⑥迷走した息子のこと

息子、中学生になりかなり迷走した。

第一に通学に片道約2時間ほどかかるために疲れ果てたこと。学年12人しかいなかった過疎化小学校から急に学年287人の進学校になったこと。夫が癌で入退院を繰り返したこと。それらのことが要因だろうと、、、、。

ある朝のこと、なにかのことで喧嘩をした。最寄りの駅まで、毎朝まだ暗いうちに車で送る。出なければならない時刻ギリギリに、お互いにカッとなって言ってしまった言葉を撤回するほどの心の余裕はなく、、、、、息子はそのまま玄関から怒って出て行った。バタンッと大きな音がする。窓からのぞくとやはり、バス停とは反対方向に怒りを含んだ足取りのまま足早に歩いているのが見えた。

チャージしてあったicocaカードから好き放題買い物をしたため、残高がなくバスに乗れないことを母は知っている。息子はそのことを知られたくない。そのまま駅まで1時間を歩くのだろうか?モヤモヤしたまま学校に遅刻の連絡をした。

あっけらかんとした担任の先生の声が「ハイハイ。親子喧嘩で遅刻。ですね。いらしたらまたご連絡します。」あぁ、男子校で良かった。母より先生の方がずっと男子の扱いに慣れていらっしゃるようだった。ついでに男子母の扱いにも、、、、

お昼ごろになりやっと先生からの電話。「どうやら、歩いて駅まで行き、やっと乗ったら事故で1時間も電車に閉じ込められたようでしたわ」の後でわっはっはっと笑っていらした。思わずつられて笑った母、帰りは迎えに行くので連絡をするように伝えてもらった。

なにごともなかったように帰ってきた息子。なにごともなかったように、icocaカードのチャージをする母。思春期男子と思春期男子母は、どこまでも意地を張り続け、、、、そして母はこうして善悪、白黒では子育てはできないことを学ぶのだった。



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