常にアカデミックな要素を含みます。だからこそ、日々キャッチアップに励もうぜ、という話です。その上で、組織に知識をインストールしていこう、と。
いろいろ書いたけど、顧客志向は深く難しい(でも面白い)
デザイナー以外でも分かりやすいよう、あえて専門用語を使わずラフに書いたつもりです。
うちの会社では人数を拡充しているところなので、もし興味ある方いたらTwitterで話しかけてください(@healthyboy5)。
これからも顧客志向にフォーカスして、ビジネスをスケールしていきたいと思います!
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