見出し画像

西洋美術雑感 6:レオナルド・ダ・ビンチ「モナリザ」

「モナリザ! 出た!」みたいな反応しかできないほど、おそらく世界でもっともよく知られた画布である。言わずと知れたレオナルド・ダ・ビンチの絵で、これはパリのルーブル美術館にある。これを出したのは、絵画について書いていてちょっとくたびれたので、くだらない無駄話しようと思って、これにしてみました。

ルーブルへ初めて行ったのはだいぶ昔の30年以上前だったけど、このモナリザも、そのころはそれほど激しい注目を集めてはおらず、もちろん観光客は絵の前にたむろしていたけど、よくある有名な絵の前の人だかりていどのものだった。

ところがそれから何十年かたってふたたびルーブルへ行ったら、とうとうモナリザは完全別格扱いでの展示になっていた。かなり広い部屋のひとつの壁を占有していて、その壁にガラス窓があって、その向こうに完全に閉じた空間があって、そこに掛けてあった。おそらくその空間は温度湿度が管理されていて、ガラスは防弾であろう。で、そのガラスの壁の前の1メートルぐらいのところに据え置きの木の柵(装飾?)があって、さらにそこから2メートルぐらいのところに通常の仮設の柵があって、客はそこからガラス越しに見るので、結局、合計3メートルぐらい離れた位置から、70センチていどの小さな絵を見るわけで、正直、ほとんどまともに見ることはできない。

たぶん、あのモナリザが印刷の複製でも誰も気づかないんじゃなかろうか。

でも、最後に僕がルーブルへ行ったときは、客たちはそんな悪条件をものともせずに、柵のこっちに三、四十人がひしめき合い、何人もの人が自撮り棒でスマホを伸ばして、自分とモナリザのツーショットを撮っていた。その光景と喧噪のあまりのバカバカしさに、オレは、モナリザを見るのはあきらめて、そのアホ観客ばっか見てたよ。おもしろいなあ、と思って。

それで、そこだけ明らかに異常なモナリザの部屋を出て、ふと右の壁を見たらそこにラファエロの有名な聖母子像が無造作に掛かっているではないか。で、なんとだーれも見てない。みんなモナリザに気もそぞろで、ラファエロのこの超美しい画布をスルーして気が付かないらしい。

ところで、モナリザそのものであるが、非常に美しい絵だ、と、いちおう言っておく。

画像1

Leonardo da Vinci, "Mona Lisa", 1503 - 1506, Oil on panel, Louvre Museum, Paris


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?