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レッドオーシャンと言って思考停止していないか。無かった市場を創ったRitual。

ちょっとした興味からDollar Shave ClubとHarry'sのバリューチェーン分析をしてみたら意外と面白かったので、

商品自体は試したことがあったけど、ビジネスモデル的に前から気になってたRitualとCare/ofというサービスがあって、両者とも伸びていそうだったので、(優秀なインターンが)少し深掘りをしてみた。

RitualとCare/ofはどちらもサプリメント系のD2C。
Ritualはインスタ映えするサプリメントとして言及されることも多いので知っている人も多いと思う。Care/ofはパーソナライズサプリのサブスク。
設立年も近く、累計調達額も両者とも40Mドル程度とアメリカの競争激しいサプリメント業界に参入し、大型の調達をしている。ちなみに、RitualのCOOはDSC出身Care/ofのCEOはBonobos出身で、著名D2Cで働いていたメンバーが独立して新しいD2Cスタートアップが生まれている。その他にもAWAYの創業者やHarry'sの創業者はWarbyParker出身だったりする。

<基本情報>
Ritual
・設立年:2015年
・創業者: Katerina Markov Schneider
(COOのLiz Reifsnyderは元DSCのビズデブ
・累計調達額:40.5Mドル
・拠点:ロサンゼルス

Care/of
・設立年:2016年
・創業者:Craig Elbert(元Bonobosのマーケ
・累計調達額:42.2Mドル
・拠点:ニューヨーク

結論から言うと、RitualとCare/ofは、”ビジネスモデル上”は(DSCとHarry’sのような)大きな違いはさそう。もちろん違いはあるけれど、DSCとHarry'sのようなバリューチェーン全体で異なる戦い方をしていると言うよりは、同じサプリプロダクトといえど思想が異なり、それがプロダクトやマーケに反映されているという感じ。
両者の比較もできるけどむしろ競争激しいサプリメント業界において、後発スタートアップがここまで存在感を高めたことに興味が湧いてきたので、その視点でケーススタディしてみる。(一般ユーザーからすると、大手サプリブランドと比較してまだまだ存在感は小さいかもしれないけど。。)

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ヒゲソリ業界のように、新規参入したDSCやHarry'sのようなD2Cブランドが業界に破壊的影響を与えた、というよりは、新しい市場を創り出した感じだ。特にRitualに関して。

詳しくは調べていないけど、アメリカのサプリメント市場は4兆円あって、毎年5%程度成長していそう。市場には7万種くらいの商品があるらしい。
市場は大きく成長しているが、参入プレーヤーも多く、ユーザーのスイッチングコストも低いためそこそこ競争環境は厳しいそう。トレンドもある。(最近はCBD関連の商品がかなり増えているらしい。)
ある程度原価率も抑えられるため、マーケ勝負になる部分も大きい。このあたりは日本の健康食品市場やサプリメント市場と似ているところもある。

この競争激しい市場で、
・Care/ofはパーソナライズというサービス化
・Ritualは独自のポジショニング

 で参入してグロースしているようにみえる。


Care/of

パーソナライズによるサービス化
Care/of的なパーソナライズサプリのサービスは他にもいくつかあって、Personaとかが有名。クイズに答えてサプリが提案される、という形式が一般的(ちなみにスナックミーでは3年以上前からずっとこのクイズ導線をやってるから、日本ではクイズ導線の走りかも。)
Care/ofのクイズUIは秀逸で、サクサク答えられる。特に面白かったのは、住んでいる州を聞いて、日照時間からビタミンDが必要かどうか把握するみたいな内容。一方で、Personaはより詳細なクイズが用意されていて、、正直細かすぎて答えるのがしんどい。より玄人向けかもしれない。

選ぶ面倒さや買う面倒さを解消
Care/ofの場合、Bonobos出身のファウンダーがサプリ買いに行ったときに何を買えばよいかわからず、知識のない店員さんに話を聞いて悶々としたのがパーソナライズのきっかけらしい。確かにパーソナライズニーズはあるけど、サプリの場合、本当にそのパーソナライズが正解なのかを実感を持って検証しにくいこともあり、クイズの設問も重要になってくる。パーソナライズ機能が、一部マーケの要素になっているという考え方もできる。パーソナライズされたサプリの袋にはユーザーの名前が印刷される。それもパーソンライズ感を高める取り組み。

Care/ofはアプリも提供していて、サプリを飲む時間にリマインダーを設定したり、飲み続けるとポイントがもらえたりして、継続的にサプリをのみ続けるのをサポートしている。(Care/ofのサプリは一粒一粒が大きくて、飲み続けるのがホントに大変。。)飲み忘れてサプリがたまってしまうとChurnの要因になるため、アプリ等で継続利用を促進しているのに加え、ライトユーザの習慣化の手助けをしていると思われる。(今はアプリはもう無いかも)

Care/ofはパーソナライズと定期購入によって、選ぶ煩雑さ、都度購入する面倒さを解消している。もともとサプリに興味あるが、何飲んでよいかわからなかったり、買うのが面倒だったり、というライトなユーザーを取り込んだんじゃないか。加えて、パーソナライズにより、サプリというものをサービスに昇華させた。(仮説)
そもそもサプリヘビーユーザーは、自分で色々調べてブランドなどを指名買いしそう。ライトユーザーが、パーソナライズとサブスクによってサプリ摂取を習慣化すれば一人あたり購入回数が増えてマーケット自体が大きくなるので、ある意味市場を創り出したとも言える。
アメリカのようなサプリがかなり普及している市場で、既存ブランドがトレンドの新成分(プロバイオティクスやCBDなど)などによって差別化を志向しているなか、パーソナライズというサービス化でライト層を取り込もうとした動きは興味深い。

一方のRitualはより興味深かった。

Ritual

サプリメントに対する不信感
創業者のKaterina Markov Schneiderが妊娠したタイミングで、食べ物などの成分に気を使うようになり、妊娠中に飲むサプリメントも調べたが成分が疑わしいものしか見つけられず、信頼できるブランドがなかった、というのがきっかけでRitualが生まれた。

不信感払拭のための透明性
そのため、原料にこだわり抜き、サプリメントに使っている原料それぞれについて、産地や製造元を表記している。
例えば、Vitamin Eについては、Buenos Aires, Argentinaのもので、Pistachiosやwalnutsから採れて、AOM/Nutrallianceという会社で作っていて、AOMという会社についても詳細を解説している。サプリメントの形状でも透明性を表現している。透明カプセル内に成分を固めたものが浮いている。

科学的根拠
加えて、サプリメントやサプリメントの成分に懐疑的だった創業者のKaterina Markov Schneiderが自分が納得できるものを作るため、「Less is more」の思想のもと、医師、栄養士、科学者からなるチームで、食事から取れる成分は省き、女性に本当に必要なビタミンだけに絞っている。(他のマルチビタミンと比較して原料はかなり少なく9〜12種。)また、Vegan Certified、Gluten and Allergen Free、Non-GMO、No Colorants or Synthetic Fillersと、余計なものは入れない、というポリシーを貫いている。

これだけ摂れば良いという単一プロダクト
Ritual-Essential for Women、Ritual- Essential Prenatalという2種のプロダクトのみ。ローンチ当初はRitual-Essential for Womenだけだったが、後にRitual- Essential Prenatalが加わった。D2Cは複数プロダクトを持つことが多いが、Ritualは2つだけしかプロダクトがなく、しかもローンチ時から内容が大きく変わっていない(ように見える)。商品開発にかかるコストや複数SKUあることに起因するオペレーションの煩雑さがない。そのため、原価自体によりお金を使えるし、マーケやブランディングに投資することもできる。

このように、創業の背景とプロダクトに一貫性があり、特に初期は、

for skeptics, by skeptics

というメッセージを打ち出していた。つまり、サプリに懐疑的だった創業者が、同じようにサプリに懐疑的な人向けに作ったプロダクト、ということ。サイト内にもSkeptics Speakという動画コンテツがあり、いわゆるユーザーの声的な形で、最初サプリに懐疑的だった人が、どうしてRitualを使うようになったか、という話をしている。
サプリに懐疑的な人が最も気になるのが原料や科学的根拠で、それについて”透明性”をもってRitualは説明している。The Futre of vitamin is clear.というメッセージと共に。
そして、その商品自体が透明で、中に原料が浮いているように見える、というのも透明性を表現している。

つまり、Ritualは、サプリに懐疑的でそもそもサプリにあまり手を出していなかったような人たちに対して、その人達が最も気になる点について”透明性”を持って説明し、懐疑的な人たちの指示を集めた。Ritualユーザーの約6割はそれまでサプリを習慣的に利用していなかったユーザーで、もともとなかった市場を創り出した。

WarbyParkerやHubble、DSCやHarry'sのように、既存業界をDisruptして急成長したD2Cブランドに対し、Ritualはもともと無かった市場を創り出した点が興味深い。もはやマルチビタミンなんてかなり以前から存在するので、大量にプロダクトが存在し、価格勝負になっていそうな領域。そんなマルチビタミンというレッドオーシャンで新しい市場を創り出した。

もちろんブランディングやインスタマーケがうまかった、と言うこともできるけど、そんな簡単に片付けてしまうには勿体ない事例。
今までターゲットではなかった(ある意味プロダクトに対して批判的/懐疑的だった)人たちの潜在的な課題に応えて新しい市場を作れないか、という視点は常に持っておきたい。レッドオーシャン、という言葉を言い訳に思考停止する前に。

※ブランディングやマーケについて詳細に分析したわけではないので、全体的に仮説の域はでないですが思考訓練として


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hattori。食のスタートアップ「スナックミー」代表。コンサル→VC→スタートアップ起業。
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