西洋美術雑感 9:フランシスコ・ゴヤ「パラソル」
マドリッドのプラド美術館へ初めて行き、ベラスケスの女官たちのあまりのもの凄さに呆然としたのだが、そのまま放心状態で、そこを出て、なにはともあれ順路に沿って部屋から部屋へ歩いていた。次へ連なる部屋には、ムリリョやリベラ、といったスペインの巨匠たちの絵が掛かっており、すべて素晴らしい絵だったのだが、ぜんぜん目に入って来ない。わずかに、ムリリョの描いたマリアの白と青が破格に美しかったのを覚えているが、それでも上の空だった。僕の感覚はあのベラスケスのたった一枚の絵で完全に飽和してしま